金子兜太選 海程秀句」鑑賞 
2008年目次

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作者名
地域 

旅に病むアドリア海より這い上がる

阿久沢達子 群馬
439号 2 曼珠沙華いまいましきは加齢かな 阿部一葉 宮崎
439号 3 蝉しぐれ孫よ「ヒロシマ」学びしか 井川淑美 愛媛
439号 4 玄海は無頼な匂ひ鳥渡る 伊佐利子 福岡
439号 5 猫じゃらしそのまま話す野のことば 伊地知建一 茨城
439号 6 鳥渡るこの遠浅の深夜感覚 伊藤淳子 東京
439号 7 わが消す灯亡母が灯して秋がくる 稲田豊子 福井
439号 8 溝蕎麦や尼僧がひょいと跨ぐなり 岩佐光男 岐阜
439号 9 赤とんぼ肩にくるくる神の声 岩間愛子 茨城
439号 10 描ききれず征く夕灼けを妻に母に 植田郁一 東京
439号 11 秋の海我は泳げぬ能登女 小木ひろ子 東京
439号 12 先導の蟻小ざかしき髭を振り 小暮洗葦 新潟
439号 13 最澄の膝に飛び込むかなぶんぶん 加藤青女 埼玉
439号 14 措いて来しわたくしの声遠き鹿 北村美都子 新潟
439号 15 草の露買いかぶられて痛みいる 三枝正二 埼玉
439号 16 無月かな我に家族という羽音 佐孝石画 福井
439号 17 旅泊り遠浅のよう月の町 下山田禮子 埼玉
439号 18 小鳥来る好きな木に来て薄瞼 白川温子 東京
439号 19 雑学や奥歯に残る鱧の骨 菅原和子 東京
439号 20 曼珠沙華袂の振れぬ紙人形 瀬古多永 三重
439号 21 猫の額だなと黒揚羽一巡す 田村勝美 新潟
439号 22 人と寝てわが影濃ゆし秋祭 土屋寛子 神奈川
439号 23 難聴に差別に耐えて新酒かな 峠谷清広 埼玉
439号 24 童女いてかなかなの神様の隣り 遠山郁好 東京
439号 25 無言館もう一度あなたの瞳みつめる 梨本洋子 長野
439号 26 バックミラーの狐火こぞって右折かな 平塚幸子 神奈川
439号 27 栃の花愚かな電波地に充つる 藤井清久 東京
439号 28 霧湧きぬ地粉をこねるときにかな 藤野 武 東京
439号 29 山岳や鴉の芯のおぼろなり 北條貢司 北海道
439号 30 晩夏かな自転車を漕ぐわれは海鳴り 堀真知子 愛知
439号 31 虫の音の裏が無音の宇宙かな マブソン青眼 長野
439号 32 林檎剥く始めよければ終りよし 丸木美津子 愛媛
439号 33 ブラジルで作句覚へてふらここに 右田春雪 ブラジル
439号 34 落蝉や行者の脛は刃のやうに 柳生正名 東京
439号 35 現代や峠より見し晩稲あかり 矢野千佳子 神奈川
439号 36 口閉じよ花葛は帆の傾れよう 矢野千代子 兵庫
439号 37 泥の音ちかづく顕るる蓮根堀 柚木紀子 東京
439号 38 麻痺の脛に蟻ら吟行のごときかな 輿儀つとむ 沖縄

440号 1 袖通す私の中の野分かな 東 祐子 兵庫
440号 2 矢は熊へ蝦夷国風図絵屏風 石川青狼 北海道
440号 3 梟や安心といいほうといい 市野記余子 埼玉
440号 4 栗飯や筑波山下りて膝を折る 一ノ瀬タカ子 東京
440号 5 綿虫や地団駄踏むよう擦れ違う 市原光子 徳島
440号 6 柞紅葉陽が射しわっと戦闘的 伊藤 和 東京
440号 7 夢もゆめわたし師走の月の上 太田順子 兵庫
440号 8 白ふくろうは遠火事にきている 大谷 清 埼玉
440号 9 大法螺ふきの囲む焚火が消えんとす 岡崎文都 東京
440号 10 十三夜誰かと影踏み遊びせむ 尾田明子 埼玉
440号 11 柿にのこる渋は句友のごときもの 金谷和子 埼玉
440号 12 初秋刀魚理路整然と祖父の箸 上林 裕 東京
440号 13 秋の耕杉菜の深い根を憎み 木村和彦 神奈川
440号 14 冬のメロン集中力の範囲なる 黒岡洋子 東京
440号 15 稲穂のように言葉あふれて寝ねがたし 小長井和子 神奈川
440号 16 目障りな柿の木も祖十三夜 小堀 葵 群馬
440号 17 清僧は槍鶏頭のよう坐る 酒井郁郎 埼玉
440号 18 虎落笛わけあるやうに矢継ぎ早 佐藤紀生子 栃木
440号 19 覚めてみる地球月より美しく青 志摩京子 東京
440号 20 青葉木菟母に逢うので村に居る 鈴木八駛朗 北海道
440号 21 釣舟草軽いものから船出する 高桑婦美子 千葉
440号 22 嫁が来て村に小鳥の樹が殖える 瀧 春樹 大分
440号 23 友情やあさっては雪渓を下りる 峠 素子 埼玉
440号 24 オフィス街視線ぐしゃりと落ちて冬 峠谷清弘 埼玉
440号 25 あれは白ふくろうの声新位牌 殿岡照郎 ブラジル
440号 26 顔寄せていわし雲みる見舞かな 梨本洋子 長野
440号 27 クレヨンの蓋あいており返り花 丹生千賀 秋田
440号 28 水ばかり描く老画家の渇水期 根岸暁子 群馬
440号 29 生真面目や猪は垣根を突破する 平山圭子 岐阜
440号 30 水底に光は沈む冬支度 藤野 武 東京
440号 31 布団干す父母に山の気満たすため 松本勇二 愛媛
440号 32 葡萄剥きも不妊治療も二人かな マブソン青眼 長野
440号 33 黄落の階段までを父とゆく 水野真由美 群馬
440号 34 澱みという字好きなり白さるすべり 三井絹枝 東京
440号 35 帽子へこんでぽこんと直る母の秋 宮崎斗士 東京
440号 36 佐渡ヶ島少女のつまむ赤南蛮 武藤暁美 秋田
440号 37 夕焼けに突き刺さる月誕生日 森田高司 三重
440号 38 不安がすぅーと消えたよ明るいつわの花 山岡敬典 岡山
440号 39 月の照る峠なるらむ汝ならば 柚木紀子 東京

441号 1 刈田かな母は百一われは喜寿 新井娃子 埼玉
441号 2 山家とは赤唐辛子の眠りかな 有村王志 大分
441号 3 百翁がわが庭と呼ぶ秋の海 安藤和子 愛媛
441号 4 暁は拳石蕗の花咲けり 飯土井志乃 滋賀
441号 5 山古志の露晴れて牛角突けり 稲葉千尋 三重
441号 6 凩や転がっている俺の理由 井上俊一 愛知
441号 7 星の綺羅雪くる前の田に佇てば 岩佐光雄 岐阜
441号 8 下駄高く放る占い馬肥ゆる 宇川啓子 福島
441号 9 寒鯉を連れ去ってゆく建築屋 大口元通 愛知
441号 10 嫁が君ほうろく焼の握り飯 奥山津々子 三重
441号 11 三日月やわれらぎっしり森抜ける 小野裕三 三重
441号 12 詩のように初雪がふる札幌砂漠 親谷道子 北海道
441号 13 夫をふと友と思えり冬の鹿 柏原喜久恵 熊本
441号 14 槍鶏頭ことに前頭葉覚めて 金子斐子 埼玉
441号 15 戦経て地べたに人が立っている 金子ひさし 愛知
441号 16 落ち葉の家ブンバブンバとやかん鳴く 河原珠美 神奈川
441号 17 雪雪雪雪雪ねむくなるくすり 北村美都子 新潟
441号 18 盲いの老犬われは隻眼山眠る 国しげ彦 埼玉
441号 19 草雲雀遊びせんとや声澄んで 小長井和子 神奈川
441号 20 幾晩や葱の白根と小言妻 小林まさる 群馬
441号 21 猫一語我一毫の御慶かな 佐藤臥牛城 岩手
441号 22 昼の虫独りの家は野末に似て 篠田悦子 埼玉
441号 23 土付きの里芋のようおとこあり 柴田美代子 埼玉
441号 24 人日や水脈の及べる島を見る 清水喜美子 茨城
441号 25 米とぐも夢の中なり尉鶲 田口満代子 千葉
441号 26 海峡に鯨うすむらさき縷縷と 田中亜美 神奈川
441号 27 枯菊を焚く生得の浪漫派 田浪富布 栃木
441号 28 凍蝶と隣り合せの握り飯 新田富士子 愛媛
441号 29 難聴やりんごに蜜が入らない 長谷川育子 新潟
441号 30 芦刈了え強情な霧にぶつかる 浜 芳女 群馬
441号 31 かなり早起き外湯の桶に枯蟷螂 平山圭子 岐阜
441号 32 哀悼歌銅鑼鳴るような紅葉谷 北條貢二 北海道
441号 33 大夕焼け花眼となりしまま沈み 松本照子 熊本
441号 34 ひとりの音母へ母へと柿を剥く 丸木美津子 愛媛
441号 35 何でもあって希望がない国草の実飛ぶ 三木冬子 東京
441号 36 十二月八日瘤持つ深海魚 三田地白畝 岩手
441号 37 俳壇に室咲き多し寝るとする 柳生正名 東京
441号 38 あしあともて帰依せむ山や冬谺 柚木紀子 東京
441号 39 即興とは現世を隠す時雨かな 渡部陽子 宮城

442号 1 ろうばいを過ぎて食堂へ行く哀 足立あい 東京
442号 2 偉いとか偉くないとか冬大根 石山一子 埼玉
442号 3 鈍行や雪の浮力は詩のような 岩佐光雄 岐阜
442号 4 賽銭を拾わず踏まず初詣 岩瀬徳次 群馬
442号 5 餅搗きの前夜の母は決起めき 宇野律子 神奈川
442号 6 うたた寝は群鶴の足ばかりなり 榎本祐子 兵庫
442号 7 牛飼いも蓮如も雪の峠越ゆ 大西健司 三重
442号 8 銃殺や我等は何もせねど雪 大谷昌弘 千葉
442号 9 差出人不明の賀状官能的 川村三千男 秋田
442号 10 白鳥来と誌せし今日の一番星 北村美都子 新潟
442号 11 声あれば茨城訛りの鮟鱇よ 木村和彦 神奈川
442号 12 大日如来畳に下ろし煤払い 金並れい子 愛媛
442号 13 テンが跳ぶ郷一直線に陰のこす 後藤岑生 青森
442号 14 やさしさが時雨れているよ橋の反り 小林一枝 東京
442号 15 柿盗りの相棒だった焼香する 小堀 葵 群馬
442号 16 樹のまわり雪に着地の涛がしら 佐々木義男 福井
442号 17 年寄を演じきったり獅子頭 柴田和枝 愛知
442号 18 人の日の仮泊のような森の月 下山田禮子 埼玉
442号 19 人日やこわされる家みてとおる 杉崎ちから 愛知
442号 20 天狗山沖に原潜陸に墓 瀬戸 密 北海道
442号 21 嫁が君鳴かせてわが家すこし窮屈 高橋たねを 香川
442号 22 膝枕処女航海のよう小春 田浪富布 栃木
442号 23 怠惰続きて七種粥熱しあつし 玉乃井明 愛媛
442号 24 浄土の岬より春眠始まれり 董 振華 中国
442号 25 履初めの妻のお尻に紙の屑 峠谷清広 埼玉
442号 26 千空の葬紅葉に雪寂しけり 豊山くに 青森
442号 27 うすい齢重ねるも芸白障子 長谷川育子 新潟
442号 28 雁渡る赤城明けく我ここに 長谷川順子 埼玉
442号 29 淑気満つ視野狭き目を空に向け はやし麻由 埼玉
442号 30 橡の花わが影に倦み谷深し 日高 玲 東京
442号 31 取り箸を正面に置く冬景色 廣嶋美恵子 兵庫
442号 32 初産に旗ふっている十二月 藤盛和子 秋田
442号 33 頬杖の蜜寒林にゆきわたる 堀之内長一 埼玉
442号 34 鮫すーっと動いてたっぷりの夜かな 宮崎斗士 東京
442号 35 口べらしの唄あり筵織り継げり 武藤鉦二 秋田
442号 36 水鳥を数え尽くして寄る辺なし 守屋茂泰 東京
442号 37 冬蜂にそっと音叉を寄せにけり 柳生正名 東京
442号 38 赤き蕎麦挽きて夢さむ井月忌 山本逸夫 岐阜
442号 39 冬晴の螺旋階段口語体 渡部陽子 宮城

443号 1 もの言う梟絵手紙のふくろう 相原澄江 愛媛
443号 2 姪たちの黒いセータードイツ菓子 足立あい 東京
443号 3 来ぬ人や管楽器ゆく冬の橋 飯島洋子 東京
443号 4 風邪ひきもいるらし洛中洛外図 石川和子 栃木
443号 5 鴨遠く解体の音のたそがれ 伊藤淳子 東京
443号 6 流氷や闇深きまま人間軋む 岡崎万寿 東京
443号 7 票田といわれる地帯猫の恋 小野裕三 神奈川
443号 8 抽象はさびし葱畑に屈み居れば 金谷和子 埼玉
443号 9 平城山よも一睡われも一睡 兼近久子 大阪
443号 10 風のように父来て帰る初寝覚 川崎久美子 東京
443号 11 立春や鴉は鋼のオブジェです 河原珠美 神奈川
443号 12 今朝の春巫女らの額に面皰の芽 上林 裕 東京
443号 13 たまゆらの寒林はいま石ばかり 北上正枝 埼玉
443号 14 みずうみへ子はかくし持つ蝶の骨 久堂夜想 神奈川
443号 15 寒卵一心というやわらかさ 黒岡洋子 東京
443号 16 着ぶくれて眠りはまるい繰り返し 河野志保 奈良
443号 17 児が駆け出した雪降りの永平寺 近藤好子 愛知
443号 18 白鳥という笑わない母である 佐孝石画 福井
443号 19 冬紅葉よもつひらさかその真上 下山田禮子 埼玉
443号 20 薄氷や私というひとりの他人 白石司子 愛媛
443号 21 訃報一つ生身を打ちて立春なり 鈴木修一 秋田
443号 22 地の神は地べたに座り独活を喰う 鈴木八駛郎 北海道
443号 23 産土も北辰斜め春立ちぬ 鈴木康之 宮崎
443号 24 朝日の中の透徹や霜野原 鈴木祐子 東京
443号 25 田の月がいたくて睡りぐすりをのむ 末永有紀 福島
443号 26 寒牡丹凝視というは魔性なり 高桑婦美子 千葉
443号 27 龍の玉昨日落した目の鱗 瀧 春樹 大分
443号 28 ありし日の君は真水か梅咲いた 根岸暁子 群馬
443号 29 小鳥屋のとなり むっつりとして大河 野間口千賀 鹿児島
443号 30 地球と引力やっと納得入学す 長谷川順子 埼玉
443号 31 卒寿かな戯れせんとや嫁が君 林 壮俊 東京
443号 32 川に沿う人の生活よ柿明かり 平山圭子 岐阜
443号 33 正月過ぎゆるゆる単純もどりけり ホーン喜美子 カナダ
443号 34 瓜坊は闇を食むことから始む 松本勇二 愛媛
443号 35 お雛さまぼくは段々馬の面 水上啓治 福井
443号 36 空欄なりときどき木の葉踏む母よ 宮崎斗士 東京
443号 37 老僧は土鈴のかたち冬の旅 横地かをる 愛知
443号 38 独り身に刃の沈みゆく霜夜かな 渡部陽子 宮城

444号 1 連翹や平らな犬を照らすかな 油本麻容子 石川
444号 2 下手くそな蝉がまだ居る敗戦忌 有村王志 大分
444号 3 まんさくの娘石工の繊指かな 五十嵐好子 東京
444号 4 卓球の流星桃の花咲かす 井上湖子 群馬
444号 5 蛇穴を出て口の中見せにけり 上野昭子 山口
444号 6 木の芽雨ふあっと生きて明日を読む 上原勝子 神奈川
444号 7 枕頭のペン柔らかき囀りです 植村金次郎 三重
444号 8 足萎えし母はさざなみ百千鳥 榎本愛子 山梨
444号 9 恋猫の流木上で争えり 大下志峰 福井
444号 10 うぶすなのへそ無防備な鏡餅 大高俊一 秋田
444号 11 黄砂来る顎を撫でたり無視したり 加藤邦枝 栃木
444号 12 初蝶に肩かす空の緩びかな 木村幸平 新潟
444号 13 一遍の通りしあとの土筆かな 黒岡洋子 東京
444号 14 逃げ水の一路は定めなき遍路 小林一村 福井
444号 15 葱を抜く人に声かけ過ぎるなり 近藤好子 愛知
444号 16 蒲団ごと夜を二つ折り独り者 猿渡道子 群馬
444号 17 春潮や沖を見つめて山人われ 篠田悦子 埼玉
444号 18 照らし合う記憶まぶしく磯あそび 柴田和枝 愛知
444号 19 大楽毛糞をけちらす地鶏かな 鈴木八駛郎 北海道
444号 20 種物屋主人鳥語のごとくあり 関田誓炎 埼玉
444号 21 當麻白鷺つっと爪立ちささめごと 田中昌子 京都
444号 22 青春のかけら小骨となりて冬 谷岡 愛媛
444号 23 くれないの落し角です朝寝です 遠山郁好 東京
444号 24 日脚伸ぶ両手一ぱい水の私語 中島伊都 栃木
444号 25 榕樹や駒鳥の如悦なる人 中原 梓 埼玉
444号 26 百千鳥円の中には井戸在りて 日高 玲 東京
444号 27 雁風呂にとぼとぼ後期高齢者 福原 實 神奈川
444号 28 頭の中の蚯蚓なんぞも光りもし 本田日出登 群馬
444号 29 水飯の混濁ふかき胸の水 松本照子 熊本
444号 30 散る青葉散らざる青葉奇数好き 松本文子 栃木
444号 31 春寒やわれに売るべきイエスなく 三田地白畝 岩手
444号 32 石鎚山やゴビの黄砂に染まざりき 光宗柚木子 愛媛
444号 33 掻いて雪掘つてまた雪絵ローソク 武藤鉦二 秋田
444号 34 覗き込み蝌蚪の群れより天奪う 村上 豪 三重
444号 35 薬包紙ひらく余韻を早春とも 茂里美絵 埼玉
444号 36 しゃぼん玉こぼれる馬の背は異国 森央ミモザ 長野
444号 37 わが影を憶えていたる春の坂 守谷茂泰 東京
444号 38 春の空てふ空白の席かな 柚木紀子 東京
444号 39 女優とは表面張力冬の川 渡部陽子 宮城

445号 1 街の灯がこんなに並ぶ春の飢 伊地知建一 茨城
445号 2 野鯉群れて僧に教師に目借時 市原光子 徳島
445号 3 配管工Aに安らぎ枯草宇宙 宇田蓋男 宮崎
445号 4 犀迫るからだに嫌な暖かさ 大高俊一 秋田
445号 5 春落葉詰物として副葬品 奥田筆子 京都
445号 6 踊り場やわが階の果おぼろ 尾崎暢子 東京
445号 7 金臘梅の終着駅は無人です 小堤香珠 東京
445号 8 おにぎりのどこも底辺花は葉に 金谷和子 埼玉
445号 9 長駆するあめんぼうなり二十五菩薩 兼近久子 大阪
445号 10 甚兵衛鮫の重さの国語辞典かな 北川邦陽 愛知
445号 11 猫の目が裸のまんま春の闇 河野志保 奈良
445号 12 蟻の列枕外してまどろめば 小長井和子 神奈川
445号 13 ユーカラの口は星形野老かな 猿渡道子 群馬
445号 14 失語症ふと聞く呟き何ですか 釈迦郡ひろみ 宮崎
445号 15 薫風や山より落とす己が影 鈴木幸枝 滋賀
445号 16 我はいま雲雀が落とす影法師 鈴木修一 秋田
445号 17 鯉濡らす春月老いの寝入りばな 関田誓炎 埼玉
445号 18 夕焼けるために山巓高野槙 高木一惠 千葉
445号 19 惚うけるや八十八夜ののんど鳴る 高澤竹光 滋賀
445号 20 薯植える吾ら北方志向型 田浪富布 栃木
445号 21 露地うらの暗い疊句花れんぎょう 田畑桃里 神奈川
445号 22 快楽に近し春蘭のうすみどり 玉乃井 明 愛媛
445号 23 鳥よりも高きに棲むを朧という 月野ぽぽな アメリカ
445号 24 豆飯を昭和の映画のように食う 峠谷清広 埼玉
445号 25 無限とう淋しい顔の馬冷す 遠山郁好 東京
445号 26 病葉を焚き目じるしとしたりけり 中島偉夫 宮崎
445号 27 結論は自愛であると牛蛙 長野祐子 東京
445号 28 憲法を若しと思う花水木 中村孝史 宮城
445号 29 どう見てもクリムト姉の春衣かな 新田幸子 滋賀
445号 30 落日のもつとも春の息吹かな 野崎憲子 香川
445号 31 鳥雲にわれらビキニ忌を忘却 野田信章 熊本
445号 32 逆光や残る白鳥を鬱という 長谷川育子 新潟
445号 33 空木咲くと令嬢たちのかくれんぼ 堀之内長一 埼玉
445号 34 弟は見事に遠し柿若葉 松本勇二 愛媛
445号 35 初笑いの叔母は太巻き寿司のよう 森 美樹 千葉
445号 36 三日月は片手で隠れ麦の秋 柳生正名 東京
445号 37 春暁のからす鳴きます適当に 矢野美与子 東京
445号 38 夜の村道明るい方言のあと吾れら 輿儀つとむ 沖縄

446号 1 青葉闇無我とは山の巌かな 有村王志 大分
446号 2 熊野山中胸にゆっくり逃水 伊藤淳子 東京
446号 3 鮮やかや耳朶掠む熊ん蜂 稲葉千尋 三重
446号 4 祖へ帰る崩落の山も残雪も 植田郁一 東京
446号 5 赤ん坊とたんぽぽ時間たんぽぽ語 宇川啓子 福島
446号 6 地上にて飛行士のごと夏に会ふ 岡崎正宏 埼玉
446号 7 祭笛活断層の上にかな 岡崎万寿 東京
446号 8 母の日や兵士の母は百五歳 緒方 輝 東京
446号 9 やませ吹く日の散髪は怖ろしい 加川憲一 北海道
446号 10 世が世なら剣の使い手とうすみ蜻蛉 加地英子 愛媛
446号 11 春鴉五体投地の童顔 川口裕敏 東京
446号 12 逃散のごと蕨山越え行けり 川村三千夫 秋田
446号 13 大利根は雷の通い路歌とも 酒井郁郎 埼玉
446号 14 走り梅雨寝返り幾ど鯉の重さ 篠田悦子 埼玉
446号 15 海市潜水艦は夢うつつ 白井重之 富山
446号 16 曼荼羅の緑雨薄明われは一粒 末岡 睦 北海道
446号 17 ほととぎす消息通はよく食べる 高山紀子 秋田
446号 18 母きつと睡蓮の花に一泊 田口満代子 千葉
446号 19 卯の花腐しぬるき火傷のやうな唇 田中亜美 神奈川
446号 20 田水張るしーんと静かな誇りです 津谷ゆきえ 岐阜
446号 21 冬海鵜棟方志功のめがね 徳才子青良 青森
446号 22 泰山木重機関銃朽ちて土 徳永義子 宮崎
446号 23 邂逅は高野閃光つばくらめ 永田タエ子 宮崎
446号 24 荒ぶること少しさすらう水の蛍 中村加津彦 長野
446号 25 齢来て妻の昼寝をいたわりぬ 中村孝史 宮城
446号 26 万緑や馬の背中のアルルカン 新田幸子 滋賀
446号 27 蝶になるため強烈にひきこもる 野崎憲子 香川
446号 28 瀕死の鷲抱き獣医たらんか苔の花 野間口千賀 鹿児島
446号 29 青田抜け来て度忘れのような街 丹生千賀 秋田
446号 30 苦味走ったひらたきものに蟇 平塚幸子 神奈川
446号 31 夕暮れの屋根に男としやぼん玉 水野真由美 群馬
446号 32 桐咲けり日常たまにロングシュート 宮崎斗士 東京
446号 33 花冷えの君等ブラックチョコレート 室田洋子 群馬
446号 34 ほうたるも蛇の眼も地震のなか 柳生正名 東京
446号 35 空海さんいまだに生きて蝌蚪に足 矢野千佳子 神奈川
446号 36 西瓜畑口鉄砲を二・三発 山口 伸 愛知
446号 37 永遠と一日を霧 青霧 柚木紀子 東京
446号 38 雨が来て声のふかぶか夏遍路 横地かをる 愛知

447号 1 蚊は声なく夕べ浮かべり紅し 足立あい 東京
447号 2 コンペイトーのやうな園児ら星まつり 伊佐利子 福岡
447号 3 膝抱けば野猿の姿桃熟れる 岩瀬徳次 群馬
447号 4 曝書して牛の歩みの黒々と 上原祥子 山口
447号 5 草取って当たり前なる葱畑 江井芳郎 福島
447号 6 石化した私すり抜け梅雨晴間 大内冨美子 福島
447号 7 昔ほたるは馬の眸に棲んでいた 大沢輝一 石川
447号 8 戦犯の父や父の日来たりけり 緒方 輝 東京
447号 9 青嵐明日の淋しさ知っている 小堤香珠 東京
447号 10 落花いつから被弾のように母座り 加川憲一 北海道
447号 11 枕経つづくひと夜の黴静か 門脇章子 大阪
447号 12 蟹裏返す一人になれば一人ごと 紙谷香須子 滋賀
447号 13 日光黄菅の原まっすぐに憲三逝く 上林 裕 東京
447号 14 間に製函工場が立ち麦の秋 北川邦陽 愛知
447号 15 徒然に生きよう黒牛の黒眼あり 久保知恵 兵庫
447号 16 サングラスからだのどこか出日本 柴田美代子 埼玉
447号 17 戒名もさらしくじらもさみだるる 清水 伶 千葉
447号 18 芥子坊主君の言葉へ付箋かな 下山田禮子 埼玉
447号 19 私へ戻りゆく水脈明易し 白石司子 愛媛
447号 20 子疲れの母の口紅花は葉に 新城信子 埼玉
447号 21 先陣の虫鳴き出づる地声なり 須藤火珠男 栃木
447号 22 秋風に鶏交わる不安定 瀬川泰之 長崎
447号 23 産土や歯を剥く獅子に熊ん蜂 関田誓炎 埼玉
447号 24 まぶしすぎるいきなりパーキンソン病宣告 竹内義聿 大阪
447号 25 大阪のことば肉感的に夏 月野ぽぽな アメリカ
447号 26 盆の月峠越えれば寝るとする 董 振華 東京
447号 27 寝冷えしてリストラよりも恐い妻 峠谷清広 埼玉
447号 28 守宮のどこにも力が入っていない 中田里美 東京
447号 29 老い母の膕見える夏の家 中村孝史 宮城
447号 30 夏の月み熊野という怒濤かな 野崎憲子 香川
447号 31 茅花流し鳥のいる木を知る少女 日高 玲 東京
447号 32 梟よわれは言葉を建設す 北條貢司 北海道
447号 33 展望のすばらし吾が部屋百年祭 右田春雪 ブラジル
447号 34 春鳥夜の色より少し白 三井絹枝 東京
447号 35 浮世絵に素足のわたしが紛れ込む 宮坂秀子 長野
447号 36 蕗の歯応え介護のひとつひとつかな 宮崎斗士 東京
447号 37 北の岬破れ団扇の置かれおり 武藤暁美 秋田
447号 38 人声の残すむらさきかぶと虫 森央ミモザ 長野
447号 39 稲光り脳が一番柔らかい 横山 隆 長崎

448号 1 うすき日にブーメランのよう銀やんま 阿辺一葉 宮崎
448号 2 ぬばたまのおどろはむかし洗ひ髪 伊佐利子 福岡
448号 3 愚かなる人間爆心地に日陰 石川青狼 北海道
448号 4 山百合や横にかぶりを振る投手 井出郁子 北海道
448号 5 鯉の洗の虹色ほどに娘の円み 伊東友子 埼玉
448号 6 記憶その愛しき枷よ白木槿 井上広美 東京
448号 7 チャグチャグ馬コ先頭が糞るつぎつぎ糞る 植田郁一 東京
448号 8 源流は知らず河口に青鷺 内田利之 兵庫
448号 9 泰山木の花誰か喚いている奴が 大口元通 愛知
448号 10 山椒魚べたっと大地になっている 大沢輝一 石川
448号 11 備讃瀬戸触れんばかりに星が飛ぶ 大西昭治 広島
448号 12 八月の西空きのこ雲ふたつ 緒方 輝 東京
448号 13 月が出るてのひらの砂へ自問自答 奥貫恵巳 富山
448号 14 虫の闇夫の五体にぶっつかる 加地英子 愛媛
448号 15 かたつむりこどもの声に角が伸び 北村美都子 新潟
448号 16 無明とは野に傾きし緑樹かな 児玉悦子 神奈川
448号 17 風雲そして天牛のうごかぬ暗さ 小林一枝 東京
448号 18 夏負けのからだ扶ける井戸水呑む 小堀 葵 群馬
448号 19 夜濯や森には空の巣もあらん 佐々木昇一 秋田
448号 20 妻を風呂に入れる象の丸洗い 瀬戸 密 北海道
448号 21 ねこじゃらし耳ほじくれば垢の音 瀧村道子 岐阜
448号 22 関連痛とは白南風のいたづら 武田美代 栃木
448号 23 あの男たんぱく質だ枝豆だ 田浪富布 栃木
448号 24 ポリ袋飛ぶこともする晩夏なり 峠 素子 埼玉
448号 25 八月の般若心経うおんうおん 中尾和夫 宮崎
448号 26 呟きか人間らしく鳴くふくろう 永田タヱ子 宮崎
448号 27 初蝉やまだ唇のやわらかし 丹生千賀 秋田
448号 28 ああ世阿弥男色なりや土用波 新田幸子 滋賀
448号 29 法師蝉陽は弱まらざるをえず 林 梅男 兵庫
448号 30 鶏をさばく母若かりき八月くる 前田典子 三重
448号 31 白南風と思えば妻の光り始む 松本勇二 愛媛
448号 32 扇風機を崇めしづかな赤子かな マブソン青眼 長野
448号 33 ひとえ着て一羽のごとく佇む 宮坂秀子 長野
448号 34 鏡中をさまよつてゐる夜長妻 森 美樹 千葉
448号 35 八風街道東へつばな流すかな 山本昌子 京都
448号 36 蜜豆を食べ過ぎるなよ夢に母 山本弥生 愛媛
448号 37 谷底に石放るもう会えない人よ 輿儀つとむ 沖縄
448号 38 冷奴トランプみたいに配りけり 吉川真実 東京

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