金子兜太選 海程秀句」鑑賞 
2009年目次

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各号ごとに観賞した順番は〈あいうえお〉順となっています

作者名
地域 

夏霧や記憶とは緑の濃淡

飯島洋子 東京
449号 2 山頂に鷹柱めく男あり 飯土井志乃 滋賀
449号 3 月代に紛れたき夜の化粧かな 石上邦子 愛知
449号 4 もう少しで啄木鳥になる仮眠 市野記余子 埼玉
449号 5 不時着の気球であろう草紅葉 井手郁子 北海道
449号 6 雁や一度は目ざめる真夜であり 伊藤淳子 東京
449号 7 旱魃のビル街にあり皿廻し 岩佐光雄 岐阜
449号 8 馬市の風になりゆく曼珠沙華 大西健司 三重
449号 9 村人のおしゃべりに似て黒つぐみ 加藤青女 埼玉
449号 10 張子の虎と満月を見ていたり 金子ひさし 愛知
449号 11 寂しさに耐へきれぬなり稲妻は 川野欣一 兵庫
449号 12 鷺草と現に翔べる八十路かな 上林 裕 東京
449号 13 短命や弾丸のごとくに蝉は飛び 北川邦陽 愛知
449号 14 渓流が背骨のように神無月 小山やす子 徳島
449号 15 大関の乳首むらさき半夏生 坂本みどり 埼玉
449号 16 独りという確かな躰緑夜です 鮫島康子 福岡
449号 17 鮎跳ねる胡座の中の赤ん坊 猿渡道子 群馬
449号 18 誰も聴く薪割る音の深閑と 篠田悦子 埼玉
449号 19 金婚や二人で黄葉の幹を抱き 清水 瀚 東京
449号 20 どうせ不眠鳴けよ鳴け夜の虫 釈迦郡ひろみ 宮崎
449号 21 雁渡しぎいんと言葉カーブする 白石司子 愛媛
449号 22 よく晴れて日向が重し榠の実 高橋 碧 群馬
449号 23 名刀展見てみちのくの早い冬 舘岡誠二 秋田
449号 24 命日や蛇足なかりしなめくじら 永田タヱ子 宮崎
449号 25 秋比叡湖から歩いて来た青年 野田信章 熊本
449号 26 だまし絵の浮遊感なり昼寝覚め 野原瑤子 神奈川
449号 27 曼珠沙華みて飲食にもどりけり 蓮田双川 茨城
449号 28 猫背なり刈田の二人越後人 長谷川育子 新潟
449号 29 曼珠沙華母を支えきし軍手 浜 芳女 群馬
449号 30 山鳥がほろりと啼いた子蟹が逃げた 平井久美子 福井
449号 31 渦状星雲のような幼童燕来る 藤井清久 東京
449号 32 色鳥よ木々と話すも酔余のこと 堀之内長一 埼玉
449号 33 風吹くごと揺れる友人更待月 三井絹枝 東京
449号 34 葡萄青し一人で開く鶴の本 水野真由美 群馬
449号 35 待つことも励まし試歩に青葉冷ゆ 安井昌子 東京
449号 36 視野のどこか山蟻なんとにぎやかな 矢野千佳子 神奈川
449号 37 世を待つや星荘厳露荘厳 柚木紀子 東京
449号 38 ぶッつかり蟻ぶッつかりぶッつかり 横山 隆 長崎
449号 39 銀やんま銀の運び屋のまなざし 若森京子 兵庫

450号 1 雲井より黒丑曳きて初春に候 足立あい 東京
450号 2 青ぎんなん感情握りしめたまま 伊藤淳子 東京
450号 3 秋の雷夜さりの雨を連れ廻す 伊藤はる子 秋田
450号 4 蜂の仔喰うて愛の荒廃思ひけり 上原祥子 山口
450号 5 末枯れやお菓子の時間そっとある 榎本祐子 兵庫
450号 6 秋情虫のかたちの少女たち 大沢輝一 石川
450号 7 鶴渡る被爆の楠の真上かな 緒方 輝 東京
450号 8 抱いて寝る山霧の子の柔らかさ 奥山和子 三重
450号 9 晩秋美し手紙のような手を出して 兼近久子 大阪
450号 10 梅漬けて豆煮る母を無職という 河西志帆 長野
450号 11 降るだけのあそびこんなに木の実かな 河野志保 奈良
450号 12 良い音で障子開ければ母御在す 狩野康子 宮城
450号 13 相逢わぬ鳥にも人にも花野は黄 川本洋栄 大阪
450号 14 まるでシャガール大黄落の中をゆく 岸本マチ子 沖縄
450号 15 九頭竜に足かけ霧の曲り角 小林一村 福井
450号 16 雁渡し薄暮の端に父の杖 下山田禮子 埼玉
450号 17 吹雪くかな全てに僕等苛立ちながら 白石司子 愛媛
450号 18 秋の蟻やたらに首を回しおり 高桑弘夫 千葉
450号 19 秋の婚神鏡何も写さざる 高橋 碧 群馬
450号 20 道鏡に巨根の逸話猪が出る 瀧 春樹 大分
450号 21 かりそめの頸持つわれら独楽を打つ 田中亜美 神奈川
450号 22 弟は母の声ですおみなへし 津谷ゆきえ 岐阜
450号 23 混浴のよう満山万野紅葉して 董 振華 中国
450号 24 夜の秋人はしゃがんで考える 永井 幸 福井
450号 25 ああ風が出てきたいちめんの十月 中田里美 東京
450号 26 葱刻むトルコマーチをゆつくりゆつくり 中原 梓 埼玉
450号 27 落日しかし海が終わったわけでもない 中村加津彦 長野
450号 28 嫌いです蔓菜お浸し迷彩服 中村孝史 宮城
450号 29 石蕗の花岩は真黒の芯を抱く 仁田脇一石 宮城
450号 30 おしゃべりは唾濃し晩秋路白し 橋本和子 長崎
450号 31 霜降や夫の辺にいて書は孝子 廣嶋美惠子 兵庫
450号 32 緋鯉真鯉ぶつかりあって綾の響 福富健男 宮城
450号 33 老いは内乱とめどなき黄落に佇つ 眞下素子 茨城
450号 34 戦跡は花野たり得ず海茫茫 宮里 晄 沖縄
450号 35 葱折れぬように転びし男かな 武藤鉦二 秋田
450号 36 まんじゅしゃげ白い石から拾われる 茂里美絵 埼玉
450号 37 綿虫遊ぶ 一重瞼のまま遊ぶ 森央ミモザ 長野
450号 38 水澄むや漢の澄みのただならぬ 柚木紀子 東京
450号 39 栗食めばわが身絵本の中にあり 吉村伊紅美 岐阜

451号 1 冬林檎僕ら断片的に原色 油本麻容子 石川
451号 2 色鳥や父らのオール直立す 阿保恭子 東京
451号 3 野菊この空気荒れいて旅の漂い 伊藤淳子 東京
451号 4 実柘榴と法然上人赤ら顔 稲葉千尋 三重
451号 5 湾奥や酢甕のさわぐ鉦叩 今福和子 鹿児島
451号 6 摩文仁に招ばれ星の隙間にわたしの席 植田郁一 東京
451号 7 大根擂るじゅわっと阿耨達池かな 大上恒子 神奈川
451号 8 天上に雪蕾みをり開きをり 岡崎正宏 埼玉
451号 9 花の名まちがえ百歳老女にしかられる 小木ひろ子 東京
451号 10 突進の子の光の輪黄鶺鴒 小沢説子 神奈川
451号 11 奥出羽やとくと寒がる妻ひとり 柏倉ただを 山形
451号 12 夜の焚火落下を耐える者たちの 片岡秀樹 千葉
451号 13 今落ちる秋から冬への夕日かな 川崎益太郎 広島
451号 14 自己愛か蓑虫宙にぶら下がる 草野明子 埼玉
451号 15 縄跳びや初日さっさっと輪切りにし 黒田幸江 埼玉
451号 16 ヴェネツィアの毛布にくるむ眠りかな 小長井和子 神奈川
451号 17 冷まじや鏡に溶けし猫背なり 小原恵子 埼玉
451号 18 木葉木菟散骨は見ないことにする 小堀 葵 群馬
451号 19 寒月光辿り着くまで影法師 佐藤紀生子 栃木
451号 20 置き去りの人の巣があり北風が吹く 塩谷美津子 福井
451号 21 よく遊べば谷にきらきら鮎落ちる 篠田悦子 埼玉
451号 22 冬日だまり鉄に貼りつくかたつむり 杉崎ちから 愛知
451号 23 霾りて狭まる吾が瞳脅かす 高橋総子 埼玉
451号 24 鶴わたる眠たさの我はうすずみ 田口満代子 千葉
451号 25 眼鏡はずして煤逃げの犬とゐる 武田美代 栃木
451号 26 父母の焚火は居眠りみたいです 峠谷清広 埼玉
451号 27 少年来て「ん」のように眠る 中田里美 東京
451号 28 冬銀河つばさ持つ魚届きけり 長谷川育子 新潟
451号 29 冬桜老いし馬の目水映す 日高 玲 東京
451号 30 安曇野のこども病院白鳥来 平山圭子 岐阜
451号 31 やはらかき叙情馬の背しぐれをる 福原 實 神奈川
451号 32 米を磨ぐ男は海に泳ぐかな 藤井清久 東京
451号 33 叔父二人いくさに奪らる冬の蝶 松本文子 栃木
451号 34 風花の舞う長崎に婚約す 宮里 晄 沖縄
451号 35 落鮎に響きやすしよ小石たち 茂里美絵 埼玉
451号 36 空の晩夏ガラスや虹の微音かな 山本 勲 北海道
451号 37 無月かな幕引きのよう義歯鳴らす 山本キミ子 富山
451号 38 冬の蝶集合写真の中にいる 横地かをる 愛知
451号 39 股引の二枚重ねや徘徊す 佳 夕能 富山

452号 1 阿武隈川の寒の四つ手やわが生まれ 足立あい 東京
452号 2 友は手で首切るしぐさ雪しずか 石川青狼 北海道
452号 3 凍蝶に微動ありしを責めにけり 石田順久 神奈川
452号 4 十二月鵜の止まる木を日暮という 伊藤淳子 東京
452号 5 花びら餅もほむほもほと話すかな 伊藤はる子 秋田
452号 6 満一歳鶺鴒ほどの小走りや 稲葉千尋 三重
452号 7 玻璃越しに冬の鳥立つ顔撓る 大内冨美子 福島
452号 8 大根に隠し包丁遺言なし 加地英子 愛媛
452号 9 冬銀河直下マゼランの気分なり 加藤邦枝 栃木
452号 10 寒いだけ難聴という身辺は 木村和彦 神奈川
452号 11 梟やたくさんの夜超えた山 河野志保 奈良
452号 12 色鳥来塑像の並ぶ高窓に 小長井和子 神奈川
452号 13 藷など煮つ冬眠というやさしき態 小林一枝 東京
452号 14 風まみれのてのひらでした冬夕焼 佐孝石画 福井
452号 15 ナマコと私少しぶるんと海馬揺れ 佐々木宏 北海道
452号 16 群れ昇る恍惚あらん鷹柱 高木一惠 千葉
452号 17 花八つ手金酔えば朴さびしいよ 高橋たねを 香川
452号 18 自恃ともちがう静けさよマスクして 田口満代子 千葉
452号 19 トイレにさざんか初公開の花のごとし 竹内義聿 大阪
452号 20 旅次の東国初夢のあぐらかな 董 振華 中国
452号 21 おでん食う父母混浴みたいです 峠谷清広 埼玉
452号 22 小鏡に雪ちらちらと巨石群 永井 幸 福井
452号 23 陽とトランペット探す滑走路の枯野 中村加津彦 長野
452号 24 鳥の頭一瞬白し細雪 中山蒼楓 富山
452号 25 勺玉は冬の怒濤のにほひかな 野崎憲子 香川
452号 26 上澄みに俺の髭面薺粥 蓮田双川 茨城
452号 27 草紅葉黄泉の母宛胸の内 長谷川順子 埼玉
452号 28 竹の実の餅の甘さよ学童疎開 林 壮俊 東京
452号 29 忘れぐせ大根煮てるベルが鳴る 平野八重子 愛媛
452号 30 鳰浮き出る度にあたらしい 松本勇二 愛媛
452号 31 口元に雪を惑わせ如意輪さま 水上啓治 福井
452号 32 鉛筆にまだ降り出さぬ雪匂う 水野真由美 群馬
452号 33 若き日のぽろんと折る膝紙雛 三井絹枝 東京
452号 34 陽の葉牡丹そうだ羽もつ母だった 村上友子 東京
452号 35 躊躇する日の出を見たり生家 森田高司 三重
452号 36 暴走族なんか古くてお正月 矢野美与子 東京
452号 37 酒止めた父と落葉のよく煙る 山内崇弘 愛媛
452号 38 影法師きみがはたらく月光市 山本逸夫 岐阜
452号 39 木枯し奴わたしに小皺の置き土産 山本キミ子 富山

453号 1 ガラス一面ミモザの光線蜜のごと 伊藤 和 東京
453号 2 ひとりのときは鶴来る気配今年米 伊藤淳子 東京
453号 3 近寄るや他人行儀な芋の露 植村金次郎 三重
453号 4 冬ざれの捨て舟に乗る忙中閑 大口元通 愛知
453号 5 恋猫は弾丸のごとくに追はれけり 大西昭治 広島
453号 6 流鏑馬の高ぶりほぐす春の川 岡田百代 埼玉
453号 7 鹿ぴうと鳴くから深く眠れない 奥山和子 三重
453号 8 母となれぬ切干大根飴色に 加藤青女 埼玉
453号 9 吾に尾の在らばさしづめ曲り葱 川村三千夫 秋田
453号 10 山笑う駄菓子えらびの中にいる 北村歌子 埼玉
453号 11 越前勝山左義長雪なく不思議かな 木下久子 福井
453号 12 濤の花かぶり佇ちてし冬若かりし 小林一枝 東京
453号 13 夜咄に弟祖母を出し入れす 小柳慶三郎 群馬
453号 14 白樺は小鬼見終り眠るかな 斉木ギニ 千葉
453号 15 水枕芽が出る音に目が覚めた 斎藤一湖 福井
453号 16 びょうと洟むティッシュペーパー百合鴎 篠田悦子 埼玉
453号 17 余命あかりに追羽根の滞空空間 清水喜美子 茨城
453号 18 雪晴をまぶたは見んと抗えり 鈴木修一 秋田
453号 19 水餅の弱りや水の淋しさに 高木一恵 千葉
453号 20 葱刻むいくさ絶えざる地球昏る 高橋明江 埼玉
453号 21 突風にすだれの悲鳴の難民の 竹内絵視 千葉
453号 22 呪うほど雪美しく降っている 竪阿彌放心 秋田
453号 23 紅梅にどこかはぐれてゐる透明 田中亜美 神奈川
453号 24 流れたり停まったり春の酔 董 振華 中国
453号 25 冷まじや小顔長脛崇められ 中島偉夫 宮崎
453号 26 どんど焼はたと論客逝きしかな 永田タヱ子 宮崎
453号 27 冬青空闇を思うて何になる 中村孝史 宮城
453号 28 蠍座は尾を磨くらむ冬籠 野崎憲子 香川
453号 29 雪の日暮錆のよう海のようにかな 長谷川育子 新潟
453号 30 湯豆腐やリストラの夜を一万歩 林 壮俊 東京
453号 31 祖母がいた日向に同じ唄きかせる 平井久美子 福井
453号 32 玄冬の手斧の影は旅路だな 福原 實 神奈川
453号 33 急流は闇をいざなふ二月ゆく 松本文子 栃木
453号 34 口移しで余寒をもらうあはれさよ 三井絹枝 東京
453号 35 口笛は誰を呼ぶ土雛売られゆく 宮坂秀子 長野
453号 36 はらからやひよこひしめく箱運ぶ 武藤征二 秋田
453号 37 雪女ことばのわかる馬といて 安井昌子 東京
453号 38 病苦より解かれし骨や冬深し 山田哲夫 愛知
453号 39 そのむかうに贔屓の梅が隠れてゐる 若林卓宣 三重

454号 1 落花ですふふふと逃げる子捉まえた 阿木よう子 富山
454号 2 紫木蓮の裏は白なり姉ひとり 阿保恭子 東京
454号 3 岩かげに去年の空蝉春の暮 泉 尚子 熊本
454号 4 約束を信じる俺に蝌蚪群れる 伊地知建一 茨城
454号 5 猫の恋みな近眼になっている 市原正直 東京
454号 6 耕人に風のアドリブ斑のように 市原光子 徳島
454号 7 白胡麻ほどの水芭蕉また来ます 伊藤はる子 秋田
454号 8 手持無沙汰は軽い船酔い青葉冷え 加古和子 東京
454号 9 地虫出ず脱け殻としてあるパジャマ 紙谷香須子 滋賀
454号 10 故郷のことばもぐもぐ鳥雲に 川崎千鶴子 広島
454号 11 落ちて上向く椿を友にわが八十路 上林 裕 東京
454号 12 大脳のなかまで若夏そよぐなり 岸本マチ子 沖縄
454号 13 啓蟄や夢のあわいにきれいな帆 小長井和子 神奈川
454号 14 阿部完市と居るアルバムを春の章 小堀 葵 群馬
454号 15 電子音聞かず触らず野遊びす 近藤好子 愛知
454号 16 鷽鳴いて張り切る僧の単純美し 篠田悦子 埼玉
454号 17 桜古木に魅入って喉に風の来る 釈迦郡ひろみ 宮崎
454号 18 被写体に花守ふたり入れておく 白井米子 愛知
454号 19 待春や枯死の森から海を見て 鈴木修一 秋田
454号 20 冬たんぽぽ明日にばかり負荷をかけ 芹沢愛子 群馬
454号 21 アイスバーン黒人きれいに歌いだす 十河宣洋 北海道
454号 22 瞑想をしている豆が撒かれおり 高桑弘夫 千葉
454号 23 花盛り髪の毛ちょっと残るかな 高澤竹光 滋賀
454号 24 燕が来れば祖母はきれいな手紙書く たかはししずみ 愛媛
454号 25 尿漏れの妻菜の花に少女となる 高橋 喬 新潟
454号 26 雉子啼く読むように書くたそがれ 田口満代子 千葉
454号 27 航空母艦という平らかなもの思えり 竹内義聿 大阪
454号 28 噛むほどに貝柱なり余寒なり 武田美代 栃木
454号 29 鶯やわがはらわたの鳴り通し 竪阿彌放心 秋田
454号 30 花はさくら木鶴のかたちに抱きあえり 田中昌子 京都
454号 31 白たんぽぽ愛は土星の輪のように 田浪富布 栃木
454号 32 ふぐ刺しの震えのように君寄り来 日高 玲 東京
454号 33 突然に砂丘が見える花の昼 堀之内長一 埼玉
454号 34 少女より少年草食的に春 三浦二三子 愛知
454号 35 初蝶が薫るというくちびるかな 三井絹枝 東京
454号 36 言霊はふいに来るものお雛さま 茂里美絵 埼玉
454号 37 追炊きのよう山茱萸が咲く日ぐれ 矢野千代子 兵庫
454号 38 六畳のまぼろしのはは鶴帰る 若森京子 兵庫

455号 1 養花天あやふやな問いあやふや 浅生圭佑子 愛知
455号 2 絵蝋燭そこはかとない発芽です 井手郁子 北海道
455号 3 畦塗りをきれいに仕上げ祖国びと 伊藤はる子 秋田
455号 4 種子を蒔くしぐさ錠剤口中へ 井上湖子 群馬
455号 5 五月巨きこの立ち眩み立山は 岩佐光雄 岐阜
455号 6 明るくて暗き人をり雪の中 内野 修 埼玉
455号 7 ぶなの雪間はぶな千年の幹まわり 大高俊一 秋田
455号 8 みくまりや猪は葛の根噛むという 大西健司 三重
455号 9 時として読経のような芽吹きかな 狩野康子 宮城
455号 10 右耳が目白とらえて象の耳 川崎千鶴子 広島
455号 11 片栗の花寝転びて不思議発見 北村歌子 埼玉
455号 12 墨界や旅人のほか在らざるを 久堂夜想 神奈川
455号 13 耳鳴りやあらつと不安の布靴かな 久保智恵 兵庫
455号 14 鯨鳴く夜更に手紙読むような 黒岡洋子 東京
455号 15 Smile を菫と書いて手紙終ゆ 斉木ギニ 千葉
455号 16 立葵捕手は五度目の首を振る 柴田和江 愛知
455号 17 青葉木菟埴輪の農夫肩に鍬 鈴木康之 宮崎
455号 18 喪服脱ぎ妻まどろみの揚羽蝶 舘岡誠二 秋田
455号 19 としよりが黙るは不思議葱坊主 田浪富布 栃木
455号 20 束の間を彗星碧し浮寝鳥 土屋寛子 神奈川
455号 21 物言えば薄紙剥くように春 津谷ゆきえ 岐阜
455号 22 巧者なるうぐいすに遇う白髪かな 中島偉夫 宮崎
455号 23 帰るところがないさくらの下にいる 中村加津彦 長野
455号 24 妻のわがまま恐ろし可笑しヒアシンス 中村ヨシオ 和歌山
455号 25 引鶴の声弱視の子等にひびき落つ はやし麻由 埼玉
455号 26 風がいいと逝きて八十八夜かな 平塚幸子 神奈川
455号 27 蝉の穴父の残した沈黙は 堀真知子 愛知
455号 28 土に還る土偶を照らす青葉かな 堀之内長一 埼玉
455号 29 春光や地に家建てる自然かな 間瀬ひろ子 埼玉
455号 30 さみしげに秋刀魚ながむる赤子かな マブソン青眼 長野
455号 31 現し世に父母をらぬ日や春の水 水野真由美 群馬
455号 32 糸遊やイエス三十四にて果つ 三田地白畝 岩手
455号 33 刳り舟はまだ山にあり青葉木菟 武藤鉦二 秋田
455号 34 他人という奇想天外チューリップ 村井 秋 神奈川
455号 35 鳥の巣や人は気紛れ旅に出る 森 美樹 千葉
455号 36 もの書けばさくら吹雪の混沌や 矢野千佳子 神奈川
455号 37 月でブランコする蜘蛛よ妻は跣かな 山本 勲 北海道
455号 38 雑木山ああ楽しひかり赫く 山本逸夫 岐阜
455号 39 人間に猫用缶詰花粉症 渡部陽子 宮城

456号 1 影や影橋までの試歩夕あかね 阿部一葉 宮崎
456号 2 ポストの口が手を引きそうに麦の秋 阿保恭子 東京
456号 3 黙祷のあとも動かぬ蝉の兄 有村王志 大分
456号 4 木曾のなあ清水ひと口もうひと口 石川青狼 北海道
456号 5 諏訪湖いま繭の昏さの夏来たる 伊藤淳子 東京
456号 6 黄砂の八A病棟に来る牛乳売り 稲葉千尋 三重
456号 7 わが友等長命にして梅雨鯰 今福和子 鹿児島
456号 8 海憶う手話の白さのよく撓う 岩佐光雄 岐阜
456号 9 方精の終りし河豚と目が合いぬ 上野昭子 山口
456号 10 片足で野に立つ少女夏のメモ 加古和子 東京
456号 11 梅の実煮る妹が泣く淑淑と 柏原喜久恵 熊本
456号 12 花ふぶき橋の真中を過去という 児玉悦子 神奈川
456号 13 涼しくて痒くてガッツポーズかな 佐々木昇一 秋田
456号 14 会釈して御馬草か匂う信濃人 篠田悦子 埼玉
456号 15 風を探しに車椅子の行列です 釈迦郡ひろみ 宮崎
456号 16 いのち故照らし合うかな月青嶺 鈴木幸江 滋賀
456号 17 心太ほとけの前に突き出しぬ 鈴木八駛郎 北海道
456号 18 核実験ひびくぞこの青大将 瀬川泰之 長崎
456号 19 むこうぎしもなのはななのはな雨男 芹沢愛子 東京
456号 20 人間の子を玉と掴むや青葉木菟 高橋たねを 香川
456号 21 辺とは耳澄ますこと信濃に夏 田口満代子 千葉
456号 22 青梅はやや子のふぐりいっとき晴 武田美代 栃木
456号 23 蛍見て寝返りを打つ喪の一家 館岡誠二 秋田
456号 24 波打ち際は初夏の鍵盤指を置く 月野ぽぽな アメリカ
456号 25 皆既日食から日常へ黙契とは 董 振華 中国
456号 26 無いはずの帰心植田に映りけり 中村孝史 宮城
456号 27 福寿草両手の自由を散歩という 梨本洋子 長野
456号 28 湖に明神われに耳鳴りの五月 野田信章 熊本
456号 29 永久に山は離れず青葡萄 蓮田双川 茨城
456号 30 うりずんや農に目覚めた漢居る 長谷川順子 埼玉
456号 31 遠花火脳をきれいにして老いて 浜 芳女 群馬
456号 32 鵜の舟や海鵜でありし頃の無邪気 平山圭子 岐阜
456号 33 老というキウイの断面甘美かな 廣島美恵子 兵庫
456号 34 奥羽山系ミサイルよぎる笹に花 藤盛和子 秋田
456号 35 まくなぎにただ囲まれて父はなし 松本勇二 愛媛
456号 36 流砂影なすこの家ブランコがあった 村上友子 東京
456号 37 木の椅子の白夜のごとく置かれけり 守谷茂泰 東京
456号 38 茅花流し来るは越中雨晴 山本昌子 京都
456号 39 さりげなく雨を描く癖花卯木 横地かをる 愛知

457号 1 晩年のいま形代に鳥と書く 安藤和子 愛媛
457号 2 玉虫や躁が刹那を横切るよ 石田順久 神奈川
457号 3 蜜豆は首ふとくして食べるかな 市原正直 東京
457号 4 デッサンのような風です蛍袋 市原光子 徳島
457号 5 遠景にゲリラ傍らに花咲蟹 井手郁子 北海道
457号 6 河骨や一日をもう置き去りに 伊藤淳子 東京
457号 7 ひとに会う前の孤独に梅雨の月 宇川啓子 福島
457号 8 寄せてくる遁走曲の牛や晩夏なり 岡崎文都 東京
457号 9 リラ冷えというか目薬そしてテロ 加川憲一 北海道
457号 10 良寛のこひうた数多夜干梅 門脇章子 大阪
457号 11 十薬の白を踏絵とふと思う 川崎益太郎 広島
457号 12 無用の用露草と青に染められ 川本洋栄 大阪
457号 13 風葬の村にあわあわ虫篝 岸本マチ子 沖縄
457号 14 軍犬呼ぶ父の草笛原風景 草野明子 埼玉
457号 15 妻と呑む持薬は真水麦の秋 小堀 葵 群馬
457号 16 鍋釜照らし家出でゆきし蛍かな 今野修三 東京
457号 17 五体投地なにか言いけり海を指し 斉木ギニ 千葉
457号 18 鮎釣るや中洲隕石降るという 佐々木義男 福井
457号 19 休耕の国のまほろば螢草 佐藤臥牛城 岩手
457号 20 山百合の白は山人の褌の白 白井重之 富山
457号 21 空蝉や一刻ものの系譜なり 須藤火珠男 栃木
457号 22 自画像にささがねの蜘蛛下りるかな 関田誓炎 埼玉
457号 23 眠りとはゆるぎなきもの大賀蓮 高桑婦美子 千葉
457号 24 鮎跳ねる腕組み解くは自由だが 田村勝美 新潟
457号 25 楊梅に若き歯染めしはまぼろしか 土屋寛子 神奈川
457号 26 梅雨夕焼け私の窓は一つなり 峠 素子 埼玉
457号 27 少女達笑い声まで日焼だなあ 峠谷清広 埼玉
457号 28 照葉樹林無頼もお通し下さるか 中尾和夫 宮崎
457号 29 蜘蛛の囲にとらわれこの世まだ信ず 中原 梓 埼玉
457号 30 夕日の果て音たて水を落してきた 中村加津彦 長野
457号 31 日に一度土に帰りて蟾蜍 成井恵子 茨城
457号 32 鬼ごっこの鬼に乳房のある暑さ 新田富士子 愛媛
457号 33 鶏と見ていた山のお寺の朴の花 橋田サカエ 熊本
457号 34 養蜂一家土地神に伏し山に伏し 松本勇二 愛媛
457号 35 山彦は天に泉は掌に溢れ 三田地白畝 岩手
457号 36 望郷やどこまで転ぶ夏帽子 宮辺 潔 福井
457号 37 冷奴の角なぞりいる平和かな 村上 豪 三重
457号 38 遠花火静物として月日あり 守谷茂泰 東京
457号 39 父の日の父がやたらに畑を打つ 山口 伸 愛知

458号 1 亡母が亡姑語りしときの遠花火 伊賀上寿賀子 愛媛
458号 2 濁流や朴の咲く日は音消して 一ノ瀬タカ子 東京
458号 3 豪雨三日バケツリレーのようにかな 市原光子 徳島
458号 4 蛇掴みて仲間はづれと思ひけり 稲葉千尋 三重
458号 5 雪渓に雷鳥という図式ふと 宇野律子 神奈川
458号 6 日本の蝉の木お昼ごはんかな 榎本佑子 兵庫
458号 7 ぽつんと父十の青田の月愛し 大沢輝一 石川
458号 8 夏期休暇二歳児の列透きとおる 小野裕三 神奈川
458号 9 どくだみを煎じ老いの血の反戦 加地英子 愛媛
458号 10 揚げ油飛ぶやてんてんてんとう虫 川崎千鶴子 広島
458号 11 百千鳥子の声薄く真中にあり 川田由美子 東京
458号 12 黒髪は水にひろがり蛇泳ぐ 北川邦陽 愛知
458号 13 今というこのときの純おどりの輪 北村美都子 新潟
458号 14 豆飯や誰にも会わぬ孤独死や 小林一枝 東京
458号 15 浮力というもの梅雨の蝶地に低き 坂本春子 神奈川
458号 16 闇の音すべて消してよ不眠です 釈迦郡ひろみ 宮崎
458号 17 飛魚とびすっと孤独に櫓の軋む 新城信子 埼玉
458号 18 敗戦日握手に鉄の義手を出す 杉崎ちから 愛知
458号 19 削られし乳房にふれぬ蛍かな 鈴木八駛郎 北海道
458号 20 百日紅越しに男体山孫が来る 須藤火珠男 栃木
458号 21 孕みたる蝮や地霊添うごとし 高木一恵 千葉
458号 22 今むかし花火着て寝る湖族かな 高澤竹光 滋賀
458号 23 せめて今は子を抱く母で原爆忌 たかはししずみ 愛媛
458号 24 チェロ弾きの指のうたかた青筋揚羽 田口満代子 千葉
458号 25 平泳ぎ海底火山このあたり 田沼美智子 千葉
458号 26 梅雨最中僧にもらいし絵蝋燭 田村蒲公英 埼玉
458号 27 耳底のつめたきホタルブクロかな 月野ぽぽな アメリカ
458号 28 朝日煙り夕日煙らせ秋分日記 董 振華 中国
458号 29 すり足の清少納言夜の秋 中村裕子 秋田
458号 30 目鼻とんで君達の今青の時代 新田幸子 滋賀
458号 31 ヒロシマの石に言の葉うましめよ 野崎憲子 香川
458号 32 柳絮飛ぶ志を遂げざるに老いたるよ 林 壮俊 東京
458号 33 氷売り帰りは安寿の話して 平井久美子 福井
458号 34 湿舌の先っぽ昆虫展示室 堀之内長一 埼玉
458号 35 蝿逃げてパチパチしたる赤子かな マブソン青眼 長野
458号 36 空をいま出でゆく鳥や杜若 水野真由美 群馬
458号 37 隠棲の沼番盃にも蛍 武藤暁美 秋田
458号 38 約束は蝶の翳なり避暑期去る 森央ミモザ 長野
458号 39 かなかなや母いて卵かけご飯 横地かをる 愛知

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