金子兜太選 海程秀句」鑑賞 
2015年目次

鑑賞した句を順に並べてあります。
ひだりの番号をクリックするとその句の
鑑賞のページが別ウィンドーで開きます

戻るにはそのウィンドーを閉じてください。

各号ごとに観賞した順番は〈あいうえお〉順となっています

作者名
地域 
509号 1 遺されし人に晩年衣被 赤崎ゆういち 東京
509号 2 岐阜蝶や谷の暗さを使い切り 飯土井志乃 滋賀
509号 3 青かりん言葉がふっとひとり歩き 伊藤淳子 東京
509号 4 いきものの素足や月に触れてゆく 榎本祐子 兵庫
509号 5 魚の骨緻密な秋の一つです 大沢輝一 石川
509号 6 不機嫌な闇へ下駄置く秋千草 大島昌繼 福島
509号 7 竹を伐る時効となりし罪数え 片岡秀樹 千葉
509号 8 存在が大口あけた柘榴の実 岸本マチ子 沖縄
509号 9 虫鳴くと鼓膜にうつくしき真闇 北村美都子 新潟
509号 10 れんこんの穴は八個だ躓くな 久保智恵 兵庫
509号 11 自愛とも棚田の水照り青傾り 黒岡洋子 東京
509号 12 木犀よりも密なる星座といて安堵 小林まさる 群馬
509号 13 秋雨だった傘貸したのが永久の別れ 佐々木昇一 秋田
509号 14 句を詠めり鶴が機織る夜のごとく 佐藤詠子 宮城
509号 15 日常がうす目している曼珠沙華 柴田美代子 埼玉
509号 16 逃げ水や人は十指をもてあまし 白石司子 愛媛
509号 17 遺影には適わぬ美男葛かな 須藤火珠男 栃木
509号 18 人も胡瓜も貧乏揺すりの後曲る 瀧 春樹 大分
509号 19 貧するも尻に肉あり夜の秋 竹内一犀 静岡
509号 20 あっぱれな妻の鼾や台風禍 竪阿彌放心 秋田
509号 21 母子草群落雨上がりの清純 谷 佳紀 神奈川
509号 22 曼珠沙華自分に脅える男です 峠谷清弘 東京
509号 23 小鳥来る二羽は間違いなく雀 中内亮玄 福井
509号 24 捨てられぬ亡夫の歯ブラシ茶立虫 中村道子 静岡
509号 25 太古より空埋める星鮭のぼる 新野祐子 山形
509号 26 身の中の荒野青条揚羽かな 野崎憲子 香川
509号 27 原子炉の大きな柩冷まじや 長谷川育子 新潟
509号 28 常の身のつねにくせあり鰯雲 疋田恵美子 宮崎
509号 29 実る木屑のように時はこぼれ 藤野 武 東京
509号 30 放射線を量る日常鳥渡る 本田ひとみ 埼玉
509号 31 鶏頭花頭の中はこんなもの 松本勇二 愛媛
509号 32 大芋虫を見てより不眠鳥打帽 汀 圭子 熊本
509号 33 青梅雨の淡海の岸に母を置く 水野真由美 群馬
509号 34 てのひらの上の無花果医学生 宮崎斗士 東京
509号 35 青林檎親を諭して娘の帰る 村上清香 愛媛
509号 36 月を見る手ぶらの翁こそ勇姿 村上友子 東京
509号 37 面白うて泪拭わん曼珠沙華 村田厚子 広島
509号 38 一字一字夕ひぐらしの声かな 茂里美絵 埼玉
509号 39 絹のきもの解けば万のうすばかげろう 若森京子 兵庫

510号 1 冬の地震わが身の内の零地帯 阿保恭子 東京
510号 2 大本営跡に尻乗せ神の留守 石川まゆみ 広島
510号 3 青虫とる指の鮮烈あたたかし 稲葉千尋 三重
510号 4 稲架解いて厨にもどる背中かな 上野昭子 山口
510号 5 綴れ刺せわたしのあたりはすぐ昏れる 榎本愛子 山梨
510号 6 青かった地球は昔むかしかな 大西政司 愛媛
510号 7 マフラーをしている方がバレリーナ こしのゆみこ 東京
510号 8 うたかたや稲田の揺れも旅人も 児玉悦子 神奈川
510号 9  悼浜芳女
手のひらに夕焼け溢れ熟柿落つ
小林まさる 群馬
510号 10 猪の背に星のあまたの家郷かな 小原恵子 埼玉
510号 11 雪降るよ臍噛むように透析す 小柳慶三郎 群馬
510号 12 日の出のような妻の体温に触れる 今野修三 東京
510号 13 万の露励ましのごと無人駅 佐藤紀生子 栃木
510号 14 廃校の大きな下駄箱鹿の声 佐藤鎮人 岩手
510号 15 秋のにがり靴底につく土くれや 柴田美代子 埼玉
510号 16 新米やつかまり立ちの指光る 鈴木修一 秋田
510号 17 木の実雨蔑む奴らと縁切り 鈴木孝信 埼玉
510号 18 老人に山気親しや鵙の贄 関田誓炎 埼玉
510号 19 猫じゃらしひとり遊びに一時間 高桑婦美子 千葉
510号 20 霜月や蜂しずまっている素さ 田口満代子 千葉
510号 21 枯野ゆく星雲ほどの靄ありて 田中亜美 神奈川
510号 22 秋の蝶絵の具の白を自立させ 田沼美智子 千葉
510号 23 蚯蚓鳴く悩むことさえ不器用で 峠谷清弘 東京
510号 24 月光に母を泛べる日向灘 疋田恵美子 宮崎
510号 25 わが医師の呵呵と笑うよ柿日和 廣島美恵子 兵庫
510号 26  悼加藤青女
少女の瞳と柚子の気息と一つ陽に
藤野 武 東京
510号 27 乗り継ぎに降りし空港巴里祭 松本悦子 東京
510号 28 羊雲百句仏訳して眠る マブソン青眼 長野
510号 29 母に父を笑わす力小鳥来る 三浦静佳 秋田
510号 30 流星群老いたる猫と猫背の友よ 水野真由美 群馬
510号 31 声のふかさ明るい桔梗のようかな 三井絹枝 東京
510号 32 きそのなあてっぺんの銀河凍りつく 宮坂秀子 長野
510号 33 とろろ汁母にも石を蹴る日常 宮崎斗士 東京
510号 34 馬撫でるよう半島の荒布干し 武藤暁美 秋田
510号 35 乳張ってきたか良夜の土偶かな 武藤鉦二 秋田
510号 36 まるめろのいびつよ誰のものでもなく 室田洋子 群馬
510号 37 寝足りてもまどろみ深し黒葡萄 森央ミモザ 長野
510号 38 石蕗咲くや母を見初めた父が好き 森武晴美 熊本
510号 39 冬蝶のごとくに頭痛去りにけり 守谷茂泰 東京

511号 1 寒菊の繊細愛す過去を愛す 相原澄江 愛媛
511号 2 玉あられ放浪の母に従う 阿木よう子 富山
511号 3 菊の香や表層崩壊の日々 荒井まり子 京都
511号 4 星の河鮭は憤怒の貌をなし 石川青狼 北海道
511号 5 結婚指輪埋まる指なり手袋す 石川まゆみ 広島
511号 6 蛇穴に学生街にバリケード 磯田政八 群馬
511号 7 無言劇惚けちまったねこじゃらし 市原光子 徳島
511号 8 椋鳥群れる想定内に再被曝 宇川啓子 福島
511号 9 産声や水辺の森の冬の星 江良 修 長崎
511号 10 どんぐりが屋根を打つ音軽い幽閉 大西宣子 愛媛
511号 11 野良猫にまみれて師走の子供かな 奥野ちあき 北海道
511号 12 あめんぼう根づこうなんて考えない 柏原喜久恵 熊本
511号 13 寒禽の眼光飢えを見てきたか 狩野康子 宮城
511号 14 指紋浮くガラスにかすか帰燕かな 川田由美子 東京
511号 15 鶴唳のつっぴんつっぴん冬ざるる 北上正枝 埼玉
511号 16 森に霧串の天魚のよく反りて 金並れい子 愛媛
511号 17 塩鮭をほぐしたくらいラブソング 河野志保 奈良
511号 18 猪食ぶやわれを笑わす孫ふたり 小原恵子 埼玉
511号 19 小鳥来る自伐林業の若者に 佐藤鎮人 岩手
511号 20 米寿師走忘るる事を吾にゆるし 四王村玖希 埼玉
511号 21 対談にある(笑)の多様花八つ手 柴田美代子 埼玉
511号 22 鋭角に落暉被曝の子白鳥 清水茉紀 福島
511号 23 真宗信者美形なり雪掻きす 白井重之 富山
511号 24 吾に娘は似てかたくな釣瓶落しかな 関田誓炎 埼玉
511号 25 了解とは違う沈黙秋フクシマ 芹沢愛子 東京
511号 26 禁じられた遊びのように霜柱 田井淑江 東京
511号 27 土鍋鉄鍋またこの冬を喰うている 高桑婦美子 千葉
511号 28 やみくもを直感といい冬の滝 田口満代子 千葉
511号 29 雪山は遠く見るものまだ死ねぬ 武田美代 栃木
511号 30 雪虫やただ眼のかすみたるのかも 竪阿彌放心 秋田
511号 31 三島とは言霊のとまる駅なり 田中昌子 京都
511号 32 武器持てば武器欲しくなる聖誕祭 夏谷胡桃 岩手
511号 33 月光の響くばかりや水の星 野崎憲子 香川
511号 34 鶏頭はたてよこななめ余所余所し 福原 實 神奈川
511号 35 シクラメン老いは酸っぱく面白い 本田ひとみ 埼玉
511号 36 ハロウィンの帽子をかぶり授乳かな 三好つや子 大阪
511号 37 味覚だけ冴える苛立ち白粉花 茂里美絵 埼玉
511号 38 土がやさしい足跡残し冬菫 森央ミモザ 長野
511号 39 獅子座流星群爪立ちて晩節よ 若森京子 兵庫

512号 1 父の晩年盆地の遅き初日かな 伊藤 巌 東京
512号 2 母を灯し夫を翳して寒北斗 稲田豊子 福井
512号 3 冬の鳥投票してきてまた黙す 井上湖子 群馬
512号 4 散華とや母が家に雪の降る 榎本祐子 兵庫
512号 5 冬の木の間に冬の木のぶらんこ 大高洋子 東京
512号 6 マスクとる虎のおしつこには注意 小川楓子 神奈川
512号 7 妙案や百羽の鴨がぱっと翔つ 門屋和子 愛媛
512号 8 星流る前歯にいくらかのすき間 木下よう子 神奈川
512号 9 軽口と時々咳鳥獣戯画 黒岡洋子 東京
512号 10 新雪踏む私が二匹目の獣 河野志保 奈良
512号 11 まず富士に日のさす冬のちまたかな 五島高資 栃木
512号 12 海底に届かぬ声か木枯か 白石司子 愛媛
512号 13 肩に雪負う樅のごと励みおり 鈴木修一 秋田
512号 14 よく肥えたドン・キホーテぞ冬の猫 須藤火珠男 栃木
512号 15 少子高齢みずみずしさは芹なずな 瀬川泰之 長崎
512号 16 水の動きは途方もなくて冬の風 高桑婦美子 千葉
512号 17 漂鳥や現ごころのなずな粥 田口満代子 千葉
512号 18 怒るって胸閉ざすこと花八手 武田昭江 東京
512号 19 漁師吐く小言が家訓冬の男鹿 舘岡誠二 秋田
512号 20 赤蕪さげて嵯峨釈迦堂を抜けにけり 田中昌子 京都
512号 21 フクシマの寒暮吾が子へシリウス指す 中村 晋 福島
512号 22 村の葬寒九の雨を待たせおり 中村真知子 三重
512号 23 雪原の起伏は神の鞍だろう 西又利子 福井
512号 24 地吹雪や輪郭という刺さるもの 丹生千賀 秋田
512号 25 予感とも岬に上る鷹柱 野原瑤子 神奈川
512号 26 手は常の白さ樹氷に昼の月 疋田恵美子 宮崎
512号 27 初春や歩幅そのまま詩とする 廣島美惠子 兵庫
512号 28 吹雪の夫婦は馬の前脚後脚かな 北條貢二 北海道
512号 29 安心の出合い頭の嫁が君 堀之内長一 埼玉
512号 30 麦の芽に雨粒イスラムの子等よ 本田ひとみ 埼玉
512号 31 初夢の母はわれより威勢よき 前田典子 三重
512号 32 焚火囲みふっと青春わっと悔い 松本勇二 愛媛
512号 33 幼子の声と綿虫ぶつかるよ 三浦二三子 愛知
512号 34 老醜や晴れ晴れ雪を抱きしめん 宮川としを 東京
512号 35 父在れば真っ白うさぎ胸に灯す 森央ミモザ 長野
512号 36 凍蝶がゐてすぐそばの遠い場所 柳生正名 東京
512号 37 芹を嗅ぎここから流離歩かねば 矢野千代子 兵庫
512号 38 雪降り積む日の目を見ない句の上に 山本キミ子 富山

513号 1 素気ない賀状じゃないか老いたかやい 石川義倫 静岡
513号 2 大北風や全き八ケ岳の光るなり 伊藤 巌 東京
513号 3 鵜は今日も濁りをまとう春隣 伊藤淳子 東京
513号 4 夭折は叶わぬ夢でありにけり 糸山由紀子 長崎
513号 5 度忘れは可憐な解脱冬欅 上田久雄 石川
513号 6 飼い猫のような返事の春炬燵 宇田蓋男 宮崎
513号 7 月冴えて雪隠まるでコックピット 大西政司 愛媛
513号 8 星の一つの大地に坐禅淑気かな 川口裕敏 東京
513号 9 春の土ついばむように母歩く 川田由美子 東京
513号 10 雪に顔埋めれば父のデスマスク 城至げんご 石川
513号 11 ぼんやりとこわれる風雅浮き寝鳥 京武久美 宮城
513号 12 漁舟美しく潤みて一月は 久保智恵 兵庫
513号 13 芒野の先は原発白鳥来 黒岡洋子 東京
513号 14 村捨てぬ人等咲かせる寒桜 近藤好子 愛知
513号 15 理屈では消せぬ我が癖畑返す 齋藤一湖 福井
513号 16 凍った半月さみしい咳が出る 笹岡素子 北海道
513号 17 寒雁やおとな未満の喉仏 猿渡道子 群馬
513号 18 金縷梅にきっと雪くる縁かな 篠田悦子 埼玉
513号 19 涅槃図に絆されている女ども 白井重之 富山
513号 20 チャルメラもあなたも遠い霜夜です 鱸 久子 埼玉
513号 21 汝が夢の春泥として吾ありぬ 田中亜美 神奈川
513号 22 扁平足のような面ざし水温む 田中昌子 京都
513号 23 恋猫に見惚れ老人であることよ 谷 佳紀 神奈川
513号 24 黄色くて小さいわたし雪がふる 月野ぽぽな アメリカ
513号 25 春はあけぼのツートントーンとお腹の子 寺町志津子 東京
513号 26 底冷えや身も蓋もなき我が孤独 峠谷清広 東京
513号 27 風呂吹や不意打ちくらいつつ人生 中嶋まゆみ 埼玉
513号 28 あえて言えば消滅の音だ吹雪 中村加津彦 長野
513号 29 子守歌のように作りし卵酒 中村真知子 三重
513号 30 呆けし人に確かな記憶冬の橋 中村道子 静岡
513号 31 恋せよ乙女遠くて近き冬北斗 野崎憲子 香川
513号 32 初鳩の真っ白な糞仏に落つ マブソン青眼 長野
513号 33 陽炎の小さな花屋はじめます 三井絹枝 東京
513号 34 野遊びや空からきっと見える二人 宮崎斗士 東京
513号 35 マンホールの蓋撮るおばさん雲雀東風 三好つや子 大阪
513号 36 降る雪や箪笥引くたび会える母 武藤暁美 秋田
513号 37 煮凝りをつついて津軽艶笑譚 武藤鉦二 秋田
513号 38 尽きぬ話暮れて二月の礼者かな 山本キミ子 富山
513号 39 臘梅やシルク・ロードの荷をほどく 若森京子 兵庫

514号 1 八月や絶対の距離兵の兄 有村王志 大分
514号 2 薄氷よ思いはいつもゆっくり単純 伊藤淳子 東京
514号 3 万歩計して君は陽炎の虜 石川青狼 北海道
514号 4 鳥の恋は被曝検査の対象外 宇川啓子 福島
514号 5 てふてふてふてふおほかた相聞歌 梅川寧江 石川
514号 6 月日というはかない沼にリラの冷え 大高洋子 東京
514号 7 花冷えや皿洗うよう顔洗う 奥山和子 三重
514号 8 閑古鳥刺繍の胸の盛り上がる 北上正枝 埼玉
514号 9 流離かなあとがきのよう梅咲いて 児玉悦子 神奈川
514号 10 かがなべて落ち合う春の垂水かな 五島高資 栃木
514号 11 鳥帰るピアノのモノローグが錆びる 笹岡素子 北海道
514号 12 老骨に鞭打ち骨折したそうな 佐々木昇一 秋田
514号 13 陽炎の上にゆらめく被曝街 清水茉紀 福島
514号 14 旅人に蟹の釜茹で流刑の地 末岡 睦 北海道
514号 15 楽器らの地声晴れ晴れ雪嶺へ 鈴木修一 秋田
514号 16 芽木あかり起き伏し荒く響くかな 十河宣洋 北海道
514号 17 きららむし母に修羅の日ありまして 竹田昭江 東京
514号 18 風土とは体をこすりあう蛙 舘岡誠二 秋田
514号 19 花吹雪しばし吾が影存在す 田浪富布 栃木
514号 20 もぐらの巣掘りまくる犬早春なり 谷口道子 京都
514号 21 男体山や病まず呆けず畦塗りす 藤間雅江 栃木
514号 22 真菰枯る亡父は戦病死とう戦死 中島まゆみ 埼玉
514号 23 前衛とふ始原の眼花ひらく 野崎憲子 香川
514号 24 陽炎と連れ立ち大きなひとりごと 野原瑤子 神奈川
514号 25 川抱いて土手が曲がるよゆっくり春 長谷川育子 新潟
514号 26 鰊群来旅芸人は躓いて 長谷川順子 埼玉
514号 27 恋猫のように鳴いてる鴉かな 平山圭子 岐阜
514号 28 燧石の火は生れて消ゆ上り鮎 藤野 武 東京
514号 29 鶏に似て来しわが手昭和の日 前田典子 三重
514号 30 ひとを待つひと世でありぬ柿若葉 水野真由美 群馬
514号 31 ゆめに梅その世を借りてあたたかし 三井絹枝 東京
514号 32 含羞という物の芽の皺であり 三好つや子 大阪
514号 33 梟と話す父あり追い越せぬ 武藤鉦二 秋田
514号 34 高階に蜜蜂を飼う母は天体 村上友子 東京
514号 35 人体はみな岬かな鳥帰る 守谷茂泰 東京
514号 36 巣立鳥どれかがきっと青い鳥 諸 寿子 東京
514号 37 髭あたることも惜命花過ぎて 柳生正名 東京
514号 38 水引いて蛙の恋する田を作る 山口 伸 愛知
514号 39 白内障かなしばらく暗い野の遊び 若森京子 兵庫

515号 1 赤ちゃんに五人の大人春惜しむ 浅生圭佑子 愛知
515号 2 岳父この寝息の起伏開戦日 有村王志 大分
515号 3 八十の細胞起立せり緑夜 安藤和子 愛媛
515号 4 愛鳥日ばあ出すごとく鳥翔てり 市原光子 徳島
515号 5 ひとり言溜まって春の河口かな 伊藤 歩 北海道
515号 6 セシウムに花眼を凝らし花は葉に 宇川啓子 福島
515号 7 蛍袋さうして誰もゐない部屋 梅川寧江 石川
515号 8 火消壺春のひとつの終り方 大沢輝一 石川
515号 9 青葉風散文的に家事をする 奥山和子 三重
515号 10 ふらここの手を離したのは私 河西志帆 長野
515号 11 木の芽雨無心の刻がふるえるとき 京武久美 宮城
515号 12 暮れのこる水田飯こぼす齢なり 小池弘子 富山
515号 13 おぼえたての言葉のようにががんぼ来 こしのゆみこ 東京
515号 14 つぐみ帰る耳打ちのよう水湧いて 児玉悦子 神奈川
515号 15 麦星よゆっくり拭う胸の谷 柴田和江 愛知
515号 16 殺意ともちがう窓いっぱいに夕焼 白石司子 愛媛
515号 17 太白を生む気圏なりの芽摘む 関田誓炎 埼玉
515号 18 家事ときにひざまずく所作桜二分 芹沢愛子 東京
515号 19 コンクリートの街に陽炎神経病む 竹内羲聿 大阪
515号 20 身のうちを白湯ゆくはやさ遠ざくら 津波古江津 神奈川
515号 21 かたつむり人は老いるのが下手だな 峠谷清広 東京
515号 22 雁皮紙やホットミルクの膜ねぶる 並木邑人 千葉
515号 23 誠実なあなたの吃音蝶が来る 夏谷胡桃 岩手
515号 24 文盲の祖母なり蛇と語るなり 西又利子 福井
515号 25 初燕いくつ刹那を抱いて来し 丹生千賀 秋田
515号 26 掌にたまる囀り貌洗ふ 野崎憲子 香川
515号 27 骨の音とも違う空缶潰して春 野田信章 熊本
515号 28 累卵のしづけさ初秋のフクシマ 疋田恵美子 宮崎
515号 29 春は遅々紙で切りたる傷のように 藤野 武 東京
515号 30 墜ちゆく星被曝の牛に草青む 船越みよ 秋田
515号 31 白つばき自主避難という翳りかな 本田ひとみ 埼玉
515号 32 人間は人間を産み花は葉に マブソン青眼 長野
515号 33 青葉木菟母の匂いの樹を探す 武藤暁美 秋田
515号 34 子規に律松蔭に文破れ傘 森  鈴 埼玉
515号 35 母の日や戦中戦後耐え賜う 安井昌子 東京
515号 36 楽しくて今日もこの世の青き踏む 山田哲夫 愛知
515号 37 夏おちば激昂これを限りとしょ 柚木紀子 長野
515号 38 あとがきのよう白藤のまぶしくて 横地かをる 愛知
515号 39 古詩おそろし茄子に水やる少年僧 横山 隆 長崎

516号 1 テロ寒き鶏肉に頭が付いていない 有村王志 大分
516号 2 白桃剥く一気に官能高まる夜 伊藤 和 東京
516号 3 どこか夏鳥旅の途中の昏さあり 伊藤淳子 東京
516号 4 にこにこと春のお日様はげ頭 内野 修 埼玉
516号 5 踵に波の記憶や遠花火 榎本愛子 山梨
516号 6 少し酔えばうりずんと呼ぶ馬を抱く 大西健二 三重
516号 7 素足ですし羊歯類の王ですわたし 小川楓子 神奈川
516号 8 右乳は地に埋められし土偶麦秋 川崎千鶴子 広島
516号 9 麦の秋君が袖振るひかりかな 川原珠美 神奈川
516号 10 九年母の花三方は海そして坂 北上正枝 埼玉
516号 11 花桐や頬杖ついて母の部屋 北村美都子 新潟
516号 12 椋鳥と言われ一茶は江戸に来た 木村和彦 神奈川
516号 13 修司忌につながる饒舌和紙人形 京武久美 宮城
516号 14 畦塗り終え父ガビガビの土偶なる 黒岡洋子 東京
516号 15 泉光ってたくさんのてのひらに こしのゆみこ 東京
516号 16 かつてみなかなしき貌の夏野かな 小西瞬夏 岡山
516号 17 梅を干す百年そこに居るように 小山やす子 徳島
516号 18 芒種なり午前3時の電話鳴る 笹岡素子 北海道
516号 19 新樹に雨あるがままなる土着なる 佐々木香代子 秋田
516号 20 木下闇置き薬のよう黒猫 柴田美代子 埼玉
516号 21 傷癒えし土蜂の如く生きてゆく 鈴木幸江 滋賀
516号 22 蛍舞う点滅しては無限大 瀬川泰之 長崎
516号 23 ほととぎす夜のとばりがわが肉に 関田誓炎 埼玉
516号 24 みちのくの沈みきれない紙の雛 高木一惠 千葉
516号 25 音のない時計ばかりや閑古鳥 高橋明江 埼玉
516号 26 絹莢のすじ引くように叔母消えて 遠山郁好 東京
516号 27 春隣りいつか鰐だった鞄 中内亮玄 福井
516号 28 郭公や森のはずれの茫として 中原 梓 埼玉
516号 29 フクシマよいくたび戻りくる蠅よ 中村 晋 福島
516号 30 吊し雛水光の暮らしのまん中に 野田信章 熊本
516号 31 蝶といて何かが足りない手のひら 橋本和子 長崎
516号 32 銃の無きふつうの生活つばめ来る 平山圭子 岐阜
516号 33 草萌えに杖つくわたし くやしかあ 廣島美恵子 兵庫
516号 34 黒南風の島よ戦う国となるのか 藤田敦子 愛媛
516号 35 激し美し哀し花火や夏の病院 藤野 武 東京
516号 36 祖父つまりあの焦げ方は麦秋です 三浦二三子 愛知
516号 37 蚊を見ているそうですえと溜息す 三井絹枝 東京
516号 38 森よりもしずかな言葉夏に入る 守谷茂泰 東京
516号 39 レース着て佛心かろし武州の旅 若森京子 兵庫

517号 1 茄子の馬南溟の兄乗せて来る 伊藤 巌 東京
517号 2 連翹の黄に起こされる八十路かな 伊藤雅彦 東京
517号 3 早まって水鉄砲に顔向ける 井上広美 東京
517号 4 いい日旅立ち路上に乾く蚯蚓どち 上田久雄 石川
517号 5 麦の秋百合子の播州平野かな 内田利之 兵庫
517号 6 被爆土へ浸みこむように水を打つ 江良 修 長崎
517号 7 照葉樹林何も言わないことが罪 門屋和子 愛媛
517号 8 出かける君に金魚ほどの口づけ 川崎千鶴子 広島
517号 9 木下闇嗅ぐや私というくらがり 小池弘子 富山
517号 10 夏つばめ腰痛の父頭痛の母 児玉悦子 神奈川
517号 11 突きあげた拳で胡瓜刻みます 小林寿美子 滋賀
517号 12 柵か絆か紫陽花にうるさい雨 小林まさる 群馬
517号 13 掌のインコ30グラムや名古屋場所 近藤守男 東京
517号 14 オホーツクの短き夏や君がいた 坂本久刀 兵庫
517号 15 夏期講習誰からとなく比べる手 佐藤二千六 秋田
517号 16 あじさい群落低温やけどの心地して 柴田美代子 埼玉
517号 17 汝が耳に我が名は棲むや青嵐 鈴木修一 秋田
517号 18 傘寿なりこれから葡萄甘くなる 鈴木 誠 愛知
517号 19 蓮の花存在にまず水がある 高桑婦美子 千葉
517号 20 栄螺売り光の舌の五能線 舘岡誠二 秋田
517号 21 考える遅さが青菜と照りあって 谷 佳紀 神奈川
517号 22 石を積むこと息をすること涼し 月野ぽぽな アメリカ
517号 23 長梅雨や絶壁のような無力感 峠谷清広 東京
517号 24 蜂一匹山ふるわせる下山かな 中原 梓 埼玉
517号 25 フクシマにひばり誰にでも尊厳 中村 晋 福島
517号 26 雲は詩を泉は玉を描くかな 野崎憲子 香川
517号 27 はっと夏女体のごとく倒木よ 疋田恵美子 宮崎
517号 28 蜂の羽音メコンデルタに米搗く娘 日高 玲 東京
517号 29 鬱の子と青桐の声聴きにゆく 堀之内長一 埼玉
517号 30 羽蟻飛ぶ夕べ戦の匂いあり 本田ひとみ 埼玉
517号 31 ばら提げて独裁国家通りけり マブソン青眼 長野
517号 32 長い話に青田途切れてしまったよ 丸木美津子 愛媛
517号 33 なびく髪は人間の旗はたた神 三木冬子 東京
517号 34 晩成を期する晩年夜の蝉 武藤鉦二 秋田
517号 35 夏木立やがて言葉は鈍化する 村上友子 東京
517号 36 金雀枝黄色老い母の丈夫な歯 森  鈴 埼玉
517号 37 茅の輪くぐるはわが名緑に触れそめし 森央ミモザ 長野
517号 38 生まれ来て得る引力や夕つばめ 守谷茂泰 東京
517号 39 蛍火は太初の青さ生命線 若森京子 兵庫

518号 1 神宿る島に掬ひぬ天の川 伊佐利子 福岡
518号 2 汗引くまで原爆ドーム眺めをり 石川まゆみ 広島
518号 3 非正規のままの定年田螺食ぶ 伊藤雅彦 東京
518号 4 息切れを孤独と思うねじり花 稲田豊子 福井
518号 5 和御霊ががんぼのつるみおるなり 榎本祐子 兵庫
518号 6 風船かずら毎日掃除機かける家 加地英子 愛媛
518号 7 八人を産み給う母草の綿 川村三千夫 秋田
518号 8 みずうみに空仰ぐ水八月来 北村美都子 新潟
518号 9 青葉茂つてゐる点滴の二時間 木下よう子 神奈川
518号 10 敗戦忌飢餓戦死者と玉砕と 久保筑峯 千葉
518号 11 ワンピースの方が妹足長蜂 黒岡洋子 東京
518号 12 蝶高く我よりずっと遠い旅 河野志保 奈良
518号 13 大花火鍵のかかった天空に こしのゆみこ 東京
518号 14 火蛾落ちて折り重なれるからだかな 小西瞬夏 岡山
518号 15 空蝉や嘆けば透ける鎖骨かな 近藤亜沙美 愛媛
518号 16 炎昼の道なり僕のうなじなり 佐孝石画 福井
518号 17 直立の向日葵僕らは武器をもち 白石司子 愛媛
518号 18 一万人アベといい捨つ炎帝も 末岡 睦 北海道
518号 19 沢ありて蝸牛の微光菩薩かな 関田誓炎 埼玉
518号 20 特攻悲話に酔うてはすまぬ敗戦忌 高木一惠 千葉
518号 21 息止めて茅の輪に通す脳の翳 竹内一犀 静岡
518号 22 ずいと奥までペンキ屋が来る晩夏 武田美代 栃木
518号 23 兄は炎暑の木陰のようだった死す 谷 佳紀 神奈川
518号 24 浴衣の衿ぬけば疎遠のはらからや 津波古江津 神奈川
518号 25 詫び立ちはおほかた三人浮いてこい 長尾向季 滋賀
518号 26 肝試しどこの村にも村はずれ 並木邑人 千葉
518号 27 もしかしてしゃがみっぱなしの夜の蛙 根岸暁子 群馬
518号 28 夕蜩思いは生絹のごとし遠し 藤野 武 東京
518号 29 寸土尊し神社のわきに豆二列 藤盛和子 秋田
518号 30 夜涼かなぐるりと音がして身体 藤原美恵子 岡山
518号 31 桃かじる鬱とも痴呆とも違う 本田ひとみ 埼玉
518号 32 虹かかるやっぱ横浜西口じゃん 三木冬子 東京
518号 33 死者若し眼裏に海の色を容れ 水野真由美 群馬
518号 34 二、三ページ蜻蛉の書いたノートです 三井絹枝 東京
518号 35 今朝の茄子皆つつがなくメタボなり 三好つや子 大阪
518号 36 木に縋り乾ぶ国家と空蝉と 守谷茂泰 東京
518号 37 じきですね そろそろだなあ夏落葉 諸 寿子 東京
518号 38 蠅をらぬ爆心蝿取紙垂れる 柳生正名 東京
518号 39 わが家を掴み空蝉退屈す 横地かをる 愛媛

表紙へ戻る

inserted by FC2 system