金子兜太選 海程秀句」鑑賞 
2012年目次

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作者名
地域 

蟋蟀の貌して死の町などと言う

安藤和子 愛媛
479号 2 真ん中に刈田ひろがる待ち時間 伊藤はる子 秋田
479号 3 農の父桑天牛の首を 内野 修 埼玉
479号 4 燕帰る始発電車を追い越して 宇野律子 神奈川
479号 5 星月夜仮設に繕ひ物の妻  江井芳郎 福島
479号 6 夏水仙老いてゆく日を賑やかに 大口元通 愛知
479号 7 「悩むことはない」と声あり曼珠沙華 岡崎万寿 東京
479号 8 北風吹くや仮設住ゐをへうへうと  柏倉ただを 山形
479号 9 全天の秋を背に受く被曝の牛 加藤昭子 秋田
479号 10 石積みの澄みゆく時空精進料理 金子斐子 埼玉
479号 11 ヒロシマの水澄みており理不尽なり 金子ひさし 愛知
479号 12 月天心一人子を生しわが生死 北村美都子 新潟
479号 13 人間くささが希薄となって酔うて秋 京武久美 宮城
479号 14 なんばんぎせる物忘れのよう息するよう 黒岡洋子 東京
479号 15 隆隆と仏壇の中青大将 今野修三 東京
479号 16 鼻なでて意見する父カラフトマス 佐々木宏 北海道
479号 17 蒲鉾のむちむち夏の赤ん坊 篠田悦子 埼玉
479号 18 曼珠沙華ひらきてぼくをくらくする 杉崎ちから 愛知
479号 19 空蝉を並べ机上の原発論 瀬古多永 三重
479号 20 嗚呼きのこ被曝の傘をひろげたる 高木一惠 千葉
479号 21 秋思といふてやはらかき唇をせり 武田美代 栃木
479号 22 百歳の僧の焚火に長い列 舘岡誠二 秋田
479号 23 しづかなる尾の往き交ひて秋の暮 田中亜美 神奈川
479号 24 被曝者であること蠅を逃がすこと 中村 晋 福島
479号 25 コスモスやときには風のおもちや箱 野崎憲子 香川
479号 26 五体にしみる秋草の青津波痕 野田信章 熊本
479号 27 みちのくや新藁よりも人乾き 長谷川育子 新潟
479号 28 吾も犬も手ぶらで被曝断腸花 福原 實 神奈川
479号 29 幸魂の集まる広場秋の田は 堀之内長一 埼玉
479号 30 高僧に母霧に山肌在りにけり 前田典子 三重
479号 31 福島の桃買う憂国の雨降るや 舛田 長崎
479号 32 よく酔えば虫の闇より父帰る 松本勇二 愛媛
479号 33 のその丁寧さが誘います 三井絹枝 東京
479号 34 夜明けの萩君らしいひとことが来る 宮崎斗士 東京
479号 35 包帯も花野も危なっかしい砦 茂里美絵 埼玉
479号 36 坊様に肉食系の眉がちゃがちゃ 柳生正名 東京
479号 37 楽浪の国やこんもり今年米 矢野千代子 兵庫
479号 38 余生なお健気の妻よラ・フランスよ 山谷草庵 青森
479号 39 遅れとる蛇めでたしや穴へ 柚木紀子 長野

480号 1 森は森で枯葉被っているのです 石川青狼 北海道
480号 2 大根を提げわが脛の形も無し 石原光子 徳島
480号 3 漁船いまだ陸に座礁や小鳥来る 伊藤淳子 東京
480号 4 猫じやらしくすぐつたり粥こぼしたり 稲田豊子 福井
480号 5 綿虫や人がセシウム放ちても 稲葉千尋 三重
480号 6 ステッキでばったの格好してみたり 内田利之 兵庫
480号 7 大津波の防潮林に羽衣あり 江井芳郎 福島
480号 8 線量ざわつく生粋の落葉かな 大内冨美子 福島
480号 9 妻の魂越えゆく山河冬立てり 柏倉ただを 山形
480号 10 君老いたりめろんの月と名付けしが 京武久美 宮城
480号 11 日に中る転び伴天連らもリラも 久堂夜想 神奈川
480号 12 雁が音や少し不安で夫を呼ぶ 小林まさる 群馬
480号 13 満月を枕頭に呼び師は病むや 今野修三 東京
480号 14 生きいそぐほどのことなく花野道 柴田美代子 埼玉
480号 15 母がりの淡き酩酊ひょんの笛 高木一惠 千葉
480号 16 堰の上のたいらな水を秋思とす 武田美代 栃木
480号 17 王の如く鸚鵡の如く冬麗や 田中亜美 神奈川
480号 18 退屈で生者に集るいのこずち 田浪富布 栃木
480号 19 もう五年です小春のお墓皆子さま 谷 佳紀 神奈川
480号 20 月夜茸被曝の我もどこか光る 中村 晋 福島
480号 21 逝く力残しておこう霜の声 中村裕子 秋田
480号 22 残像にしては田青過ぎる 丹生千賀 秋田
480号 23 関東の葱の白さのべらんめぇ 幅田信一 福井
480号 24 蛇衣脱ぐ悪い噂はほぼ事実 浜 芳女 群馬
480号 25 お人好しで父大根の葉のように 藤野 武 東京
480号 26 秋明菊身内すくない母のよう 本田ひとみ 埼玉
480号 27 鵙近く山野さすらう眠りかな 松本勇二 愛媛
480号 28 夕暮れの水に従い崩れ簗 松本廉子 栃木
480号 29 心中の鬼の丸まる石蕗の花 汀 圭子 熊本
480号 30 わたくしの子のよう霙という名 三井絹枝 東京
480号 31 蓑虫を「旅」と名づける揺らしてみる 宮崎斗士 東京
480号 32 老僧もかつて兵なり芒原 武藤暁美 秋田
480号 33 優しさや既に目の無い山椒魚 守谷茂泰 東京
480号 34 しどみの実小鹿野産土神の駄々 矢野千代子 兵庫
480号 35 焚火の輪いつか死ぬ人朗らなり 山口 伸 愛知
480号 36 石蕗明かりはっと気付きし汝の野心 山本キミ子 富山
480号 37 わたつみに打ち拉がれし牡蠣の殼 柚木紀子 長野
480号 38 東京は硝子の胸板雁渡る 吉川真実 東京
480号 39 逝く母の瞼はがして我見せん 渡部陽子 宮城

481号 1 文明の孤児でありたし薄氷 阿川木偶人 東京
481号 2 狐の提灯見しとう夫よ病むな 荒井まり子 京都
481号 3 生家なり陶の狸が落葉浴ぶ 石川義倫 静岡
481号 4 柞紅葉万朶の闇のひとかかえ 石田順久 神奈川
481号 5 猪に齧られている新塔婆 稲葉千尋 三重
481号 6 心臓手術せぬ一徹の煤払う 上野昭子 山口
481号 7 「天福地福」語る夜長よ福島よ 宇川啓子 福島
481号 8 あきらかや尾行している夜の落葉 梅川寧江 石川
481号 9 病む白鳥に母にこんなに月あかり 榎本愛子 山梨
481号 10 もの忘れ芒にこつん風にこつん 榎本祐子 兵庫 
481号 11 寒鯉に水の鎧の昏さかな 加藤昭子 秋田
481号 12 田のまぼろしむかし軟派して 菊川貞夫 静岡
481号 13 急にふえた精霊蜻蛉よ空腹 木下ようこ 神奈川
481号 14 寒牡丹単純な言葉でいいのです 木村宜子 長崎
481号 15 天狼星や津波の果の水明り 黒岡洋子 東京
481号 16 冬は牛ボオーッと連絡船の記憶 佐々木宏 北海道
481号 17 しんしんと朝ひとりの寒気団 下山田禮子 埼玉
481号 18 麒麟の首圧倒的多数の寒さだな 白石司子 愛媛
481号 19 秩父夜祭猪がみみずを食べに出る 関田誓炎 埼玉
481号 20 土蔵もピアスの穴も冬ざれて 瀧村道子 岐阜
481号 21 電子音かもしれぬ声熊撃つて 田中亜美 神奈川
481号 22 そっとそこにいるだけ赤い羽根の少女 遠山郁好 東京
481号 23 がれずに皆木守柿フクシマは 中村孝史 宮城
481号 24 もう空へ入りきれない星が飛ぶ 西又利子 福井
481号 25 しやぶりつくせと冬霧の眼かな 野崎憲子 香川
481号 26 抱きしめる意味などはないちちろ虫 橋本和子 長崎
481号 27 煙出しときどき冬の父を吐く 福原 實 神奈川
481号 28 温和な人の粘りや泥や葱畑 藤江 瑞 神奈川
481号 29 白鳥来私情のつばさ押し広げ 堀之内長一 埼玉
481号 30 かまどうま涸れいて一時帰宅かな 本田ひとみ 埼玉
481号 31 透きとほる葱よ齢とるうれしさよ 前田典子 三重
481号 32 菜園をポピーで満たし蟄居する 汀 圭子 熊本
481号 33 小鳥よりとけやすい声 ひいふう 三井絹枝 東京
481号 34 みずひき草握手のために少し話す 宮崎斗士 東京
481号 35 色鳥の木があり老いの地平あり 武藤鉦二 秋田
481号 36 昼星のあまた降るなり十二月 森 鈴 埼玉
481号 37 雪が来た飯噛むと聞こえる山の音 山本 勲 北海道
481号 38 麩の椀にごる真珠湾奇襲ありし日 若森京子 兵庫
481号 39 お互いがひとつかみの藁母と我 渡部陽子 宮城

482号 1 宇宙雑音僕らの空に鰤起し 油本麻容子 石川
482号 2 仏飯の乾きも冬の旱かな 新井娃子 埼玉
482号 3 黄落の人集まるを辺という 伊藤淳子 東京
482号 4 福島は冬噛みしめて踏みしめて 宇川啓子 福島
482号 5 冬麗や完璧な横顔の過ぐ 榎本祐子 兵庫
482号 6 団地へと丁寧に来る寒波かな 小野裕三 神奈川
482号 7 「座れ」とは叱咤にほひの桜餅 門脇章子 大阪
482号 8 紅葉さささ栗鼠遁走の尾であったか 柄沢あいこ 神奈川
482号 9 ゆきまろげ眉を落とすとは怖し 河西志帆 長野
482号 10 魚の目を踏んづけてゆく恵方かな 川野欣一 兵庫
482号 11 雪化粧母の化粧は一度きり 城至げんご 石川
482号 12 きのうとはちがう星あるつららかな こしのゆみこ 東京
482号 13 元旦や犬の喧嘩の頼もしき 小林一枝 東京
482号 14 踏絵拒む人の眩しき春の夢 小柳慶三郎 群馬
482号 15 桔梗摘む吾にかすかな余震かな 佐藤美紀江 千葉
482号 16 柚子は黄に癌取ることも若さかな 篠田悦子 埼玉
482号 17 山国やおとこの重さと思う雪 清水喜美子 茨城
482号 18 荒星や夫に尋ねる我が予定 下山田禮子 埼玉
482号 19 寒鴉ああと片鳴き清貧なり 十河宣洋 北海道
482号 20 冬の噴水サラダ感覚の眺望 高橋明江 埼玉
482号 21 風紋といふを仔鹿の過ぎにけり 田中亜美 神奈川
482号 22 旅に寝て我は一枚の雨音 月野ぽぽな アメリカ
482号 23 父の肩で見聞きしたこと春の水 董 振華 中国
482号 24 自画像は嘘ついてゐる温め酒 長尾向季 滋賀
482号 25 木の実こつんこつんあばら家の吾に 中島まゆみ 埼玉
482号 26 寒に入る目下のところただの猫 中塚紀代子 山口
482号 27 シリウスの白よフクシマただ寒き 中村 晋 福島
482号 28 生きるとは冬の土手行く腕の振り 中村孝史 宮城
482号 29 雪野原唄の行きたい所まで 西又利子 福井
482号 30 猪も鴉も素足ひかり巻く 野崎憲子 香川
482号 31 野に白露仮設に結露フクシマよ 野田信章 熊本
482号 32 髭三日剃らず漂う初霞 堀之内長一 埼玉
482号 33 手のひらに会津山塩白鳥来る 本田ひとみ 埼玉
482号 34 神仏に屠蘇酌む人間淋しくて 舛田 長崎
482号 35 裸木に耳あり残照のふくしまなり 武藤鉦二 秋田
482号 36 餅にかび罪のごとあり戦中派 安井昌子 東京
482号 37 雪暗れの何ほどもなく母を訪う 横地かをる 愛知
482号 38 夕暮れのじやがいも数へられてをり 横山 隆 長崎
482号 39 頭脳という厄介なもの鬼やんま 若森京子 兵庫

483号 1 人だかりは苦痛の一匙夕時雨 宇田蓋男 宮崎
483号 2 蕗の薹瓦礫の山のどん底や 江井芳郎 福島
483号 3 被曝地背負う雪山高し真白し 大内冨美子 福島
483号 4 左義長や新聞燃える燃えない字 大沢輝一 石川
483号 5 姪嫁ぐ髪がヨットのかたちして 大高俊一 秋田
483号 6 虎落笛人が住んでいて荒れる家 大高洋子 東京
483号 7 小気味よき冬晴れ引っ掻きたいような 木暮洗葦 新潟
483号 8 冬紅葉わが手に託さる喉仏 加地英子 愛媛
483号 9 天に星地にちちははのおでん種 門脇章子 大阪
483号 10 わが発声不安定なり葱のようなり 柄沢あいこ 神奈川
483号 11 恋猫の声のぶぎぶぎ僕もぶぎ 川崎千鶴子 広島
483号 12 伏す鮃観て繊細な昼のデート 木下ようこ 神奈川
483号 13 慇懃にタワシがあり猟師は老ゆ 久保智恵 兵庫
483号 14 マフラーをゆるめて夜がもうひとつ 河野志保 奈良
483号 15 ねんごろにすずしろきざむ日のはじめ 小長井和子 神奈川
483号 16 木枯や楯なる山に海が鳴る 坂本春子 神奈川
483号 17 雄鶏のまなぶたくしゃと遅日かな 重松敬子 兵庫
483号 18 この瓦礫雪の覆うは祭祀とも 柴田美代子 埼玉
483号 19 九十の序につき末黒野に遊ぶ 清水喜美子 茨城
483号 20 家族揃えばぶつかり合って冬ごもり 鈴木修一 秋田
483号 21 言の葉は瓦礫にならず龍の玉 瀧 春樹 大分
483号 22 たそがれの鬼のくるぶし芽吹くかな 田口満代子 千葉
483号 23 夢殿に真っ直ぐに来て余寒かな 竹田昭江 東京
483号 24 黝き崖ゆくことも春曙 田中亜美 神奈川
483号 25 入江めく真昼の愛撫つわの花 月野ぽぽな アメリカ
483号 26 如月の月影少年の猫背来る 董 振華 中国
483号 27 日常を左右にこぼし水温む 根岸暁子 群馬
483号 28 国宝とふ小さき器よ雪が降る 野崎憲子 香川
483号 29 よき前歯持ちて死にゆく白菫 日高 玲 東京
483号 30 冬の蜂石積むように動いてる 福原 實 神奈川
483号 31 蕗の薹あるいは装飾パネルかな 藤江 瑞 神奈川
483号 32 セシウム降り積み母は葱畑に小さし 藤野 武 東京
483号 33 牡蠣舟や透きとおる声出すかな 三井絹枝 東京
483号 34 天文学っておおむね静かふきのとう 宮崎斗士 東京
483号 35 べたっと昼月とてつもなき大マスク 茂里美絵 埼玉
483号 36 微笑とも白鳥載せし水輪とも 柳生正名 東京
483号 37 逢うとすぐ背を叩く癖節分会 山口 伸 愛知
483号 38 浮島現象アンニュイな日向ぼこ 若森京子 兵庫

484号 1 つばくらめ綺麗な土をみちのくへ 石川和子 栃木
484号 2 かもめよこぎって雪暗のオルガン 井手郁子 北海道
484号 3 やわらかき球体の鳥冬の掌に 一ノ瀬タカ子 東京
484号 4 齢とは置物のようです春の雪 稲田豊子 福井
484号 5 百姓兼禰宜に道草の花匂う 今福和子 鹿児島
484号 6 みちのくのまるごと愛し囀れり 宇川啓子 福島
484号 7 貝塚ともなれや焼牡蠣飽かず食う 内田利之 兵庫
484号 8 蝶が湧く洞のあり誰にも言わぬ 榎本祐子 兵庫
484号 9 あちこちに夫のマスク遺言なきに 加地英子 愛媛
484号 10 出て行ったままにしてある燕の巣 河西志帆 長野
484号 11  中島偉夫氏逝く
彼岸は春か句集未然と微笑みぬ
河原珠美 神奈川
484号 12 吾より生る東西南北春の辻 北村美都子 新潟
484号 13 三月の荒涼に熟れ構われず 京武久美 宮城
484号 14  悼・永井微寒氏
“生き下手で寒い”と言ひし夕月や
小林一枝 東京
484号 15 春の風邪被曝電線垂れている 清水茉紀 福島
484号 16 雪明り軍服の父喪服の母 白井重之 富山
484号 17 父の忌や梅の枝に褌むすぶ 鈴木八駛郎 北海道
484号 18 余震なお倒木が抱く蝌蚪の水 高木一惠 千葉
484号 19 風花や口を出でたるもの儚し 武田美代 栃木
484号 20 木の葉無き木々展翅無きガラスケース 田中亜美 神奈川
484号 21 あるがまま朝の生まれるくらしかな 田中昌子 京都
484号 22 風が吹きずーっとむかしも狩をして 遠山郁好 東京
484号 23 遥かなる夫征きし日や苗代寒 徳永義子 宮崎
484号 24 偉夫急逝春雨は音立てぬもの 中尾和夫 宮崎
484号 25 母子草ふくしま去らぬ父祖たちに 中村 晋 福島
484号 26 春愁やポストに海抜の文字 中山蒼楓 富山
484号 27 田を植える機械の音の機械的 服部修一 宮崎
484号 28 みなづきの魚啼くようにおしゃべり 日高 玲 東京
484号 29 雪柳闇に葬ること甘美 廣島美恵子 兵庫
484号 30 鶴帰るプルトニウムの火のかなた 堀之内長一 埼玉
484号 31 友癒えよ陸奥癒えよ梅真白 本田ひとみ 埼玉
484号 32 谷底の空なき水の春の色 水野真由美 群馬
484号 33 春の鳶想像力の円を出ず 三田地白畝 岩手
484号 34 初鶯手にのせて湯に入ります 三井絹枝 東京
484号 35 だまし絵のなかのふくしま夕桜 武藤鉦二 秋田
484号 36 しゃぼん玉草間弥生が真ん中に 村上友子 東京
484号 37 着ぶくれの妻よ無敵の要塞よ 室田洋子 群馬
484号 38 薄味の蜆汁かな心霊写真 渡部陽子 宮城

485号 1 蜃気楼見た見た見たと反芻す 阿川木偶人 東京
485号 2 吾を生みし体内薔薇色聖五月 安藤和子 愛媛
485号 3 岩牡蠣ほうばる月をほうばる 泉 尚子 熊本
485号 4 花片栗半分は秘密の日常 伊藤 和 東京
485号 5 忘れものあるごと蛇をやり過ごす 伊藤淳子 東京
485号 6 花菜の黄愚行もありし祖を囲む 井上湖子 群馬
485号 7 羽抜鶏の王なり正しき喉仏 榎本祐子 兵庫
485号 8 春愁は河馬のあくびのごときもの 大谷昌弘 千葉
485号 9 匂玉の闇にふくろう青みゆく 大西健司 三重
485号 10 にんげんや花火のように核を持つ 岡崎正宏 埼玉
485号 11 美人画の団扇かざして亡父が来る 加古和子 東京
485号 12 黄菖蒲や観測隊のように岸 柏原喜久恵 熊本
485号 13 父消えて我に緑夜をうつすかな 川田由美子 東京
485号 14 深海に散り入るさくら麻酔いま 北村美都子 新潟
485号 15 魂抜けるとは陽炎に魅かれること 京武久美 宮城
485号 16 一輌貨車に散るだけ散った桜かな 小林一枝 東京
485号 17 一山の一樹あまさず新樹光 清水喜美子 茨城
485号 18 身の内の隠沼いくつ青き踏む 下山田禮子 埼玉
485号 19 田螺のあくび農学博士に伝染かな 白井重之 富山
485号 20 国生みの矛にもぐらの春の土 高木一惠 千葉
485号 21 嚔して畜生と言ふ黄砂降る 田中 洋 兵庫
485号 22 離別時来て百日紅の真赤 董 振華 中国
485号 23 雨蛙こいつは無職吾は無学 豊原清明 兵庫
485号 24 被曝の土に被曝の翅を蝶が曳く 中村 晋 福島
485号 25 カッコーの声入りごはん炊けている 中村祐子 秋田
485号 26 駅弁の中までずっと春の田です 丹生千賀 秋田
485号 27 ふっと誕生仏のくらさ森林浴 野田信章 熊本
485号 28 地にカメラ大仏の掌に四十雀 野原瑤子 神奈川
485号 29 ブロッコリー敵意ひとつが抜きん出る 橋本和子 長崎
485号 30 よみがえるものに黙読著峩の花 平塚幸子 神奈川
485号 31 種蒔いて素手の感情よみがえる 堀之内長一 埼玉
485号 32 放射状に爆発つづくさくらかな マブソン青眼 長野
485号 33 中途半端に慣れるは怖し蜥蜴の尾 丸木美津子 愛媛
485号 34 しゃぼん玉名誉教授の髭に爆ぜ 三松玲子 神奈川
485号 35 しんぞうがとととぽぽぽと子猫かな 茂里美絵 埼玉
485号 36 白菜を抱えて乳房つぶれけり 森 美樹 千葉
485号 37 ハンカチの木よ雨空は生まれたて 守谷茂泰 東京
485号 38 ポタージュに緑のパセリまるで恋 吉村伊紅美 岐阜

486号 1 五月晴れ鏡に暗き鼻の穴 阿川木偶人 東京
486号 2 ほしゃほしゃの象の毛梅雨の晴れ間かな 阿保恭子 東京
486号 3 山畑の岳父は鏃か黒黄金虫 有村王志 大分
486号 4 お尻から並べてみせる田植唄 市原正直 東京
486号 5 腸壁にポリープ崖に燕の巣 井手郁子 北海道
486号 6 水羊羹森のしずけさのつづき 伊藤淳子 東京
486号 7 入道雲そもそも大志なかりけり 内田利之 兵庫
486号 8 止めときな腹いせの酒梅雨の川 宇野律子 神奈川
486号 9 舐めて貼る鳥の切手や遍路宿 榎本愛子 山梨
486号 10 忌日なり頬に草あかり水あかり 榎本祐子 兵庫
486号 11 本流も支流も放射能ホタル 大高宏充 東京
486号 12 赤紐を林間学校へと通す 小野裕三 神奈川
486号 13 瑠璃蜥蜴この縦横なもの忘れ 門屋和子 愛媛
486号 14 満開のさくら切字のつかいかた 金子ひさし 愛知
486号 15 汝が形見かな月光の花辛夷 北村美都子 新潟
486号 16 日を溜めてどくだみが咲く再起期す 京武久美 宮城
486号 17 桃咲けば闇絢爛と石切場 小長井和子 神奈川
486号 18 人間ぽいねゴーヤあちこちからまった 小林寿美子 滋賀
486号 19 母在れば麦は飴色火吹き竹 小林まさる 群馬
486号 20 喪に服す一村ありて山開き 佐藤鎮人 岩手
486号 21 草木瓜の花胸熱く八十路なり 篠田悦子 埼玉
486号 22 吾の歳や一茶は死んで蛙鳴く 霜田千代麿 北海道
486号 23 もう田植え終えたかチェンバロ奏者 新宅美佐子 愛媛
486号 24 人の背は瀬音に黙し黄せきれい 鈴木修一 秋田
486号 25 金星過るいのちのかたち人や蜘蛛 鈴木康之 宮崎
486号 26 手で隠すものに感情竜の玉 芹沢愛子 東京
486号 27 書くという小さな疲労バラが咲く 高山紀子 秋田
486号 28 折り鶴も解けば紙片震災忌 瀧 春樹 大分
486号 29 沢蟹や宴のような島の雨 田口満代子 千葉
486号 30 春隣黄河の音に我の音 董 振華 中国
486号 31 本能は水に映れりほうたる 野崎憲子 香川
486号 32 夏の川老人やおら水切りす 平山圭子 岐阜
486号 33 器量とは勁さのしなり柳に芽 廣島美恵子 兵庫
486号 34 ひとりとはこの世にひとり芹の花 水野真由美 群馬
486号 35 朝掘りのたけのこ縄文土器と有り 茂里美絵 埼玉
486号 36 原発なくとも蝶の寝息と暮らす 柳生正名 東京
486号 37 苔の花まとひ淋しく寄せ墓に 安井昌子 東京
486号 38 新樹光一管のごと水飲みくだす 山本 勲 北海道
486号 39 夜の雲の愚かに白しニセアカシア 柚木紀子 長野

487号 1 素麺を啜る母似の悪い癖 阿木よう子 富山
487号 2 風をためて母の門火は花のよう 飯島洋子 東京
487号 3 意地張るごと桑の実甘し村の跡 石川和子 栃木
487号 4 笑うなよ石山を切り開く歓喜 伊地知建一 茨城
487号 5 ぼうふらやどこにでもすぐ腰下ろす 伊藤 歩 北海道
487号 6 感情のくぐもり朝のかたつむり 伊藤淳子 東京
487号 7 語部は吾が身語らず栗の花 宇川啓子 福島
487号 8 父にまた鳥の影添う茅の輪かな 榎本祐子 兵庫
487号 9 麦秋や島に屈葬ゆえなくあり 大西健司 三重
487号 10 永訣の水に小さき牛蛙 大野泰司 愛媛
487号 11 植田残照神々しき母の皺 加藤昭子 秋田
487号 12 熱帯魚水飲んで寝る老ふたり 門屋和子 愛媛
487号 13 梅雨のマスト夢の大方は揺れる 柄沢あいこ 神奈川
487号 14 蟻の道長くて誰か叫喚す 刈田光児 新潟
487号 15 人撮りて暗き男やアマリリス 木下ようこ 神奈川
487号 16 ぽっぺんぺこぺこあやに哀しき人だかり 栗村 九 千葉
487号 17 転々と連綿と生ききたりて夏 小林一枝 東京
487号 18 捨て畑は蛇の王国人は老い 佐藤鎮人 岩手
487号 19 御見舞の風鈴なんと耳障り 柴田和江 愛知
487号 20 白桃すする原発爆発の幻聴 清水茉紀 福島
487号 21 牛蛙妻に親しく夕星あり 関田誓炎 埼玉
487号 22 遠い雷鳴園児五人に母五人 長島武治 埼玉
487号 23 どこまでも青田や鋲など打ってない 丹生千賀 秋田
487号 24 白蛇ゆく猛烈にゆく源流へ 野崎憲子 香川
487号 25 山中や蛇の眼光を景色とも 疋田恵美子 宮崎
487号 26 かまきり生まる温く曖昧な家 藤江 瑞 神奈川
487号 27 静かな湾の遠花火地は記憶せり 藤野 武 東京
487号 28 八手若葉過激な婆を目指すかな 堀 真知子 愛知
487号 29 水無月の夜汽車から見た流離の木 堀之内長一 埼玉
487号 30 風蘭の傍歩いてゆく恋や 三井絹枝 東京
487号 31 沙羅落花水の音激しくなる 宮坂秀子 長野
487号 32 鮎かがやく運命的って具体的 宮崎斗士 東京
487号 33 天仰ぐ死者に青田の真直ぐなり 武藤暁美 秋田
487号 34 萍のああじれったい男かな 武藤鉦二 秋田
487号 35 青蚊帳にふわっと消えるからだかな 茂里美絵 埼玉
487号 36 祖を思うわれは薄暑に寝返りを打つ 森央ミモザ 長野
487号 37 六匹の蟻が軍手に篤くたかる 矢野千代子 兵庫
487号 38 緑風の谷に生きをり最晩年 山岡千枝子 岡山

488号 1 敗戦忌高さの違う窓に人 有村王志 大分
488号 2 被曝樹へこの坂下る葉月かな 石川まゆみ 広島
488号 3 そうめん流しわが確信の薄濁る 石田順久 神奈川
488号 4 落蝉と落蝉の距離近すぎる 泉 尚子 熊本
488号 5 浮くという在り方黒苺つぶしながら 上原祥子 山口
488号 6 涙もろい母よ微震よ明易し 榎本愛子 山梨
488号 7 星祭おつりのやうな日々と言ふ 小川久美子 群馬
488号 8 向日葵の闇の底まで被曝せり 小沢説子 神奈川
488号 9 額より幼にもどる白雨かな 狩野康子 宮城
488号 10 空蝉のぎゅっと抱いてる抱き枕 川崎千鶴子 広島
488号 11 鞠突きに儚い性のかおりする 菊川貞夫 静岡
488号 12 浦上のどこ曲っても八月九日 木村宣子 長崎
488号 13 ほがらかに覚めれば夏は無精髭 京武久美 宮城
488号 14 向日葵が我だけを見るスリルかな 河野志保 奈良
488号 15 茄子の花きのうと同じ人と逢う 児玉悦子 神奈川
488号 16 刃こぼれのよう魚眼レンズに稲びかり 小長井和子 神奈川
488号 17 蚊がふたつ石垣りんさんの顔あり 小林一枝 東京
488号 18 見舞いの妻十ほど欠伸して帰る 今野修三 東京
488号 19 流氷にうつむき髪を洗うなり 斉木ギニ 千葉
488号 20 稲の花父のさむそうなネクタイ 佐々木 宏 北海道
488号 21 被曝して蝉声林立果てもなし 清水茉紀 福島
488号 22 抜け殻は見えず噂のやまかがし 高木一惠 千葉
488号 23 パソコンの指示の恐ろし冷房裡 田浪富布 栃木
488号 24 ポリープがたちはだかるよ行々子 田村勝美 新潟
488号 25 壁に火蛾奥に武器売る男たち 月野ぽぽな アメリカ
488号 26 八月や骸となりしものあまた 中尾和夫 宮崎
488号 27 米寿まだ水切り遊び負けたくない 長島武治 埼玉
488号 28 水着着て十指多しと思わんか 中村孝史 宮城
488号 29 看板に畑と案山子貸します 中村真知子 三重
488号 30 蛇が行き人間行き大賀蓮開花 野田信章 熊本
488号 31 死者生者どちらがかなし茄子の花 前田典子 三重
488号 32 図書館できらきらする子青葡萄 宮崎斗士 東京
488号 33 艶話のようには死ねぬ夕かなかな 武藤鉦二 秋田
488号 34 言葉にも運動神経あめんぼう 室田洋子 群馬
488号 35 銀やんま近づく我を寂しがる 森央ミモザ 長野
488号 36 羽音澄む蜻蛉も十字懸垂も 柳生正名 東京
488号 37 鬱蒼と東京暮らしや南瓜煮る 安井昌子 東京
488号 38 授乳の汀しずかに被曝の波寄せる 若森京子 兵庫

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