金子兜太選 海程秀句」鑑賞 
2013年目次

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作者名
地域 
489号 1 わが影に翁入りくる秋暑かな 伊佐利子 福岡
489号 2 みみず鳴く不意のプロペラぎこちなき 石川和子 栃木
489号 3 赤とんぼ素足を洗う葬の家 一ノ瀬タカ子 東京
489号 4 青田の鷺染め抜かれたる寂しさは 伊藤 和 東京
489号 5 灯下親し縄文土器に耳二つ 伊藤友子 埼玉
489号 6 備中鍬のわれは蟹股草ひばり 稲葉千尋 三重
489号 7 月明のセシウム光りおるならむ 大口元通 愛知
489号 8 ひかりごけのひかりは鹿に沁み入るかな 大谷 清 埼玉
489号 9 茄子の馬九人も乗って傾きぬ 大野美代子 愛媛
489号 10 われに秋草たっぷり遺し夫の忌 加地英子 愛媛
489号 11 津波怖しと児は月光に息を継ぐ 狩野康子 宮城
489号 12 鳥に空砲人に彷徨黒葡萄 刈田光児 新潟
489号 13 畏友呼べば風に耐えてる蛇の衣 小林まさる 群馬
489号 14 父いまも陛下の赤子彼岸花 小柳慶三郎 群馬
489号 15 寝姿は野武士なるこの糞爺い 佐々木昇一 秋田
489号 16 すっ裸の嬰セシウムの風はやまない 清水茉紀 福島
489号 17 残る月私という潦 白石司子 愛媛
489号 18 老人の鏡に雨の金木犀 関田誓炎 埼玉
489号 19 嘆きの壁伝うヤモリにカシオペア 田井淑江 東京
489号 20 へちま忌や筆談の文字正されて 高木一惠 千葉
489号 21 抜群の鳥の記憶や石蕗の花 田口満代子 千葉
489号 22 浪速津という陽炎の貨車溜まり 竹内羲聿 大阪
489号 23 円錐と円錐の影夏逝けり 田中亜美 神奈川
489号 24 日にいくたび陽は戦争の上とおる 月野ぽぽな アメリカ
489号 25 床前に明月もニコニコ二コと 董 振華 中国
489号 26 フルーツポンチにびわの実ありし亡夫
とありし
中島まゆみ 埼玉
489号 27 新米を一合研いで海鳴りや 丹生千賀 秋田
489号 28 佐渡浮かぶ海は素風の器だな 長谷川育子 新潟
489号 29 クラシックホテルの馬丁晩夏光 日高 玲 東京
489号 30 蝮蛇草に朱い実父にのどぼとけ 藤原美恵子 岡山
489号 31 海境ははるかなるもの良夜かな 堀之内長一 埼玉
489号 32  小堀葵氏を悼む
立待ちの葵の月の嗚咽かな
本田日出登 群馬
489号 33 秋立つと萬金丹をこぼしけり 前田典子 三重
489号 34 かみなり落ちた旅した山に園の木に 間島貞子 大阪
489号 35 親族は寄って酔うもの谷紅葉 水上啓治 福井
489号 36 蠍座や今宵わが髪乱れます 森 美樹 千葉
489号 37 旅という静かなうしろ鹿のうしろ 森央ミモザ 長野
489号 38 杉菜抜いても確かに空地父の家 山本 勲 北海道
489号 39 うしろより男声「ようそろ」冬近し 柚木紀子 長野

490号 1 鬼くさし銀杏掃き寄す日課かな 阿久沢達子 群馬
490号 2 浴室の紅葉は造花癌病棟 足利屋 篤 群馬
490号 3 行き場なき漂流家族秋出水 石川青狼 北海道
490号 4 絶筆の推敲のあと霜雫 石川まゆみ 広島
490号 5 分去れや捨てきれぬもの紅葉す 市川正直 東京
490号 6 とんぼ飛ぶ音なくてこの日常感 伊藤淳子 東京
490号 7 人体は冬の装置のごと清し 岡崎正宏 埼玉
490号 8 枇杷の花土舐めて土確かめる 奥山和子 三重
490号 9 豆を打つ冬眠の蛇起こさぬよう 小池弘子 富山
490号 10 ひたすらなるものに落日冬の水 児玉悦子 神奈川
490号 11 秋出水胡座会議が決裂す 佐々木昇一 秋田
490号 12 こころとは器なり飯包む葉っぱ 篠田悦子 埼玉
490号 13 秋の男象の皺みて小半日 柴田美代子 埼玉
490号 14 鼻から管紅葉が窓にぐにゃぐにゃ 十河宣洋 北海道
490号 15 柚子は黄に音沙汰は水影のよう 田口満代子 千葉
490号 16 車窓に星ぶつかりくるを潤といふ 武田美代 栃木
490号 17 カナリアとカナリアの籠寒林に 田中亜美 神奈川
490号 18 天高く落ちたくなった池がある 谷 佳紀 神奈川
490号 19 訛りしみじみそして秋刀魚の刺身かな 田村勝美 新潟
490号 20 舌に骨なくて紅葉山果てなし 田村行子 栃木
490号 21 銀漢はびしょ濡れのまま街の上 月野ぽぽな アメリカ
490号 22 冷え性の稗の種ですわたくしは 遠山郁好 東京
490号 23 蛇穴へさうして誰もゐなくなる 長尾向季 滋賀
490号 24 男体山も介護の仲間顔を見す 中島伊都 栃木
490号 25 待ちし子はとんぼがえりよ雨月なる 長野祐子 東京
490号 26 亡夫の髪なでたくて居る無月かな 中村道子 静岡
490号 27 寝物語に犀の生き死に無月なり 日高 玲 東京
490号 28 月白や玄米二合研いでます 平野八重子 愛媛
490号 29 辺境の華だよ父の木の実独楽 堀之内長一 埼玉
490号 30 穴まどい母のことばに傷つく子 本田ひとみ 埼玉
490号 31 首塚や字余りのよう雁の声 武藤暁美 秋田
490号 32 月明り短信ときに短剣なり 村上友子 東京
490号 33 秋思かなきりんの首の雨だれ 室田洋子 群馬
490号 34 日本とう冷めた雑炊朝まだき 森  鈴 埼玉
490号 35 鶏頭花ひとりは一方的に紅く 森央ミモザ 長野
490号 36 墓囲ふ鄙の饂飩は足で踏み 柳生正名 東京
490号 37 親父たるもの一本道の黄葉紅葉 山内崇弘 愛媛
490号 38 どんよりと老人が居て放屁虫 山口 伸 愛知
490号 39 鼬に会釈やや加速する日常 若森京子 兵庫

491号 1 木菟や正にまじめに鬱っぽく 阿保恭子 東京
491号 2 手をかけずそうして物は枯れてゆく 石山一子 埼玉
491号 3 ざざ漏れの晩節冬至かぼちゃ煮て 市原光子 徳島
491号 4 悪役の居ない台本マスクする 上田久雄 石川
491号 5 冬の寺微塵はひかりまみれなり 大高宏充 東京
491号 6 枯蟷螂まだ斧あげてわが身かな 岡崎万寿 東京
491号 7 一人ぼっちの堂守金色落葉かな 柄沢あいこ 神奈川
491号 8 煮凝りの家族がまたぐ虚無地獄 京武久美 宮城
491号 9 「9条」は摘んではならない冬すみれ 河野志保 奈良
491号 10 ジョルジュ・ルオーに
基督も道化師も青冬の街 
小長井和子 神奈川
491号 11 素白という椿ありけり逢いたし 小林寿美子 滋賀
491号 12 手の届く処に聖書秋出水 小林晋子 秋田
491号 13 うずくまる藁塚藁塚たるに倦み 小宮豊和 群馬
491号 14 豪雪停電狐の嫁入りのように母 佐々木宏 北海道
491号 15 すれ違う焚火の匂いする父と 佐藤紀生子 栃木
491号 16 枯葉着て眠りこけたい一日です 釈迦郡ひろみ 宮崎
491号 17 豊頬の古代の面や冬の蔵 新城信子 埼玉
491号 18 白昼夢雪の地平へ母を置く 菅原和子 東京
491号 19 髪切って頭にしみる刈田かな 鈴木修一 秋田
491号 20 彼岸花日本にヒト住めぬ場所 瀧 春樹 大分
491号 21 深読みも亀裂のひとつ冬鴎 田口満代子 千葉
491号 22 百済という在に機関区草雲雀 竹内羲聿 大阪
491号 23 鴨は水鳥魚屋に吊られたり 竪阿彌放心 秋田
491号 24 流木は光の棲家冬はじめ 月野ぽぽな アメリカ
491号 25 冬蠅を逐う手よ核に逐われし手 中村 晋 福島
491号 26 夜神楽へ臨時列車の来ておりぬ 中村真知子 三重
491号 27 急がずとも身辺すでに冬ざるる 成田恵風子 福井
491号 28 蛇穴へ自分史やはり秘めたままに 長谷川順子 埼玉
491号 29 古九谷の壺に山霧一泊す 浜 芳女 群馬
491号 30 弱法師を舞うた昔よもがり笛 日秋英子 兵庫
491号 31 選挙終えセシウムしみる枯野かな マブソン青眼 長野
491号 32 灯ともし頃あまたのわれと影を踏む 水野真由美 群馬
491号 33 疲れたかな一羽の冬かもめに夢中 宮崎斗士 東京
491号 34 収縮も弛緩も飽きてなまこかな 武藤鉦二 秋田
491号 35 栗甘し硬しコクトーの詩篇のよう 村上友子 東京
491号 36 あのゴリラひとを枯葉のように視る 茂里美絵 埼玉
491号 37 能面打ちの座るところまで冬日 山本昌子 京都
491号 38 冬幻ほどなる鬱よ息ひけり 柚木紀子 長野

492号 1 篤農の湯気たて尿る淑気かな 安藤和子 愛媛
492号 2 昼灯し狐火のよう車間距離 伊藤はる子 秋田
492号 3 レクイエムみちのく広々冬の波 大内冨美子 福島
492号 4 鮟鱇の美男の口をすするかな 川崎千鶴子 広島
492号 5 赤鼻のおじさん殖えてどんどの火 河原珠美 神奈川
492号 6 蝋梅や母というもの隙だらけ 木村清子 埼玉
492号 7 初鶏や力いっぱい泣く孫と 久保筑峯 千葉
492号 8 ストーブが猫あたためる独学よ 河野志保 奈良
492号 9 老院に閉じこめられし文書くや 小林一枝 東京
492号 10 元朝や大志きれいに消せるペン 小林寿美子 滋賀
492号 11 ふりむけば枯れているのは家だった 坂本春子 神奈川
492号 12 闇汁に頑固な父が義歯落とす 佐々木昇一 秋田
492号 13 後頭部のごと墓あまた冬銀河 佐々木義男 福井
492号 14 根深汁猫のピアスがテーブルに 佐藤美紀江 千葉
492号 15 シリウスや子離れという離れ技 下山田禮子 埼玉
492号 16 落葉嬉々光の中に立ってみる 新宅美佐子 愛媛
492号 17 冬薔薇骨まで見える怪我をして 鈴木幸江 滋賀
492号 18 茶の花や紙人形のうすまぶた 瀬古多永 三重
492号 19 人参に鬚根熟女に白鳥座 十河宣洋 北海道
492号 20 旧仮名は媚薬のごとし初神籤 高木一惠 千葉
492号 21 生きる面倒死ぬる億劫あみだくじ 高桑弘夫 千葉
492号 22 お元日日の脚見んとていざりゆく 瀧村道子 岐阜
492号 23 雪は降る立たされ坊主埋もるほど 竪阿弥放心 秋田
492号 24 着ぶくれて本一冊分の独り言 峠谷清広 東京
492号 25 冬の橋貌なしばかり映るかな 長尾向季 滋賀
492号 26 水音の元気な家に嫁が君 中村真知子 三重
492号 27 木の家は淋しき巣穴冬の雷 中村裕子 秋田
492号 28 嫁が君八十路は睨み効かぬなり 長谷川育子 新潟
492号 29 しぐるるや関東平野に葱は倒れて 平田 薫 神奈川
492号 30 春へもういろんな私信じよう 平野八重子 愛媛
492号 31 夜神楽だ津波で逝きし魂も来よ 藤野 武 東京
492号 32 茫洋とありし老いたる勇魚取 堀之内長一 埼玉
492号 33 一片の雪なり永久の別れなり 本間 道 新潟
492号 34 はや三日蛇より長い坂上る 舛田 長崎
492号 35 村じゅうのぶりこ噛む音嫁が来る 武藤暁美 秋田
492号 36 草むしる蟋蟀の寝床もあるだろに 森岡佳子 東京
492号 37 冬耕のひとりが石となる日暮れ 山田哲夫 愛知
492号 38 ぐるりに垂氷一戸の齢爛爛と 柚木紀子 長野

493号 1 『山月記』読む唇厚し冬深し 荒井まり子 京都
493号 2 気紛れに散らばる家族如月なり 飯島洋子 東京
493号 3 廃校のときどきしゃべる冬柏 飯土井志乃 滋賀
493号 4 保育園児の作る豊胸雪だるま 五十嵐好子 東京
493号 5 久遠とはいつかは氷る水の底 伊藤淳子 東京
493号 6 春の富士より頂けり野糞の座 内野 修 埼玉
493号 7 ほとけのざすずなすずしろはだれ髪 扇谷千恵子 富山
493号 8 春一番くびれ自慢の少女達 大西宣子 愛媛
493号 9 管で食摂り冬の虹見たという 狩野康子 宮城
493号 10 雑なわたしへ雪は降りますせつせつと 柄沢あいこ 神奈川
493号 11 春は忙しこころほろぼしていたり 川西志帆 長野
493号 12 自信なき記憶のように独楽まわる 久保智恵 兵庫
493号 13  海程五十周年記念大会
変哲の万歳の声雪解川
久保筑峯 千葉
493号 14 青森牛蒡一米もありそうな 小松京華 神奈川
493号 15 春の雪山河に続く待ち時間 佐藤紀生子 栃木
493号 16 ぼんやり来て田に影飛行船 篠田悦子 埼玉
493号 17 春画展観て春愁を去なすかな 清水 瀚 東京
493号 18 湯冷めして海馬にひろがる荒野かな 白石司子 愛媛
493号 19 氷山の崩落茶の間に及びけり 須藤火珠男 栃木
493号 20 淡雪やわれに土偶のまろき腹 高木一惠 千葉
493号 21 麗かやうららは頭痛持ちの歌 高桑弘夫 千葉
493号 22 片付かぬ胸の押入れ根深汁 武田昭江 東京
493号 23 如月や鉛筆で描く原生林 田中亜美 神奈川
493号 24 忸怩とは父思うこと梅の花 中村孝史 宮城
493号 25 左義長に来し番長の老いにけり 中山蒼楓 富山
493号 26 すべる橋絵踏みのように足を置く 梨本洋子 長野
493号 27 笹鳴や強迫的にメモっている 藤江 瑞 神奈川
493号 28 動物好きの妻に大勢の親戚 北條貢司 北海道
493号 29 除染まだ冬日にふっと目を閉じる 本田ひとみ 埼玉
493号 30 闘鶏の土佐で深酒して父よ 松本勇二 愛媛
493号 31 幼子二人に一つの枕薄紅梅 三井絹枝 東京
493号 32 雪を酒で洗うて墓の微醺かな 村上 豪 三重
493号 33 冬の雲光る気光る木ランナー 茂里美絵 埼玉
493号 34 生き急ぐ夫にからむや零余子蔓 森由美子 埼玉
493号 35 象一頭黄蝶一頭我独り 諸 寿子 東京
493号 36 銀閣も耳の後ろも冬ざるる 柳生正名 東京
493号 37 融雪期掬いあげたる句の蒼さ 山本キミ子 富山
493号 38 星逢うて三歳童子佇ちてあり 柚木紀子 長野
493号 39 清浄の雪降れ妹へ東北へ 六本木伸一 群馬

494号 1 山頭火好きの船長花に酔ふ 伊佐利子 福岡
494号 2 有袋類のごと赤子を抱き花見かな 石川和子 栃木
494号 3 冬鳥よわがさざなみを言葉とし 伊藤淳子 東京
494号 4 時代という愛しき器雛あられ 金子斐子 埼玉
494号 5 水ぬるむころうしろから人がくる 金子ひさし 愛知
494号 6 訛つよき母はふくよか蜆汁 鎌田喜代子 神奈川
494号 7 夏つばめ手の鳴る方になど行かぬ 川西志帆 長野
494号 8 ハスキーボイス帽子屋の窓に雪かな 木下ようこ 神奈川
494号 9 動かざる樹々ひたすらの早春や 小林一枝 東京
494号 10 足利屋篤がつんのめってる花菜風 小林まさる 群馬
494号 11 荒星や真顔で話す吾子が好い 小原恵子 埼玉
494号 12 春来れば爺のため咲くお婆さん 佐々木昇一 秋田
494号 13 もの思えば春の瀬音を妊りぬ 柴田美代子 埼玉
494号 14 九穴のしまいは墓穴はだれ雪 清水 瀚 東京
494号 15 パン包む原発写真の新聞紙 清水茉紀 福島
494号 16 猪の目の遠き色なり両神山なり 白石司子 愛媛
494号 17 冬の雷重心低き山の宿 新城信子 埼玉
494号 18 朝日に鹿われに水面の冬の音 関田誓炎 埼玉
494号 19 海って光なんだ春の自転車も 芹沢愛子 東京
494号 20 蛇裂きて鷹の子育て余念なし 高木一惠 千葉
494号 21 断層は地球の生傷みちのく忌 瀧 春樹 大分
494号 22 曳航のさみしさに似て黄砂降る 田口満代子 千葉
494号 23 大絵図のむかしの田植え数珠つなぎ 舘岡誠二 秋田
494号 24 桜蘂声失うを美と呼んで 田中亜美 神奈川
494号 25 足利屋篤可愛くなって春の底 谷 佳紀 神奈川
494号 26 逃水のくるぶし見えている異郷 月野ぽぽな アメリカ
494号 27 春耕や郷里の影に月の光 董 振華 中国
494号 28 花筵の孫軍靴履くなよ 中島まゆみ 埼玉
494号 29 宮古島にも下町がある猫の恋 中原 梓 埼玉
494号 30 生き返るために死はあり花は葉に 福原 實 神奈川
494号 31 山茱萸あかり呼捨ての友もういない 堀之内長一 埼玉
494号 32 雫かな老梅の話しています 三井絹枝 東京
494号 33 逆上がりは菜の花の色祖父がいた 宮崎斗士 東京
494号 34 御詠歌の終いは梟呼ぶごとし 武藤鉦二 秋田
494号 35 出さぬ文で舟折っている夕ざくら 茂里美絵 埼玉
494号 36 波音を繭と思いぬ春の駅 守谷茂泰 東京
494号 37 春眠に風倒木があり醒める 柳生正名 東京
494号 38 如是我聞生の白子に箸揃え 矢野千代子 兵庫
494号 39 氈鹿に代りて佇たな春の雪 柚木紀子 長野

495号 1 夕蛙人の目玉はもう御免 阿川木偶人 東京
495号 2 黒髪の緩きウェーブ百千鳥 有田莉多 東京
495号 3 生きるとは朝が生れる鳥交る 安藤和子 愛媛
495号 4 藤房や意志なきまま揺れ離る郷 伊藤 和 東京
495号 5 技比べせむとや並びし蟻地獄 内田利之 兵庫
495号 6 牛飼いの老爺被曝の牛を抱く 大西健司 三重
495号 7 でこぼこの老兵ここに葱坊主 岡崎万寿 東京
495号 8 筍茹でる七人家族の頃ありき 加地英子 愛媛
495号 9 春昼や我が名見あきし人ばかり 門屋和子 愛媛
495号 10 想さやと下降す藤の実が青し 北村美都子 新潟
495号 11 幸福感抱いて気ままに春の暮 京武久美 宮城
495号 12 桐の花巨石を運ぶ村人たち 児玉悦子 神奈川
495号 13 今は昔獣のごとく青き踏む 小原恵子 埼玉
495号 14 歯の生えぬ子より大きな兜折る 近藤好子 愛知
495号 15 サクラガサイタサクラガサイタ死ぬ人も 笹岡素子 北海道
495号 16 近くから私を見れば霞なり 佐々木昇一 秋田
495号 17 四姉妹の一人色黒芋雑炊 篠田悦子 埼玉
495号 18 寝たっきりも命の塊日常有り 釈迦郡ひろみ 宮崎
495号 19 君たちの正論新じゃがに近い 白石司子 愛媛
495号 20 目借り時はがき一枚ふっと孤独 新城信子 埼玉
495号 21 沈黙のはじめに春の放射能 高桑婦美子 千葉
495号 22 木下闇さっきの雨が瞬いた 竹田昭江 東京
495号 23 花ノ冷エ雨ニモ負ケテ籠リケリ 竪阿彌放心 秋田
495号 24 藤垂れて先進国という疲労 田中亜美 神奈川
495号 25 北京の古き良き多岐多様柳絮飛ぶ 董 振華 中国
495号 26 雨は祖母接骨木の窓細く開け 遠山郁好 東京
495号 27 手花火の火花チリチリ我が脳 徳永義子 宮崎
495号 28 ミツバチの中にもニートいるらしい 中村真知子 三重
495号 29 陽炎や人がときどき入れ替わる 根岸暁子 群馬
495号 30 福島に生きる畦塗る祖を塗る 藤野 武 東京
495号 31 ぼくんちにせんせいあのね団子虫 堀真知子 愛知
495号 32 野遊びのあの子編集者のセンス 宮崎斗士 東京
495号 33 雪べらの突立っている喪の戸口 武藤暁美 秋田
495号 34 巣を覗く真昼の透明な背のび 森央ミモザ 長野
495号 35 筍や見えない過去が根の如く 山田哲夫 愛知
495号 36 思考といいがたし春の土堀りはじめる 山本 勲 北海道
495号 37 羆らし薔薇薔薇薔薇嗅ぐつもりらし 柚木紀子 長野
495号 38 こちら向く春のフクシマ放れ牛 横地かをる 愛知
495号 39 汗かくと虫寄ってくる蛇逃げる らふ亞沙弥 神奈川

496号 1 ナイターや笑窪の投手クローズアップ 五十嵐好子 東京
496号 2 仰臥せし子規の宙あり蝶生るる 石川青狼 北海道
496号 3 ポッペン吹くよ国民学校同窓会 石田順久 神奈川
496号 4 青葉照りてふ鏡の奥にわれ住まう 伊藤 和 東京
496号 5 枇杷の実や六十路は唾を飛ばすなり 稲葉千尋 三重
496号 6 油虫撃ちてし止まむ四つん這い 内田利之 兵庫
496号 7 猫黒し虞美人草を折り曲げて 内野 修 埼玉
496号 8 くちなわの寝息きこえる博多帯 大野美代子 愛媛
496号 9 思いったけ老鴬のソロ我一人 岡崎万寿 東京
496号 10 現実の蟻の二割のサボタージュ 奥野ちあき 北海道
496号 11 我が影の芯の部分へあめんぼう 門屋和子 愛媛
496号 12 梅雨多彩老衰という単純さ 狩野康子 宮城
496号 13 人声に興味津々青葉木菟 北村美都子 新潟
496号 14 還暦の含羞あしなが蜂水に 木下ようこ 神奈川
496号 15 暗がりの牛なる私春の雷 木村清子 埼玉
496号 16 人焼くけむり春は駄菓子の七色に 小池弘子 富山
496号 17 不安とは とはとは綿毛とんでいる 小林寿美子 滋賀
496号 18 暗闇へ山盛りにするさくらんぼ 佐藤二千六 秋田
496号 19 被曝とう荒寥に在る新樹光 篠田悦子 埼玉
496号 20 花筏とうに還暦曲りきる 下山田禮子 埼玉
496号 21 木の上が天と地の間青蛙 須藤火珠男 栃木
496号 22 爆心柱きみ渾身の新樹なり 高木一惠 千葉
496号 23 冠着は無人駅赤松の夏 田中昌子 京都
496号 24 男叩くように女は蚊をよける 峠谷清弘 東京
496号 25 はつ夏に会う子よ清水汲み上げる 遠山郁好 東京
496号 26 クローバーに踏み込みまろび金婚なり 中尾和夫 宮崎
496号 27 リラ冷えや物申すとき口うごく 中村裕子 秋田
496号 28 代掻機田の切れ端を持ち帰る 西又利子 福井
496号 29 風の一日の駱駝に夏毛人に黙 野田信章 熊本
496号 30 蟻の列津波の記憶引きずって 本田ひとみ 埼玉
496号 31 八十八夜卵ほのかに翳りゐる 前田典子 三重
496号 32 白い梅ふしぎそうに皆年をとり 三井絹枝 東京
496号 33 牛の鼻撫でふくしまの花まんさく 武藤暁美 秋田
496号 34 青嵐石に馬乗りして石屋 武藤鉦二 秋田
496号 35 ほたる飼うあにいもうとよナガサキ 茂里美絵 埼玉
496号 36 此処はもうここではなくて夕焼ける 森央ミモザ 長野
496号 37 ほたるぶくろ星空のごと覗きこむ 守谷茂泰 東京
496号 38 羅漢千体薄い下着のはりついて 矢野千代子 兵庫
496号 39 十薬や踵あたりに夜が来て 吉川真実 東京

497号 1 昼寝覚め目鼻確かむ被曝圏 有村王志 大分
497号 2 日向灘七月心底明るい刹那だな 石田順久 神奈川
497号 3 人をさす無垢のその眼よ夏あざみ 石山一子 埼玉
497号 4 雲の峰たれにもひとつうしろ山 江 津 神奈川
497号 5 蕗や自我くたくたに煮て おやすみ 榎本祐子 兵庫
497号 6 紅白饅頭でもなくあらゆる朧かな 大谷 清 山梨
497号 7 果樹園は梅雨の電球より静か 大野泰司 愛媛
497号 8 鳥だった肉片を焼く川開き 奥山和子 三重
497号 9 桑の実よ友は法華寺みちを曲った 加納百合子 奈良
497号 10 身体ははるかなる闇舞う蛍 柄沢あいこ 神奈川
497号 11 竹夫人がんじがらめになっており 川西志帆 長野
497号 12 夏茱萸やあひづちのごと掌のくぼみ 木下ようこ 神奈川
497号 13 箱庭に人の気配を作りけり こしのゆみこ 東京
497号 14 味噌蔵にまろびし母の朧かな 児玉悦子 神奈川
497号 15 胸中の湖に空蝉吹かれきて 小長井和子 神奈川
497号 16 コワレモノ注意蛍ガ生マレマス 小西瞬夏 岡山
497号 17 罪や功や花活けし辺に入院 小林一枝 東京
497号 18 田蛙やまもちゃんあっちゃん出て来いよ 小林まさる 群馬
497号 19 雑巾のように母在り夜の鶴 佐藤鎮人 岩手
497号 20 月に霜きれいな蹠のような 猿渡道子 群馬
497号 21  長崎
人として棒立ちの汗爆心地
篠田悦子 埼玉
497号 22 老いてこそ命かがやく西瓜に刃 末岡 睦 北海道
497号 23 入り来ては蛇おとなしき座禅堂 竪阿彌放心 秋田
497号 24 無口なるわれの特技は茄子の馬 舘岡誠二 秋田
497号 25  悼・村上護さん
白桃を剥きて無頼派うつくしく
田中亜美 神奈川
497号 26 ホタルブクロ生まれる前に聴いた声 月野ぽぽな アメリカ
497号 27 悪あがきみたいな寝相熱帯夜 峠谷清弘 東京
497号 28 被曝の戸も住み替る代ぞ青大将 中村 晋 福島
497号 29 滅相な少女のあくび梅雨上る 中村孝史 宮城
497号 30 蘭奢待なる酒酌みて月を消す 並木邑人 千葉
497号 31 ファスナーに男手を借るパリー祭 新田幸子 滋賀
497号 32 夏の朝のんのん喋ってから坐禅 丹生千賀 秋田
497号 33 螢とぶ北斗七星のあたり 野崎憲子 香川
497号 34 耳鳴り否夏コオロギの爆心地 野田信章 熊本
497号 35 流木を束ねたよう爆心地に旅人 室田洋子 群馬
497号 36 水中花水の意のままなるがよし 森内定子 福井
497号 37 言霊という地響きや書を曝す 山本光胤 大阪
497号 38 一夫一妻脱ぎにくそうな蛇の衣 らふ亜沙弥 神奈川

498号 1 鮎食べて碩の小石持ち帰る 麻生圭佑子 愛知
498号 2 ギロチンありし国のシャンソン白桃食ぶ 石川まゆみ 広島
498号 3 朝顔やわたしの影の波打際 伊藤淳子 東京
498号 4 白白と鹿の眼窩に落花かな 内野 修 埼玉
498号 5 土以上に父は土です梅雨最中 大沢輝一 石川
498号 6 わが影のひと口の水油照り 大高宏充 東京
498号 7 広辞苑の上に兎のぬいぐるみ 岡崎文都 東京
498号 8 ただ聞いている人といる夕端居 川西志帆 長野
498号 9 おしゃべりな熊蝉みたい母卒寿 河原珠美 神奈川
498号 10 西日中書棚の昭和灼けて居る 城至げんご 石川
498号 11 仙人掌の花ひと差し指で弾くピアノ 北上正枝 埼玉
498号 12 むしろ玄し蔦のひたすらなる青は 北村美都子 新潟
498号 13 遊ぶって蚯蚓のすみか探すこと 河野志保 奈良
498号 14 虫干を飛び越え父の部屋に行く こしのゆみこ 東京
498号 15 蜘蛛の糸忖度なる語すでに死語 小宮豊和 群馬
498号 16 烏瓜テニス仲間のように躁 小山やす子 徳島
498号 17 狼の残響のごと釣瓶落し 白石司子 愛媛
498号 18 吾死なば無住の庵青くるみ 末岡 睦 北海道
498号 19 潔く母生きている麦の熟れ 鈴木八駛郎 北海道
498号 20 牛蛙に耳の傾く僧の酒 関田誓炎 埼玉
498号 21 夏の蝶フクシマに空っぽの砂場 芹沢愛子 東京
498号 22 水晶体にメス薔薇暗しぼうと紅し 十河宣洋 北海道
498号 23 敗戦忌こめかみ青く太く父 竹田昭江 東京
498号 24 夏野かな何もしないという理想 田中雅秀 福島
498号 25 生かされて言霊つかむ木下闇 田浪富布 栃木
498号 26 うつぶせは沼の淋しさ夕薄暑 月野ぽぽな アメリカ
498号 27 空蝉や節電のような蓄電のような 董 振華 中国
498号 28 ナガサキよ首なき像を噛む蜻蛉 中村 晋 福島
498号 29 老人は姿勢を正す冷房車 中村孝史 宮城
498号 30 鬼蜘蛛をやんわりと踏む廊下かな 仁田脇一石 宮崎
498号 31 鞴の音のように夏過ぐ老いなるや 藤野 武 東京
498号 32 震災忌わたしは捨て石にもなれず 本田ひとみ 埼玉
498号 33 鯖ひらく晩年の未知ひらくごと 前田典子 三重
498号 34 晩夏つまり赤胴色の祖父がいた 三浦二三子 愛知
498号 35 朝粥のさざなみに草笛の灯し 森央ミモザ 長野
498号 36 船上のごとき夏野に傾ぎけり 守谷茂泰 東京
498号 37 雲の峰鞍なき白馬曳き入れよ 柚木紀子 長野
498号 38 今朝の秋雲ひとつなく乳房あり 佳 夕能 富山
498号 39 ふくしまや虹を観念的に画く 若森京子 兵庫

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