金子兜太選 海程秀句」鑑賞 
2014年目次

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各号ごとに観賞した順番は〈あいうえお〉順となっています

作者名
地域 
499号 1 門火焚く膝つくわれの齢かな 新井娃子 埼玉
499号 2 月白や鏡のわれを訝しむ 伊藤 歩 北海道
499号 3 秋桜ラッパ鳴らして柩行く 梅川寧江 石川
499号 4 名月を戴きこの家肉食す 榎本祐子 兵庫
499号 5 燕帰る小さき傷みを匿して童よ 大上恒子 神奈川
499号 6 水面つつくトンボの青さ私に老い 柏原喜久恵 熊本
499号 7 隠し事あれば饒舌とろろ汁 加藤昭子 秋田
499号 8 放射能まみれの飽食蓮は実に 金子斐子 埼玉
499号 9 わたくし山羊でありましたのに椅子の脚 加納百合子 奈良
499号 10 啄木鳥や旅の男に小銭増ゆ 木下よう子 神奈川
499号 11 猪喰う家族底ぬけに愉快なり 小池弘子 富山
499号 12 蝙蝠葛頭にからまりし異郷かな 児玉悦子 神奈川
499号 13 秋服の釦冷たし別れを言ふ 小西瞬夏 岡山
499号 14 大寺の奥より新秋やってきた 坂本春子 神奈川
499号 15 泥川が澄んで壊れた墓映す 佐々木昇一 秋田
499号 16 曼珠沙華発条のごとくに反抗期 佐藤紀生子 栃木
499号 17 村芝居斬られた順の腹拵え 佐藤二千六 秋田
499号 18 夏の星犬の寝床を焼いている 佐藤美紀江 千葉
499号 19 コンビニの上にペガサス弁当買う 重松敬子 兵庫
499号 20 校訓やらホルマリン漬やら秋暑し 白石司子 愛媛
499号 21 夜を覗けばじつにあけすけ蟋蟀鳴く 関田誓炎 埼玉
499号 22 遠花火母には別のパスワード 高木一惠 千葉
499号 23 秋の薔薇くづるるごとく稿重ね 田中亜美 神奈川
499号 24 桐一葉人とは美しき病 月野ぽぽな アメリカ
499号 25 長き夜や息子はますます謎になる 峠谷清弘 東京
499号 26 流星や被曝者被爆者と握手 中村 晋 福島
499号 27 口開くは酷暑の鳥葬後のわれ 野田信章 熊本
499号 28 多勢の肉焼けており海桐の実 野原瑤子 神奈川
499号 29 オクラねばねばおとこは始末の悪い獣 橋本和子 長崎
499号 30 むしかりの白き花群月を掃き 疋田恵美子 宮崎
499号 31 草ひばり遊牧の娘の乳硬く 日高 玲 東京
499号 32 流灯よ土には浅く浸み入る雨 藤野 武 東京
499号 33 帰省子の凭れてゆきし柱かな 前田典子 三重
499号 34 折れやすいからだや芙蓉廻ってます 三井絹枝 東京
499号 35 逝くまでの風筋太き青田かな 武藤鉦二 秋田
499号 36 啄木鳥や三度三度の飯作り 森 鈴 埼玉
499号 37 いなびかり男子を軽々背負投げ 諸 寿子 東京
499号 38 九月尽ねずみの通る部屋に夫 らふ亜沙弥 神奈川
499号 39 野葡萄や内耳に軍靴のひびきあり 若森京子 兵庫

500号 1 木の実降る敗者の歴史読みつぐ夜 石川義倫 静岡
500号 2 訳もなくぶつかり歩くわが晩秋 石川青狼 北海道
500号 3 紅葉狩り攻撃的な猿に遭う 伊東明夫 神奈川
500号 4 黄落や逆光に鋭き人の声 伊藤 巌 東京
500号 5 夜更かしに紙の音して鼬の気配 伊藤淳子 東京
500号 6 原発のそば圧倒的な舟虫よ 稲葉千尋 三重
500号 7 村芝居歩くところを走ってる 大口元通 愛知
500号 8 鶏頭の種を熊野にこぼしおり 大西健司 三重
500号 9 家にあらば雪掻く刻や旅の膳 大原 春 秋田
500号 10 若冲をあつく語りて夜長かな 岡田弘子 愛知
500号 11 詩を捨てて生きるか夜の曼珠沙華 尾形ゆきお 千葉
500号 12 衣被一方的に何か言う 小沢説子 神奈川
500号 13 小鳥来るうっとり浮いて浮御堂 門脇章子 大阪
500号 14 古里の白萩のよう鼻濁音 狩野康子 宮城
500号 15 カフェテラス小鳥の声に小鳥来る 刈田光児 新潟
500号 16 もの忘れ以て木の葉の夥し 北村美都子 新潟
500号 17 蕎麦すする案山子みたいな気分屋と 京武久美 宮城
500号 18 河西回廊梨売りの祖の素朴な目 黒岡洋子 東京
500号 19 パンプキンパイ異形の娘が待っている 笹岡素子 北海道
500号 20 全略と誤記してよりの虫しぐれ 柴田美代子 埼玉
500号 21 塩むすび包む原発新聞紙 清水茉紀 福島
500号 22 陰なしの人形あそぶ菊の中 白井重之 富山
500号 23 秋暑し国家民草花林糖 高桑婦美子 千葉
500号 24 我らかつて森にゐたりと雄鹿鳴く 田中亜美 神奈川
500号 25 ふたりにかえるしずくのようつがいかな 田中昌子 京都
500号 26 まだかたちなどなく朝の水澄めり 遠山郁好 東京
500号 27 うそ寒や自動販売機礼を言ふ 長尾向季 滋賀
500号 28 月追って時々俳句ずっと酒 中村道子 静岡
500号 29 目覚めては働くこがらしの風下で 中村裕子 秋田
500号 30  追悼 兼近久子様に
永遠に大正区は華 満月や
廣嶋美恵子 兵庫
500号 31 紅葉かつ散る草食獣のかたわらに 堀之内長一 埼玉
500号 32 思慮の父献身の母蚯蚓鳴く 本間 道 新潟
500号 33 秋耕の側を徐行し霊柩車 松本ヒサ子 愛媛
500号 34 ずうっと紅葉ずうっと黄葉の浮遊かな 汀 圭子 熊本
500号 35 本音とは昏き水なり石蕗の花 茂里美絵 埼玉
500号 36 白蓮やときどき邪魔な自尊心 森由美子 埼玉
500号 37 ご陵の辺耳目消すよう芋茎刈る 矢野千代子 兵庫
500号 38 噴水の悲しい先端車椅子 輿儀つとむ 沖縄
500号 39 用もなく立ち寄る茸鑑定所 横地かをる 愛知

501号 1 八十歳をひらひら醸し年用意 安藤和子 愛媛
501号 2 冬眠の蛇に地鳴りの届く夜ぞ 飯土井志乃 滋賀
501号 3 うたた寝の奥忘忘と島梟 石川青狼 北海道
501号 4 湾奥に住み古り黒酢仕込みをり 今福和子 鹿児島
501号 5 ピアノの稽古柿も雀も無尽蔵 河原珠美 神奈川
501号 6 毛糸玉ほろん夜咄ほろんほろん 北村美都子 新潟
501号 7 雁落ちゆくよ母のひそかなあきらめ 黒岡洋子 東京
501号 8 猪鍋囲むそれぞれ帰る闇のあり 小池弘子 富山
501号 9 花びらのいくつかは白結氷期 こしのゆみこ 東京
501号 10 妻の話年年民話のようにかな 今野修三 東京
501号 11 灯さねば墜ちそうな村雁渡る 佐藤二千六 秋田
501号 12 真実とは薄暗がりや秋の灯や 篠田悦子 埼玉
501号 13 夜更しは耳澄ますこと木の葉髪 芹沢愛子 東京
501号 14 雪の鹿調律のよう野を渡る 十河宣洋 北海道
501号 15 隙間風塞ぎきったる淋しさよ 高木一惠 千葉
501号 16 祖父は裸木散策のたびすれ違う たかはししずみ 愛媛
501号 17 短日の魚の影美し迷いあり 田口満代子 千葉
501号 18 とべないかもめ口紅赤い寡婦もいや 田中昌子 京都
501号 19 まだ若い冬将軍だなまっすぐ来る 月野ぽぽな アメリカ
501号 20 雪茫々長城内外天人合一 董 振華 中国
501号 21 空見てはポーと言う嬰に冬が来る 遠山郁好 東京
501号 22 秋の風清潔すぎる翅音だなあ 永井 幸 福井
501号 23 猫逝きて誰もやぶかぬ障子張る 中島伊都 栃木
501号 24 昔確かに母さん言ったよ虫すだく 中島まゆみ 埼玉
501号 25 フクシマや冬蠅光らせて逃がす 中村 晋 福島
501号 26 白障子たまの独り寝諾えり 中村孝史 宮城
501号 27 闇討のように鹿鳴く峠道 中村真知子 三重
501号 28 木守柿になりたい人は登りなさい 並木邑人 千葉
501号 29 日々いとしアイソン彗星くだけ散る 平野八重子 愛媛
501号 30 父母は昼を瞑り白ふくろう 古舘泰子 東京
501号 31 見舞ふべき人あり新藁匂ひくる 前田典子 三重
501号 32 ブーゲンビリア父の言葉が百咲いて 舛田 長崎
501号 33 湯の中の乳房はかなし三冬月 三井絹枝 東京
501号 34 鰤大根婆鼻歌の反戦歌 村上 豪 三重
501号 35 ふっと草枯れの感覚パン焦げる 森内定子 福井
501号 36 貧乏神も煤けて囲炉裏火を守る 安井昌子 東京
501号 37 寄鍋や我が足軍靴履きし日も 山本光胤 大阪
501号 38 落葉降らすベンチと僕は無関係 横山 隆 長崎
501号 39 手も足も饒舌になる老父の菊 吉村伊紅美 岐阜

502号 1 鳥総松松原遠くなりました 相原澄江 愛媛
502号 2 ロボットアームのごとき腕の蓮根掘り 安藤和子 愛媛
502号 3 歯脱けの君禿頭の吾薬喰 石川青狼 北海道
502号 4 もの言わぬ民に育てる十二月 磯田政八 群馬
502号 5 牡蠣フライ陸に浮寝の身の昏し 市原光子 徳島
502号 6 ぶつ切りの章魚親友の喪の葉書 伊藤 巌 東京
502号 7 立春大吉カフカという猫出奔す 糸山由紀子 長崎
502号 8 寒雷や違う言葉で問いつめる 上原祥子 山口
502号 9 空家じゃない私がいないだけの冬 大沢輝一 石川
502号 10 仲直り白菜甘しと言いながら 小川久美子 群馬
502号 11 終い湯の柚子の弾力これ乳房 川崎千鶴子 広島
502号 12 あの人にかぎってという白障子 河西志帆 長野
502号 13 鵯よ先週足の小指の骨にヒビ 木下ようこ 神奈川
502号 14 津軽弁ノートにはずむ二月まぶし 京武久美 宮城
502号 15 触れて知るわれに臍ある冬籠り 河野志保 奈良
502号 16 被爆の水仙浮いてるように母 清水茉紀 福島
502号 17 冬沼の鼓動へ止まる万歩計 鈴木修一 秋田
502号 18 日も月も其れ其れ一つ大旦 鈴木孝信 埼玉
502号 19 胡桃割りし石もて父の柩打つ 鈴木八駛郎 北海道
502号 20 美しい卵が二つ冬の家 高木一惠 千葉
502号 21 美談いつまで枯野の荼毘に間に合わぬ 高桑婦美子 千葉
502号 22 淀みなく産み次々牡蠣を揚げている たかはししずみ 愛媛
502号 23 偶然は畏敬に通ず帰り花 高橋明江 埼玉
502号 24 めつむりて象を画きし黄落期 田口満代子 千葉
502号 25 坐禅してすぐに居眠り日向ぼこ 峠谷清広 東京
502号 26 わが死後はあの綿虫の中ならむ 長尾向季 滋賀
502号 27 冬耕やコトバはココロに追いつけぬ 並木邑人 千葉
502号 28 春障子揺れる肉体建てかけて 根岸暁子 群馬
502号 29 紅葉谷雑多に老いしわれら映え 野田信章 熊本
502号 30 木いちごの斜面を削り除染という 本田ひとみ 埼玉
502号 31 狐振り向き別のわたしを見つめおり 前田典子 三重
502号 32 返り花肩に力を入れる癖 松本悦子 東京
502号 33 羽音よりさみしげにいる嫁が君 三井絹枝 東京
502号 34 女系家族白菜みたいな足並ぶ 室田洋子 群馬
502号 35 弱きになればこんな落葉に蹴つまずく 山内崇弘 愛媛
502号 36 春田打つ俺も死にゆく一人かな 山口 伸 愛知
502号 37 一念を通し裸木のごとく立つ 山田哲夫 愛知
502号 38 黙座の父くろがねもちの実が赤い 横地かをる 愛知
502号 39 枝豆を真ん中に置き抱きしめる 和田幸司 愛媛

503号 1 熊撃ちの暮れて営むレストラン 五十嵐好子 東京
503号 2 手術痕自慢の二月礼者かな 石川義倫 静岡
503号 3 凍てている地の水たまりたなごころ 伊藤淳子 東京
503号 4 ちらちらと雪ちらちらと雪にひと 内野 修 埼玉
503号 5 ふるえているこころ白ふくろうに寂 榎本祐子 兵庫
503号 6 遠く近く昭和の残響多喜二の忌 岡崎万寿 東京
503号 7 叔父よ慟哭く雪崩の下の葡萄畑 小川久美子 群馬
503号 8 古稀という明日は紅鮭ほどの艶 狩野康子 宮城
503号 9 熟柿落ちるような納得だってある 柄沢あいこ 神奈川
503号 10 無垢という欲望残る枯木立 川崎益太郎 広島
503号 11 潮騒の被曝の荒地野襤褸菊に陽 黒岡洋子 東京
503号 12 早春やこのぶっきらぼうな雑木山 小池弘子 富山
503号 13 歯固めや卒寿の姉の早耳に 小原恵子 埼玉
503号 14 頬杖のがくっと外れる雨水かな 佐藤二千六 秋田
503号 15 どこからが晩年どこまでが薄氷 白石司子 愛媛
503号 16 春の土母死にたくて生きたくて 菅原和子 東京
503号 17 町川の白鳥を指す帰郷かな 鈴木修一 秋田
503号 18 汚れやすくて春の雪など少年など 芹沢愛子 東京
503号 19 鹿狐熊も見つむうしかい座 十河宣洋 北海道
503号 20 少年に雛のうす闇はずかしき 高木一惠 千葉
503号 22 裸木に深き傷痕叙事詩とも 竹田昭江 東京
503号 23 閑かさや鼠走らぬ雪の夜 竪阿彌放心 秋田
503号 24 天涯の父母へのぬくみどんどの火 舘岡誠二 秋田
503号 25 きれいなあなた腹の底から雪を話す 谷 佳紀 神奈川
503号 26 湯ざめして身ぬちの星座あきらかに 月野ぽぽな アメリカ
503号 27 熱燗や同時に愚痴言う男達 峠谷清弘 東京
503号 28 大笑いのごとくに鮟鱇の口残る 中嶋伊都 栃木
503号 29 悠久や河蛇のごとく蛇河のごとく 中山蒼風 富山
503号 30 暁闇の草の根の音睦月かな 野崎憲子 香川
503号 31 ごろすけほう冬霧に秘密保護法が 長谷川順子 埼玉
503号 32 梅林に毅然とあかるい割烹着 廣島美恵子 兵庫
503号 33 竜の玉ペン貸すように武器供与 堀之内長一 埼玉
503号 34 彼岸寺ほそほそ一人言の咲く 三井絹枝 東京
503号 35 寒月光来ぬ人の椅子たためない 武藤暁美 秋田
503号 36 氷柱にも念力津軽あいや節 武藤鉦二 秋田
503号 37 兄老いぬ漁の始めの褌新た 森 鈴 埼玉
503号 38 介添えの黒衣が守る里歌舞伎 山田哲夫 愛知
503号 39 起ちあがる文章をこそ春北斗 柚木紀子 長野

504号 1 花ごろも臀部犇く緋毛氈 飯土井志乃 滋賀
504号 2 漣は誰のあとがき鳥雲に 伊藤淳子 東京
504号 3 少年は透明な矛盾梨の花 伊藤雅彦 東京
504号 4 鳥雲に被爆者が飼う被曝牛 稲葉千尋 三重
504号 5 赤ちゃんが桜吹雪を掻き交ぜる 内田利之 兵庫
504号 6 還暦や土筆ぎくしゃく煮殺して 榎本祐子 兵庫
504号 7 かたちなき言葉の武器や霾ぐもり 加藤昭子 秋田
504号 8 牡蠣を剥く祈りつくせぬことを詫び 狩野康子 宮城
504号 9 弥陀の在す山がすごそこ桜の芽 北村美都子 新潟
504号 10 お遍路に旭ものすごい色気やな 久保智恵 兵庫
504号 11 暗闇はどうなっている猫の恋 河野志保 奈良
504号 12 ロボットに負けましたから陽炎 小林寿美子 滋賀
504号 13 献体の許しを請えば姉が泣く 今野修三 東京
504号 14 輪郭はクナシリ桜もち草もち 佐々木宏 北海道
504号 15 母という難儀なるもの柏餅 重松敬子 兵庫
504号 16 おもいとは違う声出て桜狩 柴田美代子 埼玉
504号 17 愛しの癌や黒葡萄の渦である 鈴木 誠 愛知
504号 18 豬の夜を冬沢赤らみてなまめきて 関田誓炎 埼玉
504号 19 尻向けた春駒を描き浮世絵師 芹沢愛子 東京
504号 20 昔々兄二人いてねぶか汁 高尾久子 富山
504号 21 春眠に少しまじりて死の匂い 高桑婦美子 千葉
504号 22 風船の紐ふたしかに夜の桜 田中亜美 神奈川
504号 23 喪を灯すようです水芭蕉ひらく 月野ぽぽな アメリカ
504号 24 余震また弟切草を踏むなかれ 長尾向季 滋賀
504号 25 白鳥帰る国境あたりで糞をして 夏谷胡桃 岩手
504号 26 残雪や黒髪の根の焦げ臭き 野崎憲子 香川
504号 27 満作けぶる傾山のヘリポート 疋田恵美子 宮崎
504号 28 青水無月銅鏡の紐滅びたり 日高 玲 東京
504号 29 白鳥の話聞こえる望遠鏡 平塚波星 秋田
504号 30 木枯しに慣れず一樹のなほ戦ぐ 前田典子 三重
504号 31 三月や岩礁のごと劣等感 三浦静佳 秋田
504号 32 眼鏡外すは喧嘩の作法根深汁 水野真由美 群馬
504号 33 弔いの灯のつながりぬ雪消虫 武藤鉦二 秋田
504号 34 地虫出づ土に○書く遊びかな 森  鈴 埼玉
504号 35 黄砂降る地上に曖昧な怒り 森央ミモザ 長野
504号 36 春土は涙を埋めてしずかなり 守谷茂泰 東京
504号 37 春寒し鳥のかたちに星繋ぎ 柳生正名 東京
504号 38 屋上ですずめが先に死んでゐた 横山 隆 長崎
504号 39  追悼 八木三日女
椿の首ゆるめてあげよう三日女逝く
若森京子 兵庫

505号 1 一句一章トンボ鉛筆どれもB 相原澄江 愛媛
505号 2 枇杷剥いて言葉の行間ほどくかな 油本麻容子 石川
505号 3 深山霧島吾に億劫の虫ひそみ 阿保恭子 東京
505号 4 遠く見るためのしんがり長崎忌 有村王志 大分
505号 5 あかしや白花わが頬杖に倚りかかる 伊藤淳子 東京
505号 6 人は去り旧谷中村鷹は飛ぶ 内野 修 埼玉
505号 7 朝顔や形状記憶の怒り肩 榎本愛子 山梨
505号 8 今という迷宮があり利久梅 大高宏充 東京
505号 9 ほうたるほー水は低きへ平俗へ 金子斐子 埼玉
505号 10 手押し車で移されてゆくオットセイ 菊川貞夫 静岡
505号 11 山芽吹く人は掌を擦る鼻こする 北上正枝 埼玉
505号 12 陽炎にこわされどおしの擬音語 京武久美 宮城
505号 13 閉じぬ眼に和紙の目隠し雛納 金並れい子 愛媛
505号 14 桜花爛漫死ぬときの顔想っている 小池弘子 富山
505号 15 聚落は横坐りのよう梅咲いて 児玉悦子 神奈川
505号 16 昼寝覚め東北の地図開きしまま 坂本みどり 埼玉
505号 17 揚羽来る日常かなり直感的 白石司子 愛媛
505号 18 わがふぐり洗いし川で馬冷やす 鈴木八駛郎 北海道
505号 19 逃げ水追い母の放浪始まりぬ 瀬古多永 三重
505号 20 惰眠とも薪のにおいの朧とも 田口満代子 千葉
505号 21 桜散る散る原発は麻薬である 田村勝実 新潟
505号 22 恋猫の声と星座と混み合うよ 月野ぽぽな アメリカ
505号 23 蝌蚪に足伊勢神木に抱きつくよ 長谷川順子 埼玉
505号 24 百足虫梁にたましいもまた老いたるか 藤野 武 東京
505号 25 母笑うどこか網戸の穴のごと 藤原美恵子 岡山
505号 26 亀鳴くやわが代にて墓閉ざすこと 前田典子 三重
505号 27 子雀に少し遅れる母の起き伏し 松本勇二 愛媛
505号 28 青あらしハブ酒にハブのくるくると 三浦静佳 秋田
505号 29 葱坊主島の娘は横向きに 水上啓治 福井
505号 30 石鹸に春のくぼみや一人暮らし 宮崎斗士 東京
505号 31 麦藁を叩けば爺の湧いて出る 宮川としを 東京
505号 32 鬼になれる器でもなし夕ざくら 武藤鉦二 秋田
505号 33 どの道を来てこの真青なる蝶よ 村上友子 東京
505号 34 夏蝶描くそっと真昼を見詰めつつ 森央ミモザ 長野
505号 35 身に覚えある天罰や春の風邪 諸 寿子 東京
505号 36 秘密基地子の汗しみしダンボール 安井昌子 東京
505号 37 窯出しはちょっと前なりこの青嶺 矢野千代子 兵庫
505号 38 星座つくるみたいにすみれの種を蒔く 吉川真実 東京
505号 39 覚束な天のまろさも罌栗畑も 柚木紀子 長野

506号 1 郭公をいつも探していた母よ 阿木よう子 富山
506号 2 見えぬ海と見える放棄田春落日 有村王志 大分
506号 3 十薬の花励ましの形なり 石川和子 栃木
506号 4 遠流のごと去りしふくしま夏あざみ 稲葉千尋 三重
506号 5 胸の辺にありて揚羽の水飲み場 榎本祐子 兵庫
506号 6 寄り添いぬその生真面目にあじさいに 加古和子 東京
506号 7 黙っていれば花いちもんめあげる 河西志帆 長野
506号 8 いつだって直球ばかり翡翠は 木村和彦 神奈川
506号 9 鰹群来ふいとみつかる米穀通帳 木村清子 埼玉
506号 10 鳩は樹へ夕日は胸へ春たのしむ 京武久美 宮城
506号 11 柏餅アンニュイなんて贅沢です 久保智恵 兵庫
506号 12 ひきがえる私の視線感じるか 河野志保 奈良
506号 13 夏つばめ村人軽口たたくよう 児玉悦子 神奈川
506号 14 豪雨一と夜詠み人知らずとありし 小林一枝 東京
506号 15 瑰や遠くのことに人はやさしい 近藤守男 東京
506号 16 かわせみの青き軌跡よ君在りし 佐々木香代子 秋田
506号 17 被曝の河キューピー人形すっ裸 清水茉紀 福島
506号 18 蛍追う深きところに母の闇 白石司子 愛媛
506号 19 陽炎や折れぬため揺れ人も木も 芹沢愛子 東京
506号 20 啓蟄や川から畑へ水運ぶ 高木一惠 千葉
506号 21 鳥影のさみしさノートは麦の秋 田口満代子 千葉
506号 22 清貧や水飯五杯かきこんで 竪阿彌放心 秋田
506号 23 夏つばめ一回きりの恐山 舘岡誠二 秋田
506号 24 老人券買って薄暮の浮世絵展 田浪富布 栃木
506号 25 緑の山は孫なりそして力瘤 谷 佳紀 神奈川
506号 26 ふらここふたつ一つは孫に一つは富士に 中嶋まゆみ 埼玉
506号 27 田を植える人よ夕日とフクシマ負い 中村 晋 福島
506号 28 遠耳の兄弟が寄り田を植える 中村道子 静岡
506号 29 初夏の母よ箪笥の鐶が鳴る 新田幸子 滋賀
506号 30 ヒロシマナガサキそしてフクシマ田水張る 野崎憲子 香川
506号 31 目の裏はすぐに脳みそ日照雨来る 松本勇二 愛媛
506号 32 蚕豆のひかりも死後のことなりぬ 水野真由美 群馬
506号 33 啓蟄のあはひに小雨降りしかな 三井絹枝 東京
506号 34 誰もが好きな木立ちがあって喜雨のなか 村上友子 東京
506号 35 子馬らの群れて羽音のすこしある 茂里美絵 埼玉
506号 36 肩に星夜汽車もわたしも夏の影 森央ミモザ 長野
506号 37 麦秋や明日へ書き足すこと少し 山田哲夫 愛知
506号 38 青水無月あおい空洞ですわたくしは 山本 掌 群馬
506号 39 更衣座敷わらしのべべ畳む 山谷草庵 青森

507号 1 ラ・フランスのいびつな個性戦意かな 安藤和子 愛媛
507号 2 防人の通ひ路潮騒青葉騒 伊佐利子 福岡
507号 3 酸素足るわが手わが足蚊の寄り来 石川まゆみ 広島
507号 4 鹿の子百合誰にも逢えぬ帰郷とや 伊藤 和 東京
507号 5 クレマチス妻を名前で呼ぶことはない 宇田蓋男 宮崎
507号 6 誕生日空蝉の鳴る小箱ある 榎本祐子 兵庫
507号 7 田を上がる父と蛙は扁平だ 大沢輝一 石川
507号 8 半迦思惟のころかなみょうが咲くまでは 大谷 清 山梨
507号 9 人間は裏切る海月裏返る 片岡秀樹 千葉
507号 10 八月や母は昭和を出たがらず 加藤昭子 秋田
507号 11 立夏の天どこか無念の高さかな 狩野康子 宮城
507号 12 蛇の衣はなれて見える家の中 河西志帆 長野
507号 13 遠雷の夜や複雑に歯をみがく 木下ようこ 神奈川
507号 14 付け馬のように薮蚊連れてくる 木村和彦 神奈川
507号 15 酢のごとき詩想に春がのっそりと 京武久美 宮城
507号 16 桑の実の熟すを以て喪明けとす 小池弘子 富山
507号 17 青葉木菟母をゆらしておりにけり こしのゆみこ 東京
507号 18 山法師足音を踏む山人たち 児玉悦子 神奈川
507号 19 打水のここより龍の背中かな 五島高資 栃木
507号 20 げんげ田の青大将が骨だった 今野修三 東京
507号 21 紫陽花や我も我もと直喩法 佐藤詠子 宮城
507号 22 逃げ水や母の放浪はじまりぬ 瀬古多水 三重
507号 23 太古より車座はあり鰹食ぶ 芹沢愛子 東京
507号 24 古りしわが五体百態ねむの花 高木一惠 千葉
507号 25 夏に入るおしめをはずす稽古して 竪阿彌放心 秋田
507号 26 雲海や我ら眼玉を持てあます 田中亜美 神奈川
507号 27 わたくしの闇と蛍の闇まざる 月野ぽぽな アメリカ
507号 28 君は未だ幼くてかなかなの仲間 遠山郁好 東京
507号 29 鰹群来孫らの未来おぼつかな 中嶋まゆみ 埼玉
507号 30 荒庭や蛇が横たう被曝の戸 中村 晋 福島
507号 31 魚籠に鯰祖父に歯のない口があり 堀之内長一 埼玉
507号 32 原爆忌傘をひらけば骨がある 前田典子 三重
507号 33 田草取る言語離れている軽さ 松本勇二 愛媛
507号 34 雷走る脳過るもの他になし 丸木美津子 愛媛
507号 35 幼な字や明日天の川渡りましょう 三井絹枝 東京
507号 36 あめんぼや旅ってさまざまな上空 宮崎斗士 東京
507号 37 五郎太寝の番屋首振り雛かな 武藤鉦二 秋田
507号 38 旅は一途な水の底にも夏燕 森央ミモザ 長野
507号 39 邪険かなささやきぐさを引っこ抜く 森岡佳子 東京

508号 1 逃げ水のどこにも逃げ場なき瓦礫 有村王志 大分
508号 2 捨て犬を連れてジューンブライドや 石川義倫 静岡
508号 3 夏橙その手ざわりの過去を言う 伊藤淳子 東京
508号 4 頬杖ながき無為の怖さの晩夏かな 伊東友子 東京
508号 5 語れぬ重さ背負い込む 大内冨美子 福島
508号 6 原爆忌影には骨が無いのです 大沢輝一 石川
508号 7 ずぶ濡れの姉が桑の実くれしかな 大西健司 三重
508号 8 屋根裏に蛇這う音の昭和かな 奥山津々子 三重
508号 9 雨立ち込めて昆虫展の奥に人 小野裕三 神奈川
508号 10 泡となる金魚のことば戦の匂い 狩野康子 宮城
508号 11 鬼百合やひとり欠伸は手を添えず 川崎千鶴子 広島
508号 12 大ぶりの蜘蛛の巣いい仕事してるなあ 佐々木香代子 秋田
508号 13 夏山に雨の襞なす無辺なり 佐藤紀生子 栃木
508号 14 球児泣く久しく泣くを忘れいし 末岡 睦 北海道
508号 15 平和な夢だ平和は夢だ鳴かぬ蝉 瀬川泰之 長崎
508号 16 三人姉妹に父よりそびえ冷蔵庫 芹沢愛子 東京
508号 17 星の寿命の最後は爆発合歓の花 高橋明江 埼玉
508号 18 鯵刺や素描のような旅をして 田口満代子 千葉
508号 19 にこにこのそはそはのねこじゃらしかな 武田美代 栃木
508号 20 竜神の潟辺に住んで盆踊り 舘岡誠二 秋田
508号 21 避暑家族鳥とも違う会話して 田中亜美 神奈川
508号 22 熱帯夜昔の私と怒鳴り合う 峠谷清弘 東京
508号 23 ががんぼは腕立て伏せして老いてゆく 永井 幸 福井
508号 24 土笛か鳥かけものか富士は初夏 中島まゆみ 埼玉
508号 25 被爆地に雨被爆地に雨とやませ 中村 晋 福島
508号 26 山二つ窓に賜る敗戦日 中村裕子 秋田
508号 27 白南風や裏木戸を開けて日輪 野崎憲子 香川
508号 28 夏うぐいす自己陶酔のありにけり 平山圭子 岐阜
508号 29 ナガサキ全滅の報耳にあり夏野 舛田 長崎
508号 30 死後少し残る聴力夕かなかな 松本勇二 愛媛
508号 31 原爆忌の雨原爆の河に落つ マブソン青眼 長野
508号 32 熱帯夜言葉出て行く歯の透き間 水上啓治 福井
508号 33 母の来て小鳥をつかむ仕草かな 水野真由美 群馬
508号 34 ぽーっと灯り一重瞼を閉じにけり 三井絹枝 東京
508号 35 草いきれ皮膚は牢のようでもあり 茂里美絵 埼玉
508号 36 猫が触れゆく静かな柱夏の家 森央ミモザ 長野
508号 37 撫でるごとトマト湯むきす子は遠し 森岡佳子 東京
508号 38 滝壷をやがて去る水青き真昼 山本 勲 北海道
508号 39 遠さかる漢のごとく八月も 柚木紀子 長野

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