金子兜太選 海程秀句」鑑賞 
2016年目次

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各号ごとに観賞した順番は〈あいうえお〉順となっています

作者名
地域 
519号 1 「きみがゐてわれがまだゐて」秋灯し 阿保恭子 東京
519号 2 死ねば肉親寄るだけの家木守柿 有村王志 大分
519号 3 思考かな葡萄一房うずくまる 安藤和子 愛媛
519号 4 茄子の馬歩幅の合わぬ老ふたり 石井礼子 群馬
519号 5 母はいま花野吹く風父の葬 伊藤 巌 東京
519号 6 芋煮る母ぼそぼそ父の正信偈 上田久雄 石川
519号 7 巨木あり巨木ありとふ山の蝉 内野 修 埼玉
519号 8 森よりも梟よりも暗い平和 岡崎正宏 埼玉
519号 9 歳月や秋風に置く遺影と新著 岡崎万寿 東京
519号 10 なやまない桜にしたは闇でしょうか 加納百合子 奈良
519号 11 草いきれ弱虫だってデモに行く 川原珠美 神奈川
519号 12 塔上にどなる男の静かな絵 菊川貞夫 静岡
519号 13 玉蜀黍一本を茹でなんて自由 佐々木香代子 秋田
519号 14 熊よりも低く唸って上る鮭 佐々木宏 北海道
519号 15 満月を壊さぬように馬磨く 佐藤二千六 秋田
519号 16 風の盆憑かれぽつんと老いにけり 猿渡道子 群馬
519号 17 かりがねや青春といい擦り傷といい 白石司子 愛媛
519号 18 旅の宿白雨に鏡拭いており 新城信子 埼玉
519号 19 青蜥蜴と眼の饒舌な禅僧なり 関田誓炎 埼玉
519号 20 狐に会い妻がはにかむ秋野原 十河宣洋 北海道
519号 21 三竦みの下に難民冬間近 滝沢泰斗 千葉
519号 22 破れ蓮やうれしきものの日の光 竪阿彌放心 秋田
519号 23 凍裂の谺なりけり夜の躰 田中亜美 神奈川
519号 24 秋の空麒麟麦酒のあふれかな 田中昌子 京都
519号 25 別れにも鮮度のありて吾亦紅 田浪富布 栃木
519号 26 母が話すばかりの父や終戦忌 田村勝美 新潟
519号 27 牝鹿佇つ水より遠き瞳して 月野ぽぽな アメリカ
519号 28 世間という不気味な本音冷まじや 峠谷清広 東京
519号 29 秋の田よかりほのフクシマの人々 中村 晋 福島
519号 30 蛇の衣眼の痕のつややかに 新野祐子 山形
519号 31 鳥渡る深く短く眠りては 福島美樹 佐賀
519号 32 葱切る音湯の滾つ音反戦や 藤野 武 東京
519号 33 細切れの眠りひんやり黒葡萄 本田ひとみ 埼玉
519号 34 戦争をはたと睨みて名月や 舛田 長崎
519号 35 落蝉や人声のこんなに乱れて 村上友子 東京
519号 36 地図辿る退屈が好き黒葡萄 森央ミモザ 長野
519号 37 空しさは程好い器花梨煮る 山下一夫 鳥取
519号 38 大気より命あおあお鳥渡る 横地かをる 愛知

520号 1 父が遺愛の木椅子朽ちたり小鳥来る 安藤和子 愛媛
520号 2 蔦かづら姪に猫背の兆しかな 石川まゆみ 広島
520号 3 武州なり夜を持ち上げて曼珠沙華 伊藤 巌 東京
520号 4 草の穂にただ漣の人の声 伊藤淳子 東京
520号 5 罠に猪観世音立つ丘に霧 上田久雄 石川
520号 6 梟の闇よはるかな浮遊感 榎本愛子 山梨
520号 7 壊れる家壊される家思い草 大高洋子 東京
520号 8 底抜けに笑う湯豆腐吾のもの 奥野ちあき 北海道
520号 9 目の中に眼のあるピエロ文化の日 片岡秀樹 千葉
520号 10 ながれぼし猫の鼓動の静かにやむ 岸本マチ子 沖縄
520号 11 嚔して口中にただ空洞あり 小西瞬夏 岡山
520号 12 神在の月で女子会ばかりかな 品川 噸 山口
520号 13  悼・阿川木偶人
弦月よほっこりぬくい諧謔に
志摩京子 東京
520号 14 シャドーボクシング内耳に雪が降る 白石司子 愛媛
520号 15 夫の背に我が影のあり花八手 新城信子 埼玉
520号 16 小さな町に静かに暮らす冬籠もり 末岡 睦 北海道
520号 17 雪激し影を重ねて鳥獣 十河宣洋 北海道
520号 18 田に老人朝日赤ん坊 竹内義聿 大阪
520号 19 身を横たえる長き夜の琴として 月野ぽぽな アメリカ
520号 20 枯葉降る俺には喧嘩腰で降る 峠谷清広 東京
520号 21 りりりりり真白き露の玉よ祖母 遠山郁好 東京
520号 22 百合の名を覚えし孫よ戦さあるな 中島まゆみ 埼玉
520号 23 私に白鳥大きな胸見せる 中塚紀代子 山口
520号 24 小鳥来る被爆マリアの眼窩より 野崎憲子 香川
520号 25 野分去る夫の死顔整えき 日高 玲 東京
520号 26 山眠る鬱の字のよう家事雑多 船越みよ 秋田
520号 27 どしゃ降りや折鶴のよう死装束 北條貢司 北海道
520号 28 鳳仙花斧振る暮らしはるかなる 堀之内長一 埼玉
520号 29  秩父俳句道場・謝意を込めて
金子兜太納豆交ぜるや辛子多し
マブソン青眼 長野
520号 30 葭切と死にはぐれたる漢かな 水野真由美 群馬
520号 31 ふと人は僧のよう立ち桔梗かな 三井絹枝 東京
520号 32 地雷無き国踏んでみる霜柱 武藤鉦二 秋田
520号 33 釣瓶落し岩があるから目礼す 茂里美絵 埼玉
520号 34 掌に受ける柿重し秩父は膣部 柳生正名 東京
520号 35 梟の目覚めか新宿歌舞伎町 安井昌子 東京
520号 36 月光のガンジス黝きわが荒野 大和洋正 千葉
520号 37 綿虫飛ぶ山がかたちになっている 横地かをる 愛知
520号 38 枯菊の一本全部ください 横山 隆 長崎
520号 39 紙漉きの家に臨時の柿売り場 吉村伊紅美 岐阜

521号 1 凍蝶の棲み家となりし日記かな 伊藤 歩 北海道
521号 2 呼吸も思考も全身打撲乱れ菊 伊藤 和 東京
521号 3 憂える国の毛虫に刺され草に負け 宇田蓋男 宮崎
521号 4 ブルゾンをかりてうふふふつてかへした 小川楓子 神奈川
521号 5 冬銀河手錠の冷たさだと思う 片岡秀樹 千葉
521号 6 霜の夜の触感ヒトの匂い消す 狩野康子 宮城
521号 7 雨ですあぢさいの向ふは奈落です 加納百合子 奈良
521号 8 老父喧嘩つぱやし山茶花時雨かな 木下ようこ 神奈川
521号 9 両肩に小寒い畑想うかな 小池弘子 富山
521号 10 ひらがなを吾が血と思うひなたぼこ 小林寿美子 滋賀
521号 11 秋声やこの世離るる北の友 坂本久刀 兵庫
521号 12 山枯れて夜景に闇が加わりぬ 佐々木昇一 秋田
521号 13 理不尽に子の叱られる師走かな 柴田美代子 埼玉
521号 14 大白鳥こめかみに詩が降りてくる 白石司子 愛媛
521号 15 初時雨どの声以てわれとせん 鈴木孝信 埼玉
521号 16 鵙の贄朝日子われの耳朶を咬む 関田誓炎 埼玉
521号 17 若き死に添えば背中は冬の凪 たかはししずみ 愛媛
521号 18 まばたきは遠流のごとし冬の鹿 田口満代子 千葉
521号 19 俺は俳句だなどと紅葉が日の中に 谷 佳紀 神奈川
521号 20 妖怪になりつつ老いる花野菜 田沼美智子 千葉
521号 21 十二月別るる為に逢いにゆく 玉木節花 宮崎
521号 22 冬座敷わたしにものを言う人形 寺町志津子 東京
521号 23 隙間風ああ愚痴さえも自己模倣 峠谷清広 東京
521号 24 ささくれや山茶花の白が痛いのです 中田里美 東京
521号 25 赤の他人六人寄れば芋煮会 並木邑人 千葉
521号 26 夫藍濃しことば超えたる母の遺書 成井惠子 茨城
521号 27 人の句に打たれし頭冬に入る 西又利子 福井
521号 28 戦を語る義父よ秋ぐみ噛むように 野田信章 熊本
521号 29 秋暑し準優勝とう敗者あり 野原瑤子 神奈川
521号 30 うしろから来るなと息子初日の出 橋本和子 長崎
521号 31 夫去る日なりし冬の鴉の甘き声 日高 玲 東京
521号 32 鳥帰る唇を出てゆくことばのよう 北條貢司 北海道
521号 33 若書きを冬青草に燃やすかな 堀之内長一 埼玉
521号 34 彼の世とは翳なきところ白鳥来 前田典子 三重
521号 35 手びねりは土の悦楽ななかまど 三好つや子 大阪
521号 36 綿虫と揺らぐまなぶた旅のまま 森央ミモザ 長野
521号 37 梟は帽子のごとく頷けり 守谷茂泰 東京
521号 38 長き夜や鉛筆削る無意識に 吉村伊紅美 岐阜
521号 39 四肢軟弱のわれ山繭の重ね着美し 若森京子 兵庫

522号 1 籾殻焼くわが晩節の焔かな 有村王志 大分
522号 2 密かなる戦中なのか初日浴ぶ 石川青狼 北海道
522号 3 きな臭き朝刊に乗す寒卵 市原光子 徳島
522号 4 薺粥鴨長明も啜ったか 伊藤雅彦 東京
522号 5 野合という不埒な言葉そぞろ寒 梅川寧江 石川
522号 6 狐火を自由にさせて眠るなり 榎本祐子 兵庫
522号 7 大気汚染わが喘鳴のうしろ臘梅 大上恒子 神奈川
522号 8 蕪も我も母の産物息災です 加藤昭子 秋田
522号 9 犬逝きて両の手空くよ冬銀河 川崎千鶴子 広島
522号 10 草食の息子を軽く憎み冴ゆ 木村清子 埼玉
522号 11 駄菓子屋へ初東雲を入れにけり こしのゆみこ 東京
522号 12 話好きの僧侶猫舌ふぐと汁 小原恵子 埼玉
522号 13 フラフープ中は狐火かもしれぬ 佐々木宏 北海道
522号 14 贅沢に進化する国冬ざるる 佐藤美紀江 千葉
522号 15 雪もよい蟹食べに行く愉快なバス 重松敬子 兵庫
522号 16 霙るるや半身にふくろうを飼い 白石司子 愛媛
522号 17 新年の喪や洗面器あたらしき 高木一惠 千葉
522号 18 ああ吾はまこと父の子皹切れる 竪阿彌放心 秋田
522号 19 オニギリハアタタメマスヨ皹痛し 田中 洋 兵庫
522号 20 禿頭の冬木のような夫に寄る 田村蒲公英 埼玉
522号 21 細胞におよぶ引力年新た 月野ぽぽな アメリカ
522号 22 神の留守社務所は終夜酒盛りや 中村真知子 三重
522号 23 狐火や鬱の字□に収まらず 中村道子 静岡
522号 24 大いなるいのちのなかや冬銀河 野崎憲子 香川
522号 25 山茶花の扉は内にひらかれる 平田 薫 神奈川
522号 26 正月や鼻で笑って猫すぎる 廣島美惠子 兵庫
522号 27 夜更かしの耳あり雪の積もりおり 船越みよ 秋田
522号 28 光陰や潤目鰯のごと乾ぶ 堀之内長一 埼玉
522号 29 風評や少しゆがんだ冬満月 本田ひとみ 埼玉
522号 30 去り際の狐にニッと笑われる 松本勇二 愛媛
522号 31 書かざれば伏字はなけり風花す 水野真由美 群馬
522号 32 古書店の帰り冬鳥とほうよう 三井絹枝 東京
522号 33 怒も哀も山唄であり濁り酒 武藤鉦二 秋田
522号 34 輪の外の皇帝ペンギン着ぶくれて 森  鈴 埼玉
522号 35 縋るごと地に葉を広げ薺かな 諸 寿子 東京
522号 36 対岸の鷽の饑さすぐ吾に 矢野千代子 兵庫
522号 37 焼鳥の串で文字書く熱く書く 山内崇弘 愛媛
522号 38 梅一輪大いなる暗黒の土に 横山 隆 長崎
522号 39 雪霏々とどこか濡れてる自己模倣 渡部陽子 宮城

523号 1 永訣の霜踏み自愛言い交す 安藤和子 愛媛
523号 2 大根畑の土から上の下世話かな 宇田蓋男 宮崎
523号 3 田螺たにしと酒盛る村のみんな消ゆ 石川まゆみ 広島
523号 4 積み肥の湯気空に消え神遊び 伊藤 巌 東京
523号 5 雛飾る爪先立ちのバレリーナ 井上広美 東京
523号 6 春立つ日遊んで胸のぬた場かな 榎本祐子 兵庫
523号 7 春眠は積木の町のようなもの 大高宏充 東京
523号 8 青年の肩先に空母二月来る 小沢説子 神奈川
523号 9 道元のくちびる鶯餅のよう 小山柴門 福井
523号 10 春は曙ふらここに乗る修道女 加古和子 東京
523号 11 制服を着て来る国家寒の雨 片岡秀樹 千葉
523号 12 キツネよりズルい男だ海鼠食う 桂 凛火 兵庫
523号 13 ええ孤独以上よ雪をつくっています 加納百合子 奈良
523号 14 臘梅の山歩いた日過ぎゆく日 木村清子 埼玉
523号 15  悼 中原梓さん
茶目っ気と澄みし詩想よ星流る
黒岡洋子 東京
523号 16 追いかけるコートの袖を通さずに こしのゆみこ 東京
523号 17 枯野道なぐり書きのよう人咲いて 児玉悦子 神奈川
523号 18 冬濤に噛まれ噛みつく岬かな 五島高資 栃木
523号 19 木守柿むなしいなんて言うなバカ 小林寿美子 滋賀
523号 20 放課後のめまいのような冬木かな 佐孝石画 福井
523号 21 寒の水呑む何かに応えいるように 柴田美代子 埼玉
523号 22 麒麟という奇跡を見上げ息白し 鈴木修一 秋田
523号 23 蛮声の記憶の父の鬼やらい 高橋明江 埼玉
523号 24 梅白し銀河に屑のあることも 田中亜美 神奈川
523号 25 反戦の言葉発止と鬼やらい 田浪富布 栃木
523号 26 一人居はときどき枯野に道捜す 中島まゆみ 埼玉
523号 27 よく生きて首をいたわる柚子湯かな 中塚紀代子 山口
523号 28 ココナッツ母国語すでにおぼつかな ナカムラ薫 アメリカ
523号 29 雪とけて村いっぱいの除染ごみ 中村 晋  福島
523号 30 天命のいくばくとぞや雑煮餅 中村孝史 宮城
523号 31 花木槿女名多き合葬簿 野原瑤子 神奈川
523号 32 大地から人剥がれおり春浅し 藤原美恵子 岡山
523号 33 遠くから鳩にも見ゆる基地の鷹 マブソン青眼 長野
523号 34 餅を焼く火の色に父祖あぶりだし 武藤鉦二 秋田
523号 35 胡麻爆ぜるどの子も親の意に添わず 森由美子 埼玉
523号 36 雨にいて吾も雨の輪ほうれん草 森央ミモザ 長野
523号 37 マスクの中で舌出すことも立春 山内崇弘 愛媛
523号 38 夜の爼に黒ありありく雨水かな 柚木紀子 長野
523号 39 人日の村なり野馬の匂いのなか 横地かをる 愛知

524号 1 薄氷を来たるは彼奴わが九条 有村王志 大分
524号 2 和解して髪梳き土用蜆かな 石上邦子 愛知
524号 3 被曝牛を語る沢庵噛むように 稲葉千尋 三重
524号 4 貧乏疎開と呼ばれし故郷氷流れる 植田郁一 東京
524号 5 弁舌に戦が匂う霾ぐもり 宇川啓子 福島
524号 6 わが胸の深さに破船朧の夜 榎本愛子 山梨
524号 7 鮫という駅北にあり梅真白 大西健二 三重
524号 8 厭世的で雨のさなかの二月礼者 小野裕三 神奈川
524号 9 九条はやわらかな布遠蛙 狩野康子 宮城
524号 10 酔っ払いの父がしらふで箱の中 川西志帆 長野
524号 11 父が付けてくれし名光子千草の芽 北村美都子 新潟
524号 12 同じ穴の狢の君と居る春野 木村清子 埼玉
524号 13 安楽死の火葬の煙帰雁かな 楠井 収 千葉
524号 14 老女らはうすうす群れて花水木 小原恵子 埼玉
524号 15 妻の咳我を鞭打つようにかな 齋藤一湖 福井
524号 16 我が身に我が家崩れる春の闇 佐藤鎮人 岩手
524号 17 深夜の街不機嫌そうに春埃 佐藤美紀江 千葉
524号 18 ものの芽や夢に原発爆発す 清水茉紀 福島
524号 19 穴を出る蛇鮮烈な権太面 十河宣洋 北海道
524号 20 春蘭や母を裏切る恋をして 高階時子 秋田
524号 21 青春のマストのごとく五月来る 武田昭江 東京
524号 22 低気圧・高気圧・春愁いかな 田浪富布 栃木
524号 23 花粉症私何処でも場違いで 峠谷清広 東京
524号 24 さくら狩さくらのままの母帰る 永田タヱ子 宮崎
524号 25 日は海を出て戦争をみて沈む 中村加津彦 長野
524号 26  自宅除染終わる
蛾光るよ被曝の土を埋めし土も
中村 晋 福島
524号 27 蝶よりも軽い魂にさようなら 夏谷胡桃 岩手
524号 28  悼 北原志満子先生
鵲の野を知る人夏の笑み深し
野田信章 熊本
524号 29 揚雲雀手話のおしゃべり寝転びて 野原瑤子 神奈川
524号 30 タイムトラベル夢見しよりの春愁 堀之内長一 埼玉
524号 31 さくらいろの一重の息すおばあさん 三井絹枝 東京
524号 32 雁発てり水の底まで北の空 武藤暁美 秋田
524号 33 漆黒を重ね花待つ塗師かな 武藤鉦二 秋田
524号 34 蕗味噌や二夜連続の大地震 村松喜代 熊本
524号 35 連翹の黄よ棒立ちの言葉たち 室田洋子 群馬
524号 36 胃の上に猫の前足花の冷え 森武晴美 熊本
524号 37 リラ冷えやわが膝に皿ありしこと 山本昌子 京都
524号 38 空つぽのバスが遍路を抜いてゆく 若林卓宣 三重
524号 39 弟よ背によみがえる芹の息 若森京子 兵庫

525号 1 イヌフグリ恵みのように加齢かな 安藤和子 愛媛
525号 2 てんと虫を吹いて邪魔する遊びかな 石川まゆみ 広島
525号 3 地震止まず蟇の声さえ神々し 伊藤 幸 熊本
525号 4 麦秋や手ぶらのはずがこの重たさ 伊藤淳子 東京
525号 5 今日もまた日永の油断やっつけ飯 上田和代 大阪
525号 6 梨の花好いとこ取りのわが記憶 宇田蓋男 宮崎
525号 7 牢番の蝋石をもて詩を書けり 大西健司 三重
525号 8 流木にあらず九条は滝である 岡崎正宏 埼玉
525号 9 ふまじめな犬と私と桐の花 加古和子 東京
525号 10 身のどこかに咲く薔薇があり傘寿なり 京武久美 宮城
525号 11 仏頂面の素顔がうれしい牛蛙 小林まさる 群馬
525号 12 十薬のはびこる生家安堵する 佐藤紀生子 栃木
525号 13 風船かずら戦争恐いからデモる 四王村玖希 埼玉
525号 14 耕しの僧に猿来て狗も雉子も 篠田悦子 埼玉
525号 15 大地震水菜芥子菜の地が裂けて 白井重之 富山
525号 16 このところ糸遊纏ひ初老かな すずき穂波 広島
525号 17 肥後大変日向は不安菜種梅雨 鈴木康之 宮崎
525号 18 正対すれば鹿の目勁し芽木さかん 十河宣洋 北海道
525号 19 巣燕にわれも口開く喪明けかな 高木一惠 千葉
525号 20 いつもの鍵さがす現や狐火や 田口満代子 千葉
525号 21 後からあとから直ぐに忘れて羅漢となり 竹内義聿 大阪
525号 22 緑雨過ぐさびしき狼さびしき君 田中亜美 神奈川
525号 23 菖蒲湯や手拭坊主子と作る 田浪富布 栃木
525号 24 花屑哀し臍の緒のごとく乾き 月野ぽぽな アメリカ
525号 25 春落葉助けてほしいと言えなくて 峠谷清広 東京
525号 26 曳く蟻に行く蟻何か言うて光る 中村 晋 福島
525号 27 夜の地震臓腑に及ぶ立夏かな 野田信章 熊本
525号 28 蠅が来てわが頭で遊ぶ時間かな 藤野 武 東京
525号 29 耕の畝一途なり身籠りぬ 船越みよ 秋田
525号 30 大地裂けても必ず咲くよ肥後六花 堀之内長一 埼玉
525号 31 ヤマブキと揺れて沈まず母の家 松本勇二 愛媛
525号 32 春の地震まるで玉砕 墓石は 汀 圭子 熊本
525号 33 ああ昭和まだくすぶるや葉桜に 宮川としを 東京
525号 34 妻の機嫌いそぎんちゃくのようだ嫌だ 宮崎斗士 東京
525号 35 この峡の落花ひんやり乳房かな 茂里美絵 埼玉
525号 36 凍て鶴ややたらに痒い脛を持つ 森由美子 埼玉
525号 37 燕の巣抱きて倒壊震度七 森武晴美 熊本
525号 38 山の国火の国青野に続く地震 大和洋正 千葉
525号 39 暗黒や万朶の桜ではないか 横山 隆 長崎

526号 1 息絶えし夫のなごりの温みかな 阿保恭子 東京
526号 2 身体中水の傾く熊本地震 有村王志 大分
526号 3 個体は愛集団は憎春の鹿 石川青狼 北海道
526号 4 半夏生略語に翻弄さる齢 市原光子 徳島
526号 5 頭から蛍こぼれますお地蔵さま 稲田豊子 福井
526号 6 ときどきは暗くなる日の蕗を煮る 上野昭子 山口
526号 7 四葩咲く生臭きもの日々食べて 榎本祐子 兵庫
526号 8 馬鈴薯の明るいおぎゃ稚いおぎゃ 大沢輝一 石川
526号 9 千の余震欠けたコップのばら開く 柏原喜久恵 熊本
526号 10 穴掘ってばかりいる街桜桃忌 片岡秀樹 千葉
526号 11 まぼろしは二月のあそびしろつめくさ 加納百合子 奈良
526号 12 夏星を挑発露天風呂のわたし 川崎千鶴子 広島
526号 13 野に母を沈め琥珀の薄暑かな 川田由美子 東京
526号 14 自分史を手広く配布金魚浮く 楠井 収 千葉
526号 15 爪光らせてくる田植機やにこにこす 黒岡洋子 東京
526号 16 言霊や朝の狭庭に白鶺鴒 児玉悦子 神奈川
526号 17 紀音夫忌や二塁手かるくバックトス 小松よしはる 東京
526号 18  27年ぶりの国民学校卒業式挙行
「君が代」を唄わぬ一人卒業す
小柳慶三郎 群馬
526号 19 遺影背に人魚座りの夏座敷 齋藤しじみ 東京
526号 20 出合頭の蜂に執着夫の忌なり 篠田悦子 埼玉
526号 21 草毟り夏至の白夜をたのしめり 末岡 睦 北海道
526号 22 この花とこの世にありて蓮の池 高桑婦美子 千葉
526号 23 鶴引くや夜光時計のうすみどり 田口満代子 千葉
526号 24 気の抜けない人いて桜ばかりなり 谷 佳紀 神奈川
526号 25 麦熟星あしたも会うみたいにに別れ 月野ぽぽな アメリカ
526号 26 夜濯やジュゴンを運ぶ船通る 遠山郁好 東京
526号 27 初夏ひとり恥はらふかに奇声出づ 長尾向季 滋賀
526号 28 静かなる青空持ちて春の野は 中島まゆみ 埼玉
526号 29 独り居の星食べるよう猫まんま 夏谷胡桃 岩手
526号 30 毛虫急ぐ痒くなるまでいそぐ 丹生千賀 秋田
526号 31 地震の顔ばかり立夏の城下かな 野田信章 熊本
526号 32 滝の音わが空漠の汀とす 日高 玲 東京
526号 33 麦熟星はたらく馬はもういない 堀之内長一 埼玉
526号 34 軽いやうな重たいやうな鮎もらひ 前田典子 三重
526号 35 木の名前忘れやすくて小鳥来る 水野真由美 群馬
526号 36 あの金魚とよく目が合って執筆中 宮崎斗士 東京
526号 37 ひなげし畑喋って喋って母凋む 室田洋子 群馬
526号 38 眠い日常出目金の長い糞 森  鈴 埼玉
526号 39 陽の蜥蜴握手強きは好敵手 矢野千代子 兵庫

527号 1 目の奥のわが潮騒よねぶの花 伊藤淳子 東京
527号 2 短夜の夢は朦朧白い家 井上俊一 愛知
527号 3 人類と書く八月六日かな 上野昭子 山口
527号 4 照明燈に火蛾と義足のアスリート 榎本愛子 山梨
527号 5 勇気その他全部並べて山滴る 小野裕三 神奈川
527号 6 あじさい咲く半世紀の家罹災する 柏原喜久恵 熊本
527号 7 夏野ゆく眦冷えて漂えり 川田由美子 東京
527号 8 女人住職今朝は粽を結い給う 川村三千夫 秋田
527号 9 竹の秋疲れは手持ちぶさたに似て 北村美都子 新潟
527号 10 浮いて来い少女の股間蹴とばして 木村和彦 神奈川
527号 11 蝙蝠の湿度さわっとそっけない 久保智恵 兵庫
527号 12 白夜かな椅子高すぎる国に来て こしのゆみこ 東京
527号 13 ひとりとは流れることよ夏河原 佐孝石画 福井
527号 14 上がらない手猫の所作で顔湿す 釈迦郡ひろみ 宮崎
527号 15 蛍きちがいが一人いる郷土史会 白井重之 富山
527号 16 かなかなや灰として吾を樹下に撒け 菅原春み 静岡
527号 17 たんぽぽの絮なつくさの檻の中 鈴木修一 秋田
527号 18 七夕を最期にえらび祖母眠る たかはししずみ 愛媛
527号 19 加齢ふと眠ってばかりいる金魚 田口満代子 千葉
527号 20 わらわらと群れる老人栗の花 田浪富布 栃木
527号 21 静けさがあめんぼうのように和らいで 谷 佳紀 神奈川
527号 22 息ひとつ蛍火ひとつ響きあう 月野ぽぽな アメリカ
527号 23 冷酒や狂気をなんとか飼い馴らし 峠谷清広 東京
527号 24 鼻すする遥かへ菜花ひかりおり 中内亮玄 福井
527号 25 春の野に巨樹あり蘖を育て 中島まゆみ 埼玉
527号 26 身の中は噴火口なり揚羽蝶 野崎憲子 香川
527号 27 汗して旅草奔の語の鮮しく 野田信章 熊本
527号 28 たましいのための組曲黒ぶどう 橋本和子 長崎
527号 29 雀ほどの知恵かな麦わら帽子かな 平田 薫 神奈川
527号 30 縮む背にさらに燕の滅多斬り 堀真知子 愛知
527号 31 戦争を知らないわれら星祭り 本田ひとみ 埼玉
527号 32 夏至の鳥株情報紙にフン散らす マブソン青眼 長野
527号 33 初蝉が胸にぶつかる転ぶなよ 丸木美津子 愛媛
527号 34 枇杷いくつか母に老後の選択肢 宮崎斗士 東京
527号 35 しずかなる氾濫金魚の泡に泡 茂里美絵 埼玉
527号 36 蛇衣を脱いで逝くまで瞬かず 柳生正名 東京
527号 37 十二番線真夏日のフクシマへ 大和洋正 千葉
527号 38 自画像に傷加えたくなる敗戦忌 輿儀つとむ 沖縄
527号 39 帰省とは隣のおかずまでわかる 若林卓宣 三重

528号 1 代わる代わる焼け付くような墓洗う 石川青狼 北海道
528号 2 覚えなき死の堆し原爆忌 石川まゆみ 広島
528号 3 さざめきの歌の山へ猪食いに 伊地知健一 茨城
528号 4 濃き影を力に軽く踊り出す 市原光子 徳島
528号 5 謝罪なき式辞軽しよ敗戦日 伊藤雅彦 東京
528号 6 女の声のどっと芙蓉明りかな 稲田豊子 福井
528号 7 祭囃子未知は遠のく過去近づく 植田郁一 東京
528号 8 九条守れ鬼灯いっぱい両の手に 宇川啓子 福島
528号 9 万緑に浸り静かに猿のボス 内野 修 埼玉
528号 10 訥訥と古びし愛を生身魂 梅川寧江 石川
528号 11 ざくざくやざくざく軍靴蝉の穴 大高宏充 東京
528号 12 おはぎたべる見えない穴が無数なり 大谷 清 山梨
528号 13 青大将一瞬ひやり乳房かな 大野美代子 愛媛
528号 14 原爆忌影にもなれぬ骨いくつ 川崎益太郎 広島
528号 15 桃を食う二人の伯母の現れて 菊川貞夫 静岡
528号 16 百日紅燃える百日妻は無し 木村和彦 神奈川
528号 17 永遠とは蟻を見ていた頃の時間 河野志保 奈良
528号 18 巴里祭恥骨を上げてジーンズはく こしのゆみこ 東京
528号 19 鱧食べる笑いかくせぬ叔母たちと 小原恵子 埼玉
528号 20 熱帯夜米寿を生きる水を飲む 佐藤紀生子 栃木
528号 21 夫の死や被曝のりんご赤すぎる 清水茉紀 福島
528号 22 短夜の影を抜け出す体かな 白石司子 愛媛
528号 23 かたくなな穀象を愛で放ちけり 竪阿彌放心 秋田
528号 24 花合歓のような往還踊り果つ 田中亜美 神奈川
528号 25 星飛ぶや飛べぬ病む子に数えさせ 田中 洋 兵庫
528号 26 ごきぶりに呼び捨てされて二日酔い 峠谷清広 東京
528号 27 人間よ万緑をどう除染する 中村 晋 福島
528号 28 空蝉になるため夜の木を登る 平田恒子 東京
528号 29 異常という暑さの舌に塩こんぶ 廣島美惠子 兵庫
528号 30 海綿質とは八月の言葉かな 堀之内長一 東京
528号 31 黒あげは人はひっそり墓仕舞い 本田ひとみ 埼玉
528号 32 永らえむ独活きざむ夫あるかぎり 間瀬ひろ子 埼玉
528号 33 家訓なし突っつき合って冷奴 三浦静佳 秋田
528号 34 にいにい蝉臍の緒つけて藁人形 武藤鉦二 秋田
528号 35 透明な針魚鋭き子の感性 森由美子 埼玉
528号 36 鳥たちに空の回廊夏終わる 守谷茂泰 東京
528号 37 戦争を知らぬ為政者雲の峰 安井昌子 東京
528号 38 8月15日特攻の父のリュックサック 佳 夕能 富山
528号 39 原爆ドーム鳥籠のよう飛蚊症 若森京子 兵庫

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