金子兜太選 海程秀句」鑑賞 
2010年目次

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作者名
地域 

一つ蝶追うも追わぬも捨て聖

相原澄江 愛媛
459号 2 怜悧であること青瓢箪長きこと 阿保恭子 東京
459号 3 荒縄に露のるいるい魄のことなぞ 飯土井志乃 滋賀
459号 4 流れ星黒板キィーと鳴かせたり 石田順久 神奈川
459号 5 卒爾ながらえんまこおろぎ鳴いており 伊地知建一 茨城
459号 6 これ位の月なら猫の重さかな 大高俊一 秋田
459号 7 戦は嫌い秩父夜祭り待つばかり 金井 充 埼玉
459号 8 いつまで昭和の葦でいるの兄さん 岸本マチ子 沖縄
459号 9 川であることと断絶滝落下 北村美都子 新潟
459号 10 青葉木菟樹海は覚めて大河かな 小林一村 福井
459号 11 人や家畜に稔る静かを散居かな 小堀 葵 群馬
459号 12 この道は夕焼けに毀されている 佐孝石画 福井
459号 13 ナルキッソスの微笑ヒレナガニシキゴイ 柴田美代子 埼玉
459号 14 蓖麻は実にまひるの星座まうしろに 清水 伶 千葉
459号 15 触ってみれば私の骸骨小さめです 釈迦郡ひろみ 宮崎
459号 16 新米に麦少し入れ仲良きかな 高木一恵 千葉
459号 17 死ぬまで戦後秋冷へ割木積む 瀧 春樹 大分
459号 18 ナマハゲの面を飾って稲を刈る 館岡誠二 秋田
459号 19 新松子姉が拗ねたりわらったり 田村勝実 新潟
459号 20 産まざりし子には名の無し夏燕 土屋寛子 神奈川
459号 21 旅に出て魚影のような秋の私語 董 振華 中国
459号 22 稲架中退八甲田山で全滅せり 徳才子青良 青森
459号 23 即物的な市民祭のあかとんぼ 中村孝史 宮城
459号 24 蒟蒻玉に裏表なし山の守 中山蒼楓 富山
459号 25 釣瓶落しこの位置は譲れない 野崎憲子 香川
459号 26 土にとけ芋虫と婆生き生き 長谷川育子 新潟
459号 27 飛魚や屋久島すっぽり洗われて 林 壮俊 東京
459号 28 ふんわりと秋の皮膚感いりたまご 廣島美恵子 兵庫
459号 29 小鳥来る草をくわえている老人 堀之内長一 埼玉
459号 30 現在地不明の森に毒茸 三田地白畝 岩手
459号 31 脱ぎ捨てのパジャマ夏くる男鹿半島 武藤暁美 秋田
459号 32 夾竹桃はるかはらから波頭 村上友子 東京
459号 33 啄木鳥や言い張る時の首太し 室田洋子 群馬
459号 34 さくらんぼ明るい水底だってある 森里美絵 埼玉
459号 35 山僧と穴惑卵呑みし顔 柳生正名 東京
459号 36 静原の稲架のたかさの返歌かな 矢野千代子 兵庫
459号 37 澄極み水の齢のなかりけり 柚木紀子 長野
459号 38 原爆忌静かな雨に傘湧けよ 吉川渓美 埼玉
459号 39 白底翳あの夕顔のひらきしまま 若森京子 兵庫

460号 1 黄落は目薬の木と覚えおり 阿川木偶人 東京
460号 2 竜胆は小さな裏切りと似ている 油本麻容子 石川
460号 3 水澄めり直に響いて人声は 伊藤淳子 東京
460号 4 橋裏や小春の亀と吾が破顔 岩佐光雄 岐阜
460号 5 白露かわれかまろんで産土へ 大上恒子 神奈川
460号 6 小鳥来る僕らの痩せる日常へ 大野泰司 愛媛
460号 7 帰る燕還らぬ義兄はまだルソン 岡崎万寿 東京
460号 8 ストローの不覚の音や秋薔薇 奥田筆子 京都
460号 9 石蕗咲いて記憶の中をさっさと歩く 加地英子 愛媛
460号 10 てのひら涸らし今ゆく姉に鳥渡る 川田由美子 東京
460号 11 鳥渡るもの動かせば鈴の音 河西志帆 長野
460号 12 躁という爆発音を抱えて冬 岸本マチ子 沖縄
460号 13 りんご摺る指に深夜の漫ろ神 草野明子 埼玉
460号 14 牛膝お伽話にくっついて 久保智恵 兵庫
460号 15 楽しさよ高く残った柿の実の 河野志保 奈良
460号 16 立冬のタオルのようにうたたねす こしのゆみこ 東京
460号 17 秋茄子腕の静脈地図に似て 小長井和子 神奈川
460号 18 手話で告ぐ天高々と深きこと 佐々木昇一 秋田
460号 19 言い訳の才槌頭かりんの実 塩谷美津子 福井
460号 20 陽が落ちて猪起きてくる山の秋 篠田悦子 埼玉
460号 21 オリオン流星群アフガン自爆者は見たか 杉崎ちから 愛知
460号 22 魚たちが海を耕す十三夜 鱸 久子 埼玉
460号 23 萱刈りに入る縊死の樹あり淋し 瀬戸 密 北海道
460号 24 睡蓮の池が市場のようであり 竹内義聿 大阪
460号 25 雁渡し父さんのような丸木橋 竹田昭江 東京
460号 26 紅葉のごとくに声の強い人 谷 佳紀 神奈川
460号 27 なぜにわれ癌病棟に秋刀魚賞づ 中島偉夫 宮崎
460号 28 矢車草コーヒーがにがてです 中田里美 東京
460号 29 秋燕や水が水呼ぶように握手 中村 晋 福島
460号 30 綿虫や狼の毛まぎれ込む 平山圭子 岐阜
460号 31 渡りきて四日目ほどの鳥の貌 前田典子 三重
460号 32 霧深し山ふところの赤子かな 松山登美子 福井
460号 33 一夜汲み二夜風汲み花すすき 三井絹枝 東京
460号 34 夕焼が恐いのです五十肩 宮坂秀子 長野
460号 35 紅葉かつ散る軽く首曲げストレッチ 室田洋子 群馬
460号 36 冬の蝿逐ふこと玉子立てること 柳生正名 東京
460号 37 日々たのし赤き魚飼う夫の秋 山岡千枝子 岡山
460号 38 ビルに抱かれて海の音聞く清掃夫 與儀つとむ 沖縄
460号 39 一茶忌や雀のあそぶ土もなし 若林卓宣 三重

461号 1 煮凝りや逝きて岳父の戦後果つ 有村王志 大分
461号 2 初しぐれ猫背の影をはしらせる 市原正直 東京
461号 3 鉛筆はまだ降り出さぬ雪を書く 稲田豊子 福井
461号 4 鹿の尻白く誘う時雨暗 井上湖子 群馬
461号 5 すす逃や老人手帳ふところに 上野昭子 山口
461号 6 老人と少年餅搗く旅の果 大谷昌弘 千葉
461号 7 薄氷を真上から見る真顔かな 小野裕三 神奈川
461号 8 鶲啼くきっと小さな喉仏 柏原喜久恵 熊本
461号 9 生意気な言葉の果ての海鼠かな 川崎益太郎 広島
461号 10 わが去なば詩語馥郁と冬渚 木村幸平 新潟
461号 11 大きくていつも冷たき花屋の手 金並れい子 愛媛
461号 12 みしらぬ岸を崖と名づけて旅つづく 斉木ギニ 千葉
461号 13 恐竜展猫背のわたしに雪が降る 坂本蒼郷 北海道
461号 14 置きざりの昨日の射程木の実降る 佐々木義男 福井
461号 15 短日や僧の母上畑に翳 篠田悦子 埼玉
461号 16 ゆりかもめそっと一礼したような 下山田禮子 埼玉
461号 17 抗えない闇なら添うよ不眠でも 釈迦郡ひろみ 宮崎
461号 18 直会や猪の生首薄目あけ 鈴木康之 宮崎
461号 19 日めくりの痩せて狐につままれる 高田ヨネ子 愛媛
461号 20 山桑黄葉流星のごと旅にねむる 高橋一枝 埼玉
461号 21 人の死やほんに冷たき水あげる 竪阿彌放心 秋田
461号 22 大根引き尻餅搗きし大正人 丹後千代子 福井
461号 23 煮凝りや家出のように家に居て 月野ぽぽな アメリカ
461号 24 谷底に牝鹿光陰の雫です 津谷ゆきえ 岐阜
461号 25 冬至南瓜日向で爆発し損なう 長嶋武治 埼玉
461号 26 冬月や悪事をせぬに家遠し 中村孝史 宮城
461号 27 寒月光気管に入りぬさきみたま 中村裕子 秋田
461号 28 毒茸七つも生えて妙な家 中山蒼楓 富山
461号 29 不断念仏とは秋猿の毛づくろい 野田信章 熊本
461号 30 じいさんの背中ほんのり梟啼くと 平井久美子 福井
461号 31 十月や影みな知恵のあるごとし 平田 薫 神奈川
461号 32 着ぶくれの腕組む父もいて反戦 平塚幸子 神奈川
461号 33 退院は永劫めきて師走かな 広瀬輝子 栃木
461号 34 雲好きの林好きなり護憲論 松本文子 栃木
461号 35 花火見るたびウンチする赤子かな マブソン青眼 長野
461号 36 少年よ今踏んだのは鴨の声 三浦二三子 愛知
461号 37 こころのかたち赤蕪を厚く切る 武藤暁美 秋田
461号 38 白鳥は附 大工道具館 矢野千代子 兵庫
461号 39 電車待つ下着のようなマスクして 矢野美与子 東京

462号 1 竹馬や遂に変らぬ二枚舌 阿川木偶人 東京
462号 2 うたてやな冬バラのツルもてあます 阿久沢達子 群馬
462号 3 自分史は自虐の記憶白鳥来 足利屋篤 群馬
462号 4 老いらくとおいらん並ぶ春の辞書 石上邦子 愛知
462号 5 麦踏みのうしろの小言昼の月 一ノ瀬タカ子 東京
462号 6 蜘蛛の囲のなべて大きな限界集落 宇川啓子 福島
462号 7 自然なり西に満月初日の出 岡崎万寿 東京
462号 8 クリオネの羽搏きほどの更年期 奥山和子 三重
462号 9 野良猫のライオン歩き雪来るか 木暮洗葦 新潟
462号 10 櫟林の先が見え出す冬が好き 柏原喜久恵 熊本
462号 11 自画像に最も似合う雪降り来 刈田光児 新潟
462号 12 松ぼくり拾う独りの縄文期 川本洋栄 大阪
462号 13 正座して身体ひとつ鮭一切れ 北村美都子 新潟
462号 14 負け独楽を小鳥のように持ち帰る 木村和彦 神奈川
462号 15 はにかめばやわらかな闇冬座敷 京武久美 宮城
462号 16 雪明り読経は走る絵巻かな 小林一村 福井
462号 17 顔剃られいて雪ぐにのしろさ想う 小林一枝 東京
462号 18 いくたびも初日に融かす鬱なりし 小柳慶三郎 群馬
462号 19 城一つ白葱ほどに洗われて 鮫島康子 福岡
462号 20 だんまりに似た仄暗さ白山茶花 篠田悦子 埼玉
462号 21 山行者乾鮭しゃぶり子沢山 鈴木八駛郎 北海道
462号 22 がばっと起つえいざん北のおいらくよ 高沢竹光 滋賀
462号 23 寒満月ぶどう畑はどの辺り 田口満代子 千葉
462号 24 息絶えし馬を焚火のごと囲む 田中亜美 神奈川
462号 25 母に添い寝雪の深井戸のぞくよう 月野ぽぽな アメリカ
462号 26 雪国に雪降り人の囁くや 遠山郁好 東京
462号 27 マチュピチュに在るごとく座す蒲団かな 中島偉夫 宮崎
462号 28 牡蠣のある静物描く重たい白 藤江 瑞 神奈川
462号 29 除夜篝頬熱くしてわれは旅人 堀真知子 愛知
462号 30 折角のまんまるの薄氷を落す 真島貞子 大阪
462号 31 雪だるまにおっぱい作れと泣く児かな マブソン青眼 長野
462号 32 鏡中の我にうっとり嫁が君 三浦二三子 愛知
462号 33 天狼星ぼんやり目覚めている原稿 茂里美絵 埼玉
462号 34 凍星よとても透明な眩暈 森央ミモザ 長野
462号 35 月山や雪道僧に肩借りし 安井昌子 東京
462号 36 電車待つ下着のようなマスクして 矢野美代子 東京
462号 37 大根干すための十字架立てておる 山口 伸 愛知
462号 38 花八手無邪気な貌かはた白痴か 山本キミ子 富山
462号 39 ばななの皮一本分のばななの皮 横山 隆 長崎

463号 1 冬耕やけむりのようなたたずまい 飯島洋子 東京
463号 2 春の霧野守が軟禁されている 五十嵐好子 東京
463号 3 闇に屈めば心底鬼や鬼やらい 石川青狼 北海道
463号 4 影たちの困惑斑雪野にひろがって 上原祥子 山口
463号 5 冬来たりなば白バイに追い越さる 宇田蓋男 宮崎
463号 6 旅行けば老婆が一人泥鰌掘る 大谷昌弘 千葉
463号 7 横顔の白鳥に似て淋しかり 門屋和子 愛媛
463号 8 三寒四温自転車という翅がある 木村和彦 神奈川
463号 9 押入れに鬼の領分太郎月 京武久美 宮城
463号 10 ある朝の空の容です破れ蓮 久保智恵 兵庫
463号 11 峠に一礼ほうほうと兎狩 小池弘子 富山
463号 12 臘梅は旅の日暮に出合う花 坂本春子 神奈川
463号 13 額とは淋しい面積寒の聖堂 猿渡道子 群馬
463号 14 卒業や廊下響かせ指鳴らし 清水 瀚 東京
463号 15 白鳥の物語せんと湖暗む 鈴木幸江 滋賀
463号 16 即起する夫たたえて春暁や 鈴木玲子 兵庫
463号 17 老斑か豹紋か枇杷の種飛ばす 高橋たねを 香川
463号 18 関取のマスク小さし枇杷の花 田口満代子 千葉
463号 19 さつと風花海洋型の男なり 武田美代 栃木
463号 20 梨腐るやうなる鬱をサルトルも 田中亜美 神奈川
463号 21 冴え返る白髪は私の楽器です 峠谷清広 埼玉
463号 22 ひとりごつ癖寒波にも仏にも 中尾和夫 宮崎
463号 23 土筆さえ深く呼吸する体なるに 中島偉夫 宮崎
463号 24 落椿猪の骸でとまりけり 野崎憲子 香川
463号 25 喪にあれど正月の貌写楽かな 長谷川順子 埼玉
463号 26 翼端に脊梁折りこむバイカルよ 福富健男 宮崎
463号 27 貧しさや顔に焼野の光り少し 藤野 武 東京
463号 28 金縷梅や夫を捜していたのです 本田ひとみ 福島
463号 29 どの道も家路ではなし花杏 水野真由美 群馬
463号 30 逆光のラガーの白き前歯かな 三松玲子 神奈川
463号 31 冬浪なり烏賊墨のぶっかけ飯 武藤鉦二 秋田
463号 32 白鳥の圧倒的な表面張力 村井 秋 神奈川
463号 33 如月よ星抱く野辺はまだ無言 森央ミモザ 長野
463号 34 象の居た後の日溜り二月来る 守谷茂泰 東京
463号 35 旅寝かな水鳥の羽藻にからむ 安井昌子 東京
463号 36 如月や陽を漉き込んで農に老ゆ 山口 伸 愛知
463号 37 なかんづく仮面のひかり里神楽 柚木紀子 長野
463号 38 雪催い忘却というけじめあり 渡部陽子 宮城

464号 1 鳥の巣やふと手のひらの水たまり 伊藤淳子 東京
464号 2 炭窯は山を離れず父は亡し 稲葉千尋 三重
464号 3 春のからだ無畏の軌道を描きをり 上原祥子 山口
464号 4 春あけぼのを猫が見ている不思議かな 大口元通 愛知
464号 5 恐山亀のこうらを団扇にす 大高俊一 秋田
464号 6 如月の鷹を熊野と呼びにけり 大西健司 三重
464号 7 跳び箱を二人で運ぶ遅日かな 小野裕三 神奈川
464号 8 白魚の言葉遊びのよう些些と 黒岡洋子 東京
464号 9 大地さがして背なの子が反り返る 木暮洗葦 新潟
464号 10 存らへて春あり橋の反り美し 小林一枝 東京
464号 11 一晩中鶴を通して鏡曇る 斉木ギニ 千葉
464号 12 地を頼り水澄むおもい素朴かな 篠田悦子 埼玉
464号 13 打てば響いて産土に椎の実落つ 志摩京子 東京
464号 14 山脈や朧をひきて長生す 清水喜美子 茨城
464号 15 土筆出て世間は薄い日光写真 清水 瀚 東京
464号 16 蜃気楼轍の先の温き家 鱸 久子 埼玉
464号 17 メモリーといってしまおう春の雪 鈴木佑子 東京
464号 18 鹿が覗いてゆきし巨岩に蝌蚪生る 関田誓炎 埼玉
464号 19 川上へ翔ぶ鷹白髪が増えたな 瀬戸 密 北海道
464号 20 土の匂いのシベリアタイガー薄目にて 十河宣洋 北海道
464号 21 燕来る男鹿の漁師の大法要 館岡誠二 秋田
464号 22 御仏にちょこんと菫いつもかな 谷 佳紀 神奈川
464号 23 椿浄土や春雪のただ中や 田村勝実 新潟
464号 24 鳥雲に躰にごっていたりけり 中村裕子 秋田
464号 25 老いは鬱日がな穿る啓蟄の穴 成田恵風子 福井
464号 26 涅槃図の端数のように座りたる 丹生千賀 秋田
464号 27 逝く夫の灯があかぎれのように痛い 浜 芳女 群馬
464号 28 持ち帰る湖の木片雛の家 日高 玲 東京
464号 29 母方は頬高なりし草の餅 古舘泰子 東京
464号 30 雪解けぬロッキーの襞まさに黒 ホーン喜美子 カナダ
464号 31 号泣の夫よミモザの花房よ 本田ひとみ 福島
464号 32 四月一日馬が瓦ごとごとと 前田保子 神奈川
464号 33 初燕白いクルスへ真っ直ぐに 松本ヒサ子 愛媛
464号 34 もうすぐ桜鏡に映るたび泣く子 宮崎斗士 東京
464号 35 雨の粒空が逆さに落ちていく 村松恵理奈 神奈川
464号 36 地に殉教宙に毛深き蝶の貌 柳生正名 東京
464号 37 右耳の悲し鳴りをり温める 山岡千枝子 岡山
464号 38 朝日さす真っ只中山笑う 山本逸夫 岐阜
464号 39 ともす灯の匂い遺りし踏絵かな 吉川真実 東京

465号 1 青き踏む人間無冠の力かな 有村王志 大分
465号 2 ブオーと霧笛首を牽引されている 石川青狼 北海道
465号 3 夏来たる男の口の半開き 伊地知建一 茨城
465号 4 春雷を遠い山河と思いおり 市野記余子 埼玉
465号 5 花は葉に言葉を口にする不安 伊藤淳子 東京
465号 6 月と日と吾のなす初夏の三角形 江良 修 長崎
465号 7 水光りへとほぐれる民の田植かな 大野泰司 愛媛
465号 8 昭和の日曇って飴色バイオリン 加川憲一 北海道
465号 9 豆飯や箸も刀も一文字 門脇章子 大阪
465号 10 地をつかむ春の雨地の灯しかな 川田由美子 東京
465号 11 夜泣石もうすぐ麦の熟れる村 河原珠美 神奈川
465号 12 雲雀あがるわれのさみしさわれにかえし 京武久美 宮城
465号 13 楡よ租は海より仆れくるものを 九堂夜想 神奈川
465号 14 乳房張る田水張るごとほとばしる 久保恵美子 福井
465号 15 新樹等は空を歩いていたのです 佐孝石画 福井
465号 16 わらび煮てまた山へゆく女ども 白井重之 富山
465号 17 母の日や獣のごとく子を抱きし 鈴木幸江 滋賀
465号 18 わらびぜんまい一存では鳥になれない 十河宣洋 北海道
465号 19 母の日や夫怒らすも母ゆずり 高木一恵 千葉
465号 20 日本狭しカーネーションのセロハン解く 瀧村道子 岐阜
465号 21 早き瀬に自分確かめ春の祭り 遠山郁好 東京
465号 22 花満開いつも無口な樹の力 永井 幸 福井
465号 23 サックスよりあふれでてくるひなあられ 中尾和夫 宮崎
465号 24 おとうとは風かもしれぬ鶴帰る 永田タヱ子 宮崎
465号 25 おぼろですが道まっすぐに水の地平 中村加津彦 長野
465号 26 蝶々の顔おそろしき日暮れかな 蓮田双川 茨城
465号 27 鈍なればこその漂泊蝸牛 福原 實 神奈川
465号 28 こころという梟のわが老年記 北條貢司 北海道
465号 29 還暦や我もろもろの芽を食みて 本田ひとみ 福島
465号 30 まむし草漢ふたりが見せに来る 前田典子 三重
465号 31 郭公来と告げて寂しき身繕い 眞下素子 茨城
465号 32 青き踏む身の丈五尺五寸にて 松本悦子 東京
465号 33 子のなきを独というらし青き踏む 水野真由美 群馬
465号 34 辛夷の花筆談たまに大きなマル 宮崎斗士 東京
465号 35 片腕は天空にかけ豆の花 宮里 晄 沖縄
465号 36 種袋ひらく歯切れよき嫁よ 武藤暁美 秋田
465号 37 鋤く母のおかしくも小粒雲雀かな 山本 勲 北海道
465号 38 ほら穴は暗算のよう花吹雪 渡部陽子 宮城

466号 1 着こなしの良さも茅花を流すとや 相原澄江 愛媛
466号 2 洗い張りする母の背に草矢かな 新井姪子 埼玉
466号 3 さめやらぬ青大将のごろんかな 石川義倫 静岡
466号 4 新じゃがを煮る眉山に眉を寄せ 市原光子 徳島
466号 5 句敵やそれとも寝ずのほととぎす 上野昭子 山口
466号 6 おとうとは河童の頭象の尻 大西政司 愛媛
466号 7 侍をたくさん噴いて弥生山 小野裕三 神奈川
466号 8 ふる雪のとほいところにしんぶんし 加納百合子 奈良
466号 9 御不浄につばめが来ますまほろばは 河原珠美 神奈川
466号 10 孑孑や一切水光省略する 久保智恵 兵庫
466号 11 過去という絶対の上の昼寝かな 黒岡洋子 東京
466号 12 天牛よ“いづち昔の人や去りけむ” 小林一枝 東京
466号 13 皐月に入るわれ娘を産みし日なり 小松京華 神奈川
466号 14 平凡とは丸いおにぎり森林浴 篠田悦子 埼玉
466号 15 生きること生きて在ること野鶏頭 柴田和江 愛知
466号 16 青田あおし柩はしろし村の西 白井重之 富山
466号 17 若き林檎若き小豚が食べ終る 末永有紀 福島
466号 18 鰹一本ノーネクタイの背広で来 高木一恵 千葉
466号 19 泣くものに勝ってどうする茄子植える 高桑婦美子 千葉
466号 20 蚊遣火の消えて芭蕉の生家かな 田口満代子 千葉
466号 21 くちなはと人売られゆく晩夏かな 田中亜美 神奈川
466号 22 みぞおちは破船の昏さ草いきれ 月野ぽぽな アメリカ
466号 23 休耕田われ泣きぬれて田となれり 徳才子青良 青森
466号 24 伊勢参り飛魚の目線で湾渡る 中島偉夫 宮崎
466号 25 みみずなくかの方丈記あたりまで 中田里美 東京
466号 26 二杯酢で海鞘食べるため洗顔す 中村孝史 宮城
466号 27 ひかりとは盗賊かもめ母を拭く 中村裕子 秋田
466号 28 鏡面のかまきり昏む捨田かな 根岸暁子 群馬
466号 29 マスクして祖父はうなずく馬である 橋本和子 長崎
466号 30 ゆとりとは土替えること半夏生 平塚幸子 神奈川
466号 31 枇杷むくやかりそめの世もみずみずし 堀之内長一 埼玉
466号 32 黒揚羽庭にピアノのある如し 舛田 長崎
466号 33 六月の背広に古きティッシュかな 松本勇二 愛媛
466号 34 水替えて目高に独り善がりかな 丸木美津子 愛媛
466号 35 そのままぼおつと泣きし風知草 三井絹枝 東京
466号 36 太陽の毛先がうなじに噛り付く 村松恵理奈 神奈川
466号 37 清貧や初蝶吾と塀の中 安井昌子 東京
466号 38 夏の波私の足跡食べつくす 山岸てい子 埼玉
466号 39 春愁い目に余るほど自己愛しけり 横地かをる 愛知

467号 1 鳥なべて低きくもり日麦の秋 飯土井志乃 滋賀
467号 2 初夏の黄河という名の赤ん坊 井手郁子 北海道
467号 3 言葉とか雨は滲んで黒揚羽 伊藤淳子 東京
467号 4 降る火山灰に茄子一輪の花かがやく 今福和子 鹿児島
467号 5 夏の星伯母はとぼけて白寿かな 宇野律子 神奈川
467号 6 片耳の聞こえぬボクサー夏の星 榎本愛子 山梨
467号 7 退屈な犬に嗅がれて蝸牛 榎本佑子 兵庫
467号 8 わが脳髄のジャズ涸らすなよ青水無月 大高宏充 東京
467号 9 放馬そのたてがみ蛍の火にさらす 大西健司 三重
467号 10 十月は父の忌父似の仏さま 小川久美子 群馬
467号 11 血筋だと道筋だのと柿青し 門脇章子 大阪
467号 12 鉄線花の蔓さき脳に近付きぬ 川村三千夫 秋田
467号 13 鳳梨に口角上ぐる寂しさあり 木下ようこ 神奈川
467号 14 初蝉やごはんの白さばかりです 小池弘子 富山
467号 15 夏の山知ってる石に手を乗せて 河野志保 奈良
467号 16 驟雨来て下野薬師寺立つ如し 五島高資 栃木
467号 17 求人欄蝦夷梅雨らしきものの降る 佐々木宏 北海道
467号 18 男梅雨緑野を目指す舟ありて 佐藤美紀江 千葉
467号 19 シェフのよう香魚ひんやり横たえて 猿渡道子 群馬
467号 20 木槿とう気短な花お弔い 柴田美代子 埼玉
467号 21 夏の闇無灯回送列車来る 菅原和子 東京
467号 22 肉を焼く音ひぐらしとなりゆけり 鈴木修一 秋田
467号 23 歯を洗う朝氾濫の河があり 瀧 春樹 大分
467号 24 アンリ・ルソー雨滝なす夜の緑かな 田口満代子 千葉
467号 25 青田のむこう病むひとに添う山の神 田中昌子 京都
467号 26 一よりも淋しきいのち髪洗う 月野ぽぽな アメリカ
467号 27 凝視のごと頬杖をして夏深し 董 振華 中国
467号 28 母逝きて二人静は咲かぬなり 中島まゆみ 埼玉
467号 29 口蹄疫牛屠る夏星雫せよ 野田信章 熊本
467号 30 ずいぶんと言い過ぎた夜のみみず鳴く 長谷川育子 新潟
467号 31 原爆忌乳房が二つあればいい 浜 芳女 群馬
467号 32 文芸や蔵は十分しぐれてる 福原 實 神奈川
467号 33 水彩の反故の重なり麦熟れて 藤江 瑞 神奈川
467号 34 ストッキング脱ぐように剥ぐ烏賊の皮 三木冬子 東京
467号 35 デクノボーたれと裸子抱きあげる 三田地白畝 岩手
467号 36 涼しさに恥ずかしさありいもうと 三井絹枝 東京
467号 37 母と握手ふつうの握手かたつむり 宮崎斗士 東京
467号 38 蛍火や四十手前の寡婦の母 森  鈴 埼玉
467号 39 麦秋のどこまで眠りどこから死 柳生正名 東京

468号 1 木偶と呼ばれT字路に佇つ瓜番よ 新井まり子 京都
468号 2 八月の祈り草木にかぶれた手 井手郁子 北海道
468号 3 向日葵に赤子を高く高く上げ 宇川啓子 福島
468号 4 人の世の方円に水こぼれ萩 梅川寧江 石川
468号 5 閑けさや木の蝉まれに失禁す 大沢輝一 石川
468号 6 軍服の族何人門火焚く 岡崎万寿 東京
468号 7 北信五嶽夭夭の桃懐に 小川久美子 群馬
468号 8 竹夫人われは正室足のせる 奥田筆子 京都
468号 9 炎天の端から端に引越しぬ 小野裕三 神奈川
468号 10 水を撒く身の濁流へ石ころへ 狩野康子 宮城
468号 11 ががんぼの脚がはみだしてならぬ 加納百合子 奈良
468号 12 押し黙る八月六日海の上 川西志帆 長野
468号 13 形見の傘と一緒に茅の輪くぐるかな 河原珠美 神奈川
468号 14 夜の喜雨蓮如のお文来たように 城至げんご 石川
468号 15 他人には褒められる夫夏燕 木村清子 埼玉
468号 16 フィクションに軽いエロスや青蜥蜴 黒岡洋子 東京
468号 17 夏野から雲は流れてゆきにけり こしのゆみこ 東京
468号 18 命終はしろさるすべりの風に 小林一枝 東京
468号 19 蛍火に自意識などはさらさらなし 小林まさる 群馬
468号 20 泣いて勝った妹にも白髪墓参り 小堀 葵 群馬
468号 21 感情の広い林にパセリの家 斉木ギニ 千葉
468号 22 眼の届く中の日盛薬師かな 鈴木孝信 埼玉
468号 23 特攻花ゴルフボールを隠しけり 高木一惠 千葉
468号 24 蝉の殼緑地に拾いベビーカー 竹内義聿 大阪
468号 25 素裸にまどろむ僧の白きこと 堅阿彌放心 秋田
468号 26 群衆や西日に弱味を握られて 峠谷清広 埼玉
468号 27 水中花臓器切ったり繋いだり 中尾和夫 宮崎
468号 28 茄子を焼く底光りするをんな来て 中島偉夫 宮崎
468号 29 目刺し三匹の夕餉最小不幸というか 成田恵風子 福井
468号 30 茎立ちやうかつに他人をなつかしむ 根岸暁子 群馬
468号 31 白桃剥く指あり庇深くあり 日高 玲 東京
468号 32 竹煮草ぐじゅっと昼がやってくる 平田 薫 神奈川
468号 33 辛味大根ちんまりと冷え地下市場 本間 道 新潟
468号 34 山の僧一汁一菜半ズボン 水上啓示 福井
468号 35 涼しさを恥ずかしと言ういもうとよ 三井絹枝 東京
468号 36 竿燈のひかりのクロスワードかな 武藤暁美 秋田
468号 37 小気味よく夏野をよぎる独りである 村上友子 東京
468号 38 自動的に口が開くなり焼きなすび 横山 隆 長崎
468号 39 夕月夜酒の肴の塩浸みる 佳 夕能 富山

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