金子兜太選 海程秀句」鑑賞 目次

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各号ごとに観賞した順番は〈あいうえお〉順となっています

作者名
地域 

半生を怒り通して桑を解く

浅見健司 埼玉
424号 2 死ぬまでの戦後木に蝉兄は兵 有村王志 大分
424号 3 韮匂う真骨頂という言葉 市野記余子 埼玉
424号 4 桜花散る夕べ私は星に生きている 伊藤由貴江 群馬
424号 5 吉野水分猪いっしんに掘るなり 大西健司 三重
424号 6 腹鼓打たぬ狸の金玉朧の世 加地桂策 愛媛
424号 7 夜の緑澪のごと子は育ちおり 川田由美子 東京
424号 8 日向くさい妻よアズマイチゲかな 黒川憲三 栃木
424号 9 車窓には越えてゆけない春の暮 河野志保 奈良
424号 10 春寒やヴィヨン擬きの烏ゐて 佐藤臥牛城 岩手
424号 11 囀に埋もれ源流に出会いあり 佐藤紀生子 栃木
424号 12 錐揉みし病み告ぐ白昼揚雲雀 佐藤幸子 新潟
424号 13 淡墨桜数個のわれが見ておりぬ 柴田美代子 埼玉
424号 14 跳躍は空やぶること青鷹 下山田禮子 埼玉
424号 15 狐は海を胡斑雪の陸を見る 末岡 睦 北海道
424号 16 雪解けの映すものなき水を見よ 鈴木修一 秋田
424号 17 昨夜は雨今朝は風置く春の土 鈴木孝信 埼玉
424号 18 水辺かな雉が新書のように来る 関田誓炎 埼玉
424号 19 昨日まで春耕の婆なり柩なり 高橋 喬 新潟
424号 20 残雪を掻きて息吐く輪廻かな 高山紀子 秋田
424号 21 陽炎へ死者出る真新しきかな 瀧村道子 岐阜
424号 22 樹は鳥のことばに組まれ春の沼 武田美代 栃木
424号 23 つき合ひは鉛筆感覚茗荷の子 戸田寿美女 岡山
424号 24 たましいと思う朝霧父徘徊 永田タエ子 宮崎
424号 25 みんなしてががんぼのような握手 根岸暁子 群馬
424号 26 青葉若葉黒人霊歌の歯がきらり 橋本和子 長崎
424号 27 経歴など知らなくていい白梟 平塚幸子 神奈川
424号 28 先ほどの巡査が走る犬ふぐり 平山圭子 岐阜
424号 29 一つだけ地べたの好きなゴム風船 広辻閑子 石川
424号 30 春昼の妻は大蛇をのぞき込む 福原 博 熊本
424号 31 芽柳は漂流民のあおさかな 堀之内長一 埼玉
424号 32 鷹舞いてあたり悠然たらしめる 松本悦子 東京
424号 33 茎立や雨という字のように雨 松本文子 栃木
424号 34 校長のふと球磨言葉春の石 汀 圭子 熊本
424号 35 桜咲いたよ石を運べば石屋のよう 宮崎斗士 東京
424号 36 低く来る蝶よひんやりと未来 茂里美絵 埼玉
424号 37 夜目に光る蛙ひき逃げ事件なり 矢野美与子 東京
424号 38 囀りの高みに入らず初音かな 山田哲男 新潟
424号 39 紅葉に群れ足場に並び妻と流れる 山本 勲 北海道

425号 1 赤城木の家かめむしもいて可なり 足利屋篤 群馬
425号 2 理由あって五月が好きで一生懸命 石山一子 埼玉
425号 3 実にじつとしている猫も竹の子も 伊藤淳子 東京
425号 4 風青し卓球少女チョオと叫ぶ 上原祥子 山口
425号 5 肥後の女は筋金入りの眠りかな 宇田蓋男 宮崎
425号 6 人類も黴と言うべし梅雨に入る 内田利之 兵庫
425号 7 春昼や見える限りの木のばんざい 大沢輝一 石川
425号 8 よく笑い枡目に愛と書く五月 太田順子 兵庫
425号 9 待たれいて黒ネクタイの長さかな 小暮洗葦 新潟
425号 10 地に花恋天に星恋童女かな 尾田明子 埼玉
425号 11 老骨をからから鳴らし春が来た 上林 裕 東京
425号 12 真っ青にくちづけも染め青武鯛 岸本マチ子 沖縄
425号 13 白鳥よ風のさびしさ指赤らむ 小原惠子 埼玉
425号 14 街の陽は街に墜つべしわれは病者 斉藤白砂 秋田
425号 15 飛蚊症か落花か年金では足りぬ 坂本蒼郷 北海道
425号 16 誰か来て鏡割りゆく八十八夜 塩野谷仁 千葉
425号 17 うららかや果実はししむらのような 塩谷美津子 福井
425号 18 あっけなく日々は毀れる麦星よ 下山田禮子 埼玉
425号 19 運動靴で蛇をあしらう老人たり 白井重之 富山
425号 20 蟻塚ほどの国会議事堂でありしか 鈴木孝信 埼玉
425号 21 泣くまいとがまんしている春意かも 鈴木佑子 東京
425号 22 楷若葉幼き彼と彼女たち 高木一惠 千葉
425号 23 竹皮を脱ぎわれにも帰る家 高橋 碧 群馬
425号 24 薄氷に青の一すじ自然治癒 田浪富布 栃木
425号 25 絶対に花粉まみれのおぼろ月 佃 悦夫 神奈川
425号 26 籐椅子や渥美に蛸の保存会 土田武人 神奈川
425号 27 額びたびた叩くエープリル・フールかな 殿岡照朗 ブラジル
425号 28 春の愁ひ皆子夫人にもらった人形 永井徹寒 東京
425号 29 春羊よ雲はゆったりどっしりどっしり 中原 梓 埼玉
425号 30 花こぶし軽い肉体感咲いた 中村裕子 秋田
425号 31 老いて斉しく呟くいのち春干潟 野田信章 熊本
425号 32 銀蠅の手を擦りおる諧謔曲 原田 孟 和歌山
425号 33 三代の蟾蜍居る土地を分割す 藤井清久 東京
425号 34 金柑鈴成り耳学問の吹き溜り 松下晴江女 愛媛
425号 35 冬そうび半身見える天袋 松本照子 熊本
425号 36 ばんざいが漂っている麦の秋 松本勇二 愛媛
425号 37 菜の花や潟は大きい目玉焼き 武藤暁美 秋田

426号 1 あじさい寺菩薩・上人畳干す 荒井まり子 東京
426号 2 オホーツク落暉は大陸焼く貌だ 有村王志 大分
426号 3 おたまじゃくし眼裏熱く愛と書く 安藤和子 愛媛
426号 4 ガラスの金魚電池のほたる写真の父 伊佐利子 福岡
426号 5 手ぶらという身の不均衡花りんご 伊藤 和 東京
426号 6 鯉の大口吾れは呑まれん君も呑まれよ 小堤香珠 東京
426号 7 御降りや恋人たちの鍵の場所 小野裕三 神奈川
426号 8 一生涯一耕人や聖五月 金子斐子 埼玉
426号 9 夏の霧原発の湾より生るる 河原珠美 神奈川
426号 10 むしかりやあなたをさがす旅の章 川本洋栄 大阪
426号 11 暗闇の怖くて乱れとぶ蛍 北村美都子 新潟
426号 12 冥想の翁は春の野に戻る 黒川憲三 栃木
426号 13 春月や色の見えない水の中 河野志保 奈良
426号 14 春の雲生きて来たまま生き申す 三枝正二 埼玉
426号 15 田水張り怒濤のごとく溺れたり 佐藤紀生子 栃木
426号 16 連翹や少女のような意地悪言う 篠田悦子 埼玉
426号 17 労りなり安達太良山に向く葱坊主 志摩京子 東京
426号 18 立ちつくすことも流離か走り梅雨 下山田禮子 埼玉
426号 19 遥とは菱の花摘む男かな 鈴木幸枝 滋賀
426号 20 いづれ我の溟へ戻れよ水澄 たかはししずみ 愛媛
426号 21 蛇穴に私は歩むペンギン 高橋総子 埼玉
426号 22 旅泊また青田に雨と書き流し 田口満代子 千葉
426号 23 ときめきも歎きもおぼろじやがたらの花 徳永義子 宮崎
426号 24 わくらばや浮いて光の耳となれ 野崎憲子 香川
426号 25 花大根愚痴なき母に逢う怖さ 野田信章 熊本
426号 26 憲法の日しめった朝刊放埒に 橋本和子 長崎
426号 27 花買いにまた濁り江を渡らねば 平井久美子 福井
426号 28 すれちがう移り香情の花山葵 廣嶋美惠子 兵庫
426号 29 閑かさや岩のようなる蝉の顔 藤野 武 東京
426号 30 球場やくちばしのよう夕立は 堀之内長一 埼玉
426号 31 きさらぎや象の鼻振る音ばかり 松本照子 熊本
426号 32 立ちしゆゑ八月の木の伐られけり 水野真由美 群馬
426号 33 画材屋のががんぼとして全うす 宮崎斗士 東京
426号 34 夕暮れや人の声出す春の土 守屋茂泰 東京
426号 35 宇宙哀し汚物のビンの捨てどころ 山本逸夫 岐阜
426号 36 鴎くるかもめのスピード夏来たる 横地かをる 愛知
426号 37 西行戻しといふも毛虫に羽生えて 若森京子 兵庫
427号 1 梁ハリと蛇も百足も音たてて 阿川木偶人 東京
427号 2 先生が赤ちゃんを生む夏休み 秋谷菊野 千葉
427号 3 みちのおく と指せば緑に染まるかな 阿保恭子 東京
427号 4 淡彩の言葉水飯といいます 市野記余子 埼玉
427号 5 苺つぶす戻り波のように鬱 宇川啓子 福島
427号 6 人間は毛虫を潰し口開く 内野 修 埼玉
427号 7 風知草琵琶湖に鼓動わたしの鼓動 大上恒子 神奈川
427号 8 家毎に男ひとりの花粉症 太田雅久 石川
427号 9 塔婆もて蛇打ち母に叱られる 大高俊一 秋田
427号 10 恐竜のような匂いの夏の橋 大谷昌弘 千葉
427号 11 本館は雨の大きさ月下美人 小野裕三 神奈川
427号 12 白雨かな坐れば老いの速くなり 北村美都子 新潟
427号 13 八月の彎曲してゆく白昼 白石司子 愛媛
427号 14 恐竜も見し夕焼を見つつ帰る 新宮 譲 埼玉
427号 15 花冷えやゴッホはゴッホを描きつづけ 鈴木美江 東京
427号 16 有害獣研究主任にまたたび咲く 関田誓炎 埼玉
427号 17 夏野ふと妹に亡母をゆずる 芹沢愛子 群馬
427号 18 うすものや女を出でて私なり 高木一恵 千葉
427号 19 夏木立カナリア色に肩抱いて 田中亜美 埼玉
427号 20 うすばかげろう戦知らずの戦好き 田浪富布 栃木
427号 21 姥捨の梅雨冷え深し母よ死ぬな 谷岡武城
武には草冠
愛媛
427号 22 雷に負けじと父母おしゃべりす 峠谷清広 埼玉
427号 23 滝の壷縄とびに飛びこむような 藤間雅江 栃木
427号 24 緑とは孤を深む色梅雨晴間 中村孝史 宮城
427号 25 残雪や浄土平に千の月 野崎憲子 香川
427号 26 魚籃観音春の葉っぱの無尽蔵 野田信章 熊本
427号 27 ステテコさびし絶滅危惧種たり我ら 藤野 武 東京
427号 28 バラ大輪くずれるまでのひとり良し ホーン喜美子 カナダ
427号 29 木立ということばストンとテント張る 堀真知子 愛知
427号 30 額には直射日光ひきがえる 堀之内長一 埼玉
427号 31 宮司老い背負はれ来たる山開き 前田典子 三重
427号 32 炎昼を耳栓研究家とともに 松本悦子 東京
427号 33 羽抜鶏羽より薄き僕の耳 松本照子 熊本
427号 34 眠り浅くて透ける躰よ芹の花 室田洋子 群馬
427号 35 ボート朽ちて湖水に誕生日来たる 森田高司 三重
427号 36 草市が終はりの歯の細か 柳生正名 東京
427号 37 懐かしむ胎の冥さの蝦夷春蝉 柚木紀子 東京
427号 38 荒涼ともちがふ真赤なトマト一つ 横山 隆 長崎

428号 1 生かされて腰に巾着蚊取り線香 植田郁一 東京
428号 2 冬の山獣の糞に木木の種 内野 修 埼玉
428号 3 茱萸熟れて眼中の子の拗ねている 榎本祐子 兵庫
428号 4 八月や地球に二つ爆心地 緒方 輝 東京
428号 5 父逝けり子供を夜歩きさせるなとぞ 小川久美子 群馬
428号 6 プードルと背中あわせの熱帯夜 荻原信子 埼玉
428号 7 白桔梗いまわなる人呼びしは母 尾田明子 埼玉
428号 8 滝の夜少女のような和室かな 小野裕三 神奈川
428号 9 喜雨というそこひの母の前うしろ 加川憲一 北海道
428号 10 梅雨深夜声帯という浪漫あり 狩野康子 宮城
428号 11 赤セロハン透かしみる癖八月来 紙谷香須子 滋賀
428号 12 手花火に肉を焦がすを生という 上林 裕 東京
428号 13 ふるさとありひとりよがりの大昼寝 京武久美 宮城
428号 14 鮎は藻を吾は川風を食べ加齢 黒川憲三 栃木
428号 15 ぼんやりと茄子の親しさ介護かな 小池弘子 富山
428号 16 虫干しの岸辺は旅の途中なり 小林一村 福井
428号 17 搾乳の人の姿勢を楷書という 今野修三 東京
428号 18 烏賊火置く距離徒然の挽歌なり 佐々木義雄 福井
428号 19 悼むとは乱読のごと夏の果 下山田禮子 埼玉
428号 20 先生は呑気な金魚のかたちして たかはししずみ 愛媛
428号 21 にら粥に玉子落して朱の月の 田中昌子 京都
428号 22 ラムネ直ぐからころからころマンネリズム 田沼美智子 千葉
428号 23 赤とんぼ極楽とんぼのあみの中 田村行子 栃木
428号 24 あぶらぜみ加賀から京へ籠使う 土田武人 神奈川
428号 25 印象は未完がよけれキャンプの火 中村孝史 宮城
428号 26 友悼みさめざめ泣くに暑すぎる 長谷川育子 新潟
428号 27 山蟻や幼子爺へまっしぐら 平山圭子 岐阜
428号 28 助詞のようにゆらゆらソフトクリーム 広辻閑子 石川
428号 29 八月や爛々と生おうおうと森 福原 實 宮城
428号 30 車椅子の病人立ってみせる夏 藤田ユリ子 愛媛
428号 31 苔に寝て霊長目はさみしかり 堀之内長一 埼玉
428号 32 花街の落書の蛇赤かりき 前川弘明 長崎
428号 33 はればれと水田の中に都市見えて 松本文子 栃木
428号 34 梅雨晴間老いて学べば死して朽ちず 光宗柚木子 愛媛
428号 35 真青なる蓴菜戦争知らぬ子と 武藤暁美 秋田
428号 36 穢れたる舌月光に晒しおり 山下真理子 北海道
428号 37 人に人離りゆく大山蓮華 柚木紀子 東京
428号 38 旅終わる波が洗いし硝子掌に 吉川真美 東京

429号 1 茂吉翁この秋馬穴新たにせり 阿保恭子 東京
429号 2 貧血の馬が殴られ秋日落つ 池永露声 北海道
429号 3 やけに静か血管外科と黒葡萄 石上邦子 愛知
429号 4 朱鷺色の鎖骨あるかな秋の暮 市野記余子 埼玉
429号 5 いつも一途な水の流れよ色鳥来 伊藤淳子 東京
429号 6 秋風は戦争告知かも知れず 稲岡巳一朗 島根
429号 7 月の友象の眼をして集まれり 上原祥子 山口
429号 8 人生論舌に触らぬ鱧の骨 内田利之 兵庫
429号 9 忘却とは松にただよう花火殻 金谷和子 埼玉
429号 10 米袋抱き上げ縄文の体温に 柄沢あいこ 神奈川
429号 11 漂泊の表面張力すすき原 川崎益太郎 広島
429号 12 黒揚羽吸いこまれるようもの忘れ 川田由美子 東京
429号 13 船箪笥開ければ祖母の花野かな 河原珠美 神奈川
429号 14 野ぶどうのひそかに熟れる愛が欲し 川本洋栄 大阪
429号 15 火祭りよ陸果てのいや立ちくらみ 九堂夜想 神奈川
429号 16 戦友が田ごとの月に立っている 国しげ彦 埼玉
429号 17 其処にコホロギ妻の眠りの浅ければ 小林まさる 群馬
429号 18 猫じゃらし引越すように死ねるかや 今野修三 東京
429号 19 穴惑い耳掻きの届かざる点 酒井郁郎 埼玉
429号 20 目にも見よ大鯉跳ねし良夜かな 清水喜美子 茨木
429号 21 カンナの向こう海の光は永久に 鈴木修一 秋田
429号 22 あさがおや仕事の鬼とう吾子貧し 高木一恵 千葉
429号 23 すこし猫背アンダルシアの日雷 高橋たねを 兵庫
429号 24 満月や死ぬことの不思議なけれど 高橋明江 埼玉
429号 25 長き夜や嗚呼診断書の簡潔さ 永井 幸 福井
429号 26 二百十日歯科医に歯茎つつかるる 中島偉夫 宮崎
429号 27 生活のそよそよ蜥蜴匂うかな 中田里美 東京
429号 28 落葉毎に笑う白寿の母がいて 蓮田双川  茨城
429号 29 一遍忌鋼のような足に触れ 藤田ユリ子 愛媛
429号 30 馬覚めて闇から闇へかかる橋 堀之内長一 埼玉
429号 31 水引草に触れた時間が入り口です 宮崎斗士 東京
429号 32 みちのくや亡者踊りの眼が三つ 武藤暁美 秋田
429号 33 葉月かな酒蔵は回想してる船 茂里美絵 埼玉
429号 34 曼珠沙華散るはすかひに土性骨 柳生正名 東京
429号 35 堅田辺りへ祝詞のように田水落つ 矢野千代子 兵庫
429号 36 乾杯やかなりアレグロ虫の声 矢野美与子 東京
429号 37 仰向けに寝て食う梨やナイアガラ 與儀つとむ 沖縄
429号 38 僧三人自然薯という厄介なもの 若森京子 兵庫
429号 39 秋茄子やピカソの鼻の冷たさよ 渡部陽子 宮城

430号 1 疣むしりいまさら腰の括れなど 麻生圭祐子 愛知
430号 2 サシバ渡ると未明とび出す吾の可笑しき 阿部一葉 宮崎
430号 3 跪く空蝉の鈴生りの木に 糸山由紀子 長崎
430号 4 初野分眷属ふっと山を見る 井上湖子 群馬
430号 5 雨樋に草伸びあがる秋思かな 今福和子 鹿児島
430号 6 杖をもって酔芙蓉打つ老境なり 大口元通 愛知
430号 7 鵲の未明のコーリアわれの巡礼 岡崎万寿 東京
430号 8 流されし風に噛みつき鬼ヤンマ 小暮洗葦 新潟
430号 9 霧に橋影橋に人影かなり濃い 加川憲一 北海道
430号 10 咳一つ山を南に生活あり 加地桂策 愛媛
430号 11 山上は焦げ臭きかな山楝蛇 加藤青女 埼玉
430号 12 青無花果無言館には窓がない 川崎久美子 東京
430号 13 物零しては笑ます妻あり亥の年も 上林 裕 東京
430号 14 最上川鹿ひとまたぎ夢の中 北村歌子 埼玉
430号 15 威嚇かな紅葉の中に針葉樹 小林まさる 群馬
430号 16 旧友よ枯野の闇は圧巻なり 佐々木昇一 秋田
430号 17 熊の死を寝物語に霜夜更く 佐藤臥牛城 岩手
430号 18 昼夜思考す水の乱調に似たり 鮫島康子 福岡
430号 19 夜がそこにきて生きもののように月 清水喜美子 茨城
430号 20 わたしを叩く鳥いてわたしの声甲高く 白井重之 富山
430号 21 鮭の鼻っぺコリコリ美味い日本海 瀬戸 密 北海道
430号 22 ピノキオは未だ木の鼻小鳥来る 高木一惠 千葉
430号 23 ロバに帽子冥王星の祀りです 高橋たねお 兵庫
430号 24 無造作に父水仙を病む母に 高橋総子 埼玉
430号 25 雁行や町の鍛冶屋の兄おとと 舘岡誠二 秋田
430号 26 いじめなしとは言わせぬぞ穴惑い 中尾和夫 宮崎
430号 27 引退のピエロに重き夜食かな 中島偉夫 宮崎
430号 28 満月の着水音あり歯痛あり 橋本和子 長崎
430号 29 きらりきらりとひねもす薪を割る農夫 藤野 武 東京
430号 30 牡蠣啜る鼻から抜けるフランス語 堀真知子 愛知
430号 31 桃の種小学校の庭へ投ぐ 前川弘明 長崎
430号 32 落書は「話すと死ぬ」や寒月下 マブソン青眼 長野
430号 33 倒立や冬がいちばん好きな兄 宮崎斗士 東京
430号 34 こおろぎや金平糖が頬の中 室田洋子 群馬
430号 35 遠江水澄む底の影も澄む 茂里美絵 埼玉
430号 36 空耳に石蕗咲いて汝も黄の人よ 柳生正名 東京
430号 37 白山へ夕紅葉ちる字御母衣 山本逸夫 岐阜
430号 38 夏にオロオロさまよう蟻となっており 山本昌子 京都

431号 1 一身のただ一心や穴惑 阿保恭子 東京
431号 2 知床は水洟だらけ洒落気なし 池永露声 北海道
431号 3 蕪白くなる甘くなる寒くなる 伊佐利子 福岡
431号 4 軍鶏三羽透けるまぶたの日向ぼこ 石田順久 神奈川
431号 5 蚕しぐれの薄暮や老母淋しがる 伊藤 和 東京
431号 6 狼や水位あがりし日本海 大下志峰 福井
431号 7 鴻毛の兵ながらへて冬耕す 緒方 輝 東京
431号 8 無花果の木下闇まで耕す父 小川久美子 群馬
431号 9 冬耕や石の中から石拾う 奥山和子 三重
431号 10 月白の地下に柱のありにけり 小野裕三 神奈川
431号 11 屈強の破蓮として残りけり こしのゆみこ 東京
431号 12 放浪や峡に入り来し霧の戯れ 小林一村 福井
431号 13 神無月や干潟つくづく濡れていし 小林一枝 東京
431号 14 キツネノカミソリ先頭のぼく破顔 小原惠子 埼玉
431号 15 動きたくてたまらぬ老母や枇杷の花 佐藤幸子 新潟
431号 16 まひるまも落ちる星あり龍の玉 塩野谷仁 千葉
431号 17 星が綺麗というだけのこと夜寒かな 篠田悦子 埼玉
431号 18 大竜巻その夜寒月誰彼に 末岡 睦 北海道
431号 19 からまつに雪しがみつき人は地に 鈴木八駛朗 北海道
431号 20 正論で破蓮までを歩けるか 高桑婦美子 千葉
431号 21 猫に髭父に北斗の光すこし 高橋たねを 兵庫
431号 22 寝たきりを担いで葬の端に立つ 竹内一犀 静岡
431号 23 時雨るるや家路半ばの恍惚よ 丹後千代子 福井
431号 24 冬至湯や故郷の言葉で独り言 峠谷清弘 埼玉
431号 25 山肌の人肌の朝花鶏来よ 遠山郁好 東京
431号 26 秋の蛇ことごとく水平であり 戸田寿美女 岡山
431号 27 すだち酸っぱし必修逃れなどありて 中村裕子 秋田
431号 28 全山紅葉とは対岸の気力かな 蓮田双川 茨城
431号 29 風の紫苑に父焼く骨の谺かな はやし麻由 埼玉
431号 30 黄昏は甲冑のイメージに着ぶくれ 藤江 瑞 神奈川
431号 31 石段に男のひびき山眠る 松本文子 栃木
431号 32 がちゃがちゃや嫁の正論を反芻 丸山マサ江 群馬
431号 33 冬蝶のぽと蒼みし紙包み 森央ミモザ 長野
431号 34 わが影という生き物に秋の蜂 守屋茂泰 東京
431号 35 自由という孤独車窓に柚子たわわ 安井昌子 東京
431号 36 余情とは刈田見て来たあの渇き 矢野千佳子 神奈川
431号 37 仏間なく秋思の風の冷たさに 山岡千枝子 岡山
431号 38 山の月雪の足跡みな尾を持つ 山本 勲 北海道
431号 39 雁や寝心かくも覚束無 柚木紀子 東京

432号 1 ときに黒く降り積む雪や鶴群や 新井喜代子 埼玉
432号 2 野にあれば草の絮吹くバレリーナ 安藤和子 愛媛
432号 3 十二月遠い人からポケットに入れ 稲田豊子 福井
432号 4 冬陽さす老人の笑み狭庭に満つ 大内冨美子 福島
432号 5 まっ赤なる鯉冬の字のひとつかな 大沢輝一 石川
432号 6 毛皮着てよもつへぐいの類かな 大高俊一 秋田
432号 7 軍馬描かれ春は私を泣かすなり 大野千穂 宮崎
432号 8 揚羽蝶の黒も夏のいとしさ樹間過ぐ 小木ひろ子 東京
432号 9 われもまた銀河びとなり流れるなり 小暮洗葦 新潟
432号 10 寒椿コックの帽子高々と 小野裕三 神奈川
432号 11 端然と仕事始めの飯白し 柏倉ただを 山形
432号 12 熱燗よりも孫のあんよにうす涙 上林 裕 東京
432号 13 燃え尽きた天草の黙冬銀河 岸本マチ子 沖縄
432号 14 息をしてはならぬ検査を冬の雷 北村美都子 新潟
432号 15 わが胸の底に不凍湖鰤起し 木村幸平 東京
432号 16 いのししに足首かまれ地蔵さま 黒岡洋子 東京
432号 17 出会いとは地に膝をつき冬苺 河野志保 奈良
432号 18 海しずかヌードのように火事の立つ こしのゆみこ 東京
432号 19 青からすうり道標として尊けれ 児玉悦子 神奈川
432号 20 枯葉踏む私語のさざなみ脱けるため 小長井和子 神奈川
432号 21 山黄葉片頬黄ばむ車中かな 小原恵子 埼玉
432号 22 雪払う返り血のよう霊のよう 佐々木宏 北海道
432号 23 狐からきつねの面を賜る上毛 下山田禮子 埼玉
432号 24 狐火なりそして誰かが抜けてゆく 白石司子 愛媛
432号 25 雪染み入り川底の顔目覚めけり 鈴木修一 秋田
432号 26 しがらみや餅に捕られし歯一本 鈴木康之 宮崎
432号 27 喉すべる酢がき穂高はうすずみに 田口満代子 千葉
432号 28 ナマハゲの藁をつかんで眠る海女 舘岡誠二 秋田
432号 29 てふてふは鋼たらむとまつしぐら 佃 悦夫 神奈川
432号 30 喉奥に次の歯があり冬の濤 土田武人 神奈川
432号 31 餅花や主人に期待しない猫 峠谷清弘 埼玉
432号 32 ほちゃれ鮭墓が三つとなりにけり 徳才子青良 青森
432号 33 マスクしてパセリの緑に感激す 長谷川順子 埼玉
432号 34 嗚呼夫よ生きて困らす枯葉でいい 藤田ユリ子 愛媛
432号 35 なべて人は小春の海に涙ぐむ 堀之内長一 埼玉
432号 36 未だ脆き思想のころの隙間風 松本勇二 愛媛
432号 37 妊婦はや人魚のけはひ初日受く マブソン 青眼 長野
432号 38 二日の夜水のよう嘘のよう声す 三井絹枝 東京
432号 39 口に運ぶすずなすずしろ流離かな 横地かをる 愛知

433号 1 梅綻ぶ漏らないほどの家に住み 相原澄江 愛媛
433号 2 雪国に雪が降らぬと書きしるす 阿木よう子 富山
433号 3 遊びからはみ出している蟹の足 市原正直 東京
433号 4 ゆりかもめ本を返しにゆくところ 伊藤淳子 東京
433号 5 冬三日月老人涅槃の木菟彫る 上原勝子 神奈川
433号 6 飽食のうしろめたさよ狐罠 榎本愛子 山梨
433号 7 睥睨も黙視も冬のゴリラかな 金谷和子 埼玉
433号 8 冬籠り箔置くように追伸 狩野康子 宮城
433号 9 こころ傾けて白鳥降りてくる 北村美都子 新潟
433号 10 密たっぷりの嬰児の足よ白さざんか 黒岡洋子 東京
433号 11 冬の野の落下速度を見ておりぬ 佐孝石画 福井
433号 12 天涯に惚けゆく妻と恋猫と 佐藤臥牛城 岩手
433号 13 春の水 推量という走るもの 清水 瀚 東京
433号 14 着ぶくれて大地と繋がる野雪隠 新宮 譲 埼玉
433号 15 暖冬の満月汚れいるイラクは 杉崎ちから 愛知
433号 16 冬ごもり蜘蛛におどろく娘らと 鈴木修一 秋田
433号 17 はるかまで来たよう狐の嫁入り 鈴木祐子 東京
433号 18 初昔肝胆を火に照らしたり 関田誓炎 埼玉
433号 19 群像の白い重量昼の梟 十河宣洋 北海道
433号 20 冬くれば芝居一座が男鹿に立つ 舘岡誠二 秋田
433号 21 きさらぎの離宮截金杳とかな 田中昌子 京都
433号 22 春雨や追憶の揺り籠の出窓 董 振華 中国
433号 23 鳥雲に母にも妻にも叱られて 峠谷清広 埼玉
433号 24 冬野の灯一つは押しかけ女房ん家 中島偉夫 宮崎
433号 25 霞食べている父のようでもあり 中田里美 東京
433号 26 風邪に寝て切らるる花を見ていたり 中原 梓 埼玉
433号 27 ニートばかり陽に固まって薄暑です 中村加津彦 長野
433号 28 祈りかな掬って差し出す雪解水 堀真知子 愛知
433号 29 命かな干柿越しに夕日浴び 松本勇二 愛媛
433号 30 御神渡り九十二歳をわたりゆく 丸山久雄 北海道
433号 31 笛吹きて夭き名の笛吹きて父 水野真由美 群馬
433号 32 曇天だけ集めて海鼠ありにけり 宮崎斗士 東京
433号 33 白鳥吹かれ額に大きな夕闇が 森央ミモザ 長野
433号 34 流星に音なき不思議冬の旅 守屋茂泰 東京
433号 35 料峭の石に雨ふる素読という 矢野千代子 兵庫
433号 36 俺も無党派すずなのくくたち 山口 伸 愛知
433号 37 百千鳥消える競走しておりぬ 山中葛子 千葉

434号 1 意志的な靴音ひびくきさらぎや 石上邦子 愛知
434号 2 いつも寝不足桜しべ降る本をめくる 伊藤淳子 東京
434号 3 きぶし咲くヨガのポーズはライオン 宇野律子 神奈川
434号 4 くもは網張る私は私の霞網 戎 武子 岡山
434号 5 土筆摘む太平洋に棲みなれて 菊川貞男 静岡
434号 6 論客の海馬のあたり桜貝 岸本マチ子 沖縄
434号 7 息災や野芹に絡む鶏の声 北上正枝 埼玉
434号 8 御ほとけに厚きまなぶた小鳥引く 北村美都子 新潟
434号 9 清明や山のてっぺんまで畠 小池弘子 富山
434号 10 窯守の梅より白いむすび食う 小堀 葵 群馬
434号 11 ネイルアートに湿りを許す卒業歌 阪本蒼郷 北海道
434号 12 顔面蒼白という捨身なり桜 左孝石画 福井
434号 13 日向ぼこ衰弱の骨透けるまで 佐藤幸子 新潟
434号 14 割烹着の姑おおきな蕪であり 猿渡道子 群馬
434号 15 春の河相撲取るような月が出て 篠田悦子 埼玉
434号 16 初夢や手燭とどかぬ廊ありて 鱸 久子 埼玉
434号 17 花に酔う人にうしろの馬笑う 鈴木八駛朗 北海道
434号 18 春鹿の闇つらつらと小学校 関田誓炎 埼玉
434号 19 桜を離れる水から上るようにかな 芹沢愛子 群馬
434号 20 耕人となり父となり光る彼ら 十河宣洋 北海道
434号 21 堕天使の翼色して白菜は 高桑婦美子 千葉
434号 22 自由とは包丁で切る心太 高橋明江 埼玉
434号 23 旅の帆のよう折紙のよう春耕 田口満代子 千葉
434号 24 雁帰る半端な数の二十九羽 竪阿彌放心 秋田
434号 25 ほどほどという侘しさ春の山 玉乃井明 愛媛
434号 26 晩春に近づくわれに一番星 董 振華 中国
434号 27 大鷺を書き置きのようにかな 中田里美 東京
434号 28 蛇行なくばただの死の河雪解待つ 中林栄子 神奈川
434号 29 紀の川を横一文字に茅花流し 中村ヨシオ 和歌山
434号 30 左足越えて右足耕せり 中山蒼楓 富山
434号 31 蜃気楼ときどき飛沫になる礁 成井惠子 茨城
434号 32 まんさく咲きしか満面童子の老父かな 長谷川順子 埼玉
434号 33 シクラメン静かに根腐れジャーナリズム 藤野 武 東京
434号 34 桜散る一画違えば幸と辛 丸木美津子 愛媛
434号 35 銃口やモンローウォークして狐 丸山マサ江 群馬
434号 36 真夜、母に紅梅の風持たせやる 水野真由美 群馬
434号 37 余白は燃えるかもしれない逃水 三井絹枝 東京
434号 38 会津はや腹召すように蝶生まる 柳生正名 東京

435号 1 花三分耄碌しまして生き易し 新井娃子 埼玉
435号 2 句の屑の多しあめんぼういそぐなよ 荒井まり子 京都
435号 3 西行忌樹下の母子の耳飾り 市野紀余子 埼玉
435号 4 白鳥になりし初夢騒がしき 一ノ瀬タカ子 東京
435号 5 蜘蛛の巣のけむりのごとき物忘れ 伊藤淳子 東京
435号 6 青枇杷や徘徊癖の人を見る 榎本祐子 兵庫
435号 7 褌を垂らす天井万愚節 大高俊一 秋田
435号 8 青竹にカーンと礫卒業す 小暮洗葦 新潟
435号 9 海明けのスローな粒々わたしたち 加川憲一 北海道
435号 10 揚ひばり飲食の野をもたらして 柏倉ただを 山形
435号 11 臘梅や精神的に風邪ごこち 金子斐子 埼玉
435号 12 古池や蛙の目玉また目玉 金谷和子 埼玉
435号 13 青葉ざんざ野鍛冶の作るうさぎたち 河原珠美 神奈川
435号 14 春の蚊よ記号のごとく名を呼ばれ 河野志保 奈良
435号 15 水玉の服に体はまぎれたる こしのゆみこ 東京
435号 16 涅槃西風歩みは走りかもしれず 小林一村 福井
435号 17 遠い身内に会うとき喪服麦の秋 小堀 葵 群馬
435号 18 土と暮らしぶっきら棒は茎立です 篠田悦子 埼玉
435号 19 慈悲心鳥無為とも男なり 白井重之 富山
435号 20 れんぎょう雪柳多数派は大声 芹沢愛子 群馬
435号 21 腕立てて伏せてぺしゃんこ目借時 高木一恵 千葉
435号 22 心電図見ており眼窩意識して 高桑弘夫 千葉
435号 23 コンビニの明り縁に落花かな 田口満代子 千葉
435号 24 ぶらんこ漕げ漕げ逆さの母に逢えるまで 土屋寛子 神奈川
435号 25 任せっきりは一つの悟り藤の花 峠 素子 埼玉
435号 26 菖蒲湯の父のくしゃみが茶の間まで 峠谷清広 埼玉
435号 27 腰痛の一本もなき芽吹きかな 中村孝史 宮城
435号 28 海鳴りを落さぬように葱坊主 丹生千賀 秋田
435号 29 新緑や猫も小石も蹴りやすし 橋本和子 長崎
435号 30 生はげの三人で行く一列 日高 玲 東京
435号 31 自転車の荷台に襁褓春の人 平山圭子 岐阜
435号 32 片陰や寿命というは窮屈な 広辻閑子 石川
435号 33 軽薄なポリバケツ飛ぶ春の風 藤野 武 東京
435号 34 陽炎のうつりし集合写真かな 堀之内長一 埼玉
435号 35 さくら過ぎて全員が見る月球儀 宮崎斗士 東京
435号 36 連翹やどこか短気なハングル文字 室田洋子 群馬
435号 37 山法師だんべえとずらの国境 柳生正名 東京
435号 38 無言劇もしくは春の燃えのこり 渡部陽子 宮城

436号 1 邂逅も流離なるべし胡蝶蘭 阿川木偶人 東京
436号 2 棒切れで戦知らずが野に遊ぶ 阿木よう子 富山
436号 3 供養とは語り継ぐこと花は葉に 浅生圭祐子 愛知
436号 4 影踏みや初夏とは夕風の呼吸 飯島洋子 東京
436号 5 桐の花職場復帰の乳匂う 五十嵐好子 東京
436号 6 浜昼顔文脈とぎれとぎれなり 伊藤淳子 東京
436号 7 百足見ての一瞬の殺意許されよ 植村金次郎 三重
436号 8 仏頭が地に落ち蟻をつぶしけり 内野 修 埼玉
436号 9 鯨神輿浜が消えたとうねります 大西健司 三重
436号 10 緑陰の真水のごとく無力なり 川田由美子 東京
436号 11 でで虫やいつまで抱くの膝頭 久保恵美子 福井
436号 12 仕事柄蜻蛉の中に立ちにけり こしのゆみこ 東京
436号 13 貝櫓見知らぬ窓に半旗かな 小長井和子 神奈川
436号 14 杖と歩むはぐれやすさよ夏落葉 小林一枝 東京
436号 15 そこいらに夢置き眠る渡り漁夫 猿渡道子 群馬
436号 16 金魚鉢なかに長崎ありにけり 品川 暾 山口
436号 17 闘牛や山を見るのに目を剥いて 篠田悦子 埼玉
436号 18 紫陽花の夕暮れ揺れるから家族 柴田和枝 愛知
436号 19 植田から君の声して布団干す 清水恵子 長野
436号 20 総身を映せば蛇に戻れない 菅原和子 東京
436号 21 大でまり人は眠りを貪るべし 鈴木修一 秋田
436号 22 ふくらはぎ痙るままにピーマンは函に 高橋たねを 香川
436号 23 汝の歯の白さ憎っくき麦の秋 土屋寛子 神奈川
436号 24 国家なんか恐れぬ妻の裸身かな 峠谷清広 埼玉
436号 25 枇杷は実に独居老人音読す 野田信章 熊本
436号 26 熱ありて浜昼顔と同じ目覚め 平井久美子 福井
436号 27 磁力かな村中の熊蜂くる 平山圭子 岐阜
436号 28 蝶一双水のひかりを縒り上ぐる 前田典子 三重
436号 29 捨猫の深爪からむふきのとう 松本照子 熊本
436号 30 はつ夏の自画像馬を見ておりぬ 水上啓治 福井
436号 31 酔う二人ふくらんで見る金魚かな 三井絹枝 東京
436号 32 旅という空き箱に鈴青水無月 宮崎斗士 東京
436号 33 草の花もあなたもくどいのだ 村田ミナミ 神奈川
436号 34 紙風船日の出の島をすべりおり 森田高司 三重
436号 35 高速道に先頭がある麦の秋 矢野千代子 兵庫
436号 36 もどろかな紫陽花の鞠のバランス 山本昌子 京都
436号 37 娘の子ども近江訛りで真みどりで 横地かをる 愛知

437号 1 文字持たぬ民のありけり青葉木菟 浅生圭祐子 愛知
437号 2 逆上の気分充満羽抜鶏 池長露声 北海道
437号 3 この水の広がりも旅山ほととぎす 伊藤淳子 東京
437号 4 立ちて消える虹の両極征きし逝きし 植田郁一 東京
437号 5 端居してのっと月日が傾いて 上原祥子 山口
437号 6 畦道は父の二の腕大西日 植村金次郎 三重
437号 7 トルコ桔梗踵返すも選択なり 宇田蓋男 宮崎
437号 8 燕来て我が家我が家と喋りけり 内野 修 埼玉
437号 9 不惑とは暗号めきて花は葉に 宇野律子 神奈川
437号 10 庭に真白き蝶きてヒラヒラ語り 戎 武子 岡山
437号 11 絵日記の川蜻蛉淡くつるみけり 大西健司 三重
437号 12 万緑や宇宙にひとつ被爆星 岡崎万寿 東京
437号 13 ナナホシテントウ旅の赤んぼ甘酸っぱい 加古和子 東京
437号 14 闘牛の地ひびき哀しわれは過客 金子斐子 埼玉
437号 15 田水沸くたてよこたかさあるごとく 金子ひさし 愛知
437号 16 青葉木菟人を見ている真面目貌 北村美都子 新潟
437号 17 牡蠣殻の冷える家とも岸辺とも 黒岡洋子 東京
437号 18 蛞蝓尊がみそぎし泉あり 関田誓炎 埼玉
437号 19 梅雨荒れを喝采といふ病臥かな 高橋 喬 新潟
437号 20 杼の音すこし青柿の玉に籠れる 高橋たねを 香川
437号 21 耳底は砂丘なりしよ南吹く 田口満代子 千葉
437号 22 射程距離に馬のまぐわい四月馬鹿 殿岡照郎 ブラジル
437号 23 家よりも芭蕉大なる夜涼かな 中島偉夫 宮崎
437号 24 くちなしやあらゆる雨の浅葱色 中田里美 東京
437号 25 眠くなれば見えぬ目も閉ず浜昼顔 中原 梓 埼玉
437号 26 雷あびて金剛力の蟻となる 野崎憲子 香川
437号 27 橡の花鼻毛吹き出す神楽面 日高 玲 東京
437号 28 甲虫飛び立つ引力の油断 平塚波星 秋田
437号 29 さみだれをあつめし日常ささにごる 藤野 武 東京
437号 30 狐出てまぶしき青葉しぐれかな 前田典子 三重
437号 31 三月のこどもひとりで歯をみがく 水野真由美 群馬
437号 32 球を描くような旅ですあめんぼう 宮崎斗士 東京
437号 33 喪のいろの蕨煮ているまた戦争 武藤暁美 秋田
437号 34 時計草行きつ戻りつして一日 村上友子 東京
437号 35 ポテンヒット螢の宿にほたるかな 村田ミナミ 神奈川
437号 36 蝦夷鹿は託かりもの霧の巻く 矢野千代子 兵庫
437号 37 僧形やころんと枇杷の種を吐き 山田哲夫 愛知
437号 38 糸遊庵空中の花繚乱と 山本逸夫 岐阜
437号 39 鐘は鳴り ゆめははだかの一部なり 横山 隆 長崎

438号 1 白鷺と厳父座礁の水田かな 有村王志 大分
438号 2 ひまはりや友のおなかに王子さま 伊佐利子 福岡
438号 3 自分になれる喧噪の汗のサイゴン 石上邦子 愛知
438号 4 血気さかんな童女に蹤きぬ一遍忌 石田順久 神奈川
438号 5 父の日の父早世の影法師 伊東友子 埼玉
438号 6 一捕虜の父の奏でるバラライカ 糸山由紀子 長崎
438号 7 島の海女耕人となり母となり 稲葉千尋 三重
438号 8 崖下に婚礼の家蜘蛛は巣に 今福和子 鹿児島
438号 9 青磁のような馬と眠りし白夜かな 榎本愛子 山梨
438号 10 アルバムに静止の君にざんざ降り 榎本祐子 兵庫
438号 11 トマト頬張るあの夢逃がせない 奥貫恵巳 富山
438号 12 ででむしや伊勢に木遣と木を曳く衆 大西健司 三重
438号 13 蟻じぐざぐ人間じぐざぐ眠るまで 川崎千鶴子 広島
438号 14 赤児にしゃっくり移して飛べる法師蝉 上林 裕 東京
438号 15 夏の森忽然と人奥にゆく 黒岡洋子 東京
438号 16 遠花火八月二日天まで焼けた 小池弘子 富山
438号 17 鰻さばいて誰そがれも彼はたれもなき 小林一枝 東京
438号 18 子鹿群れて膝の痛みの目覚めかな 小原恵子 埼玉
438号 19 渚の砂にめぐみと書いて夏は逝く 佐藤幸子 新潟
438号 20 ざわめきを言葉にもどす夜の噴水 柴田和江 愛知
438号 21 紀勢線西瓜を先に座らせる 瀬古多永 三重
438号 22 みみず掘る鷄もわれらも住み古りて 高井元一 埼玉
438号 23 遺伝子に忘れる仕組み籠まくら 高木一恵 千葉
438号 24 母に添え父にぶつかれ小鯵刺 たかはししずみ 愛媛
438号 25 あぢさゐは多情多弁な私です 武田美代 栃木
438号 26 抱きとめてほどいて〈わたし〉水母浮く 田中亜美 神奈川
438号 27 一切を桐の家に置き忘れ候 田中昌子 京都
438号 28 点滴が血となり夜の雷去りぬ 新田富士子 愛媛
438号 29 海紅豆火山灰わが窓を閉しをり 林 壮俊 東京
438号 30 永眠のはじめに仮眠ハンモック 福原 實 神奈川
438号 31 ニートという君殻うすき蝸牛と 藤野 武 東京
438号 32 人語って厄介ですよつばめ飛ぶ 藤本武男 山口
438号 33 山繭を空にかざして少年老ゆ 松本勇二 愛媛
438号 34 幼年やまぶたに落とす羽の翳 水野真由美 群馬
438号 35 夕顔や施錠もじゃんけんも一瞬 宮崎斗士 東京
438号 36 鬼太鼓の不意の打ち止め夜の蝉 武藤鉦二 秋田
438号 37 青胡桃こめかみに乱読のなごり 茂里美絵 埼玉
438号 38 夜更かしの帆の真みどりに夏の星 森尾ミモザ 長野

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